世界の歴史 (30) (中公文庫 S 22-30)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (539ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122053342

作品紹介・あらすじ

冷戦後、体制の解体と民主化に世界は揺れ動いた。グローバリズムの潮流と紛争が続く地域問題の間で、新世紀はどこへ向かうのか?核削減や軍縮・環境問題・情報化などの課題を踏まえ、現代の新たな指標を探る。

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    シリーズ最終巻!
    目次
    1 ペレストロイカ・ソ連崩壊・ロシア
    2 ヨーロッパ再生
    3 地域再生と地域紛争
    4 アジア社会主義の苦悩
    5 韓国と台湾
    6 東南アジア・ASEAN・APEC
    7 アメリカの世紀は続くのか
    8 国際組織の発展
    9 模索する日本
    10 二十一世紀の挑戦

  • 冷戦後、体制の解体と民主化に世界は揺れ動いた。グローバリズムの潮流と紛争が続く地域問題の間で、新世紀はどこへ向かうのか?核削減や軍縮・環境問題・情報化などの課題を踏まえ、現代の新たな指標を探る。

  • 各国、各地域、世界の記述が最後には未来形で終わる「世界の歴史」シリーズ最終巻。

    ベルリンの壁の崩壊(1989年)と東西ドイツの統一(1990年)に象徴されるように東西の冷戦が終わる。かつてフルシチョフのスターリン批判からきしみはじめていたソ連は、ゴルバチョフの時のペレストロイカやチェルノブイリ原発事故から始まった[p24]といわれるグラスノスチ(情報公開)によってエリツィンなどの急進派の台頭を招き、近隣諸国が独立していくなどで、1991年の独立国家共同体(CIS)発足でロシアをその継承国としてついに消滅した[p137」。独立した諸国は、民族など多くの問題を抱えている(イスラーム系共和国チェチェンへの軍事介入[p55]など)。また、東西ドイツの統一の余波は、ユーゴスラビアの解体、ボスニアなどの国家承認などによってバルカン半島の紛争、内乱を激化させてしまったともいえる[p108,111]。

    冷戦下の世界秩序(東西世界の対立、競争が小規模な紛争などを抑制していたというような側面を含む)が崩壊すると、世界は新たな秩序を模索しなければならなかった。国際連合はアメリカを中心に(特に軍事)その秩序の最もたるものである。それを中心にして、IMF(国際通貨基金)や(GATTからの)WTO(世界貿易機関)[p331]などの組織が活性化し、またNATO(北大西洋条約機構)に対抗したワルシャワ条約機構(1991年に解散)などの軍事的結びつきもみられる。

    しかし、冷戦後の秩序は主に、経済的な側面において世界全体(IMFなど)、そして地域間の結びつき(EU、ASEANなど)から形成されていったであろう。特にヨーロッパ石炭鉄鋼共同体に端を発するEU(欧州連合)は、消極的だったイギリスも巻き込んだ国家の枠を経済的な側面から超えた大きな、歴史的な結びつきであろう。

    日本は第二次世界大戦後から奇跡的な復興を遂げ、アジア経済をリードし、またアメリカと経済摩擦さえ起こすまでになった[p279]。これは朝鮮戦争の戦争特需などもあるが、復興に際しての援助が有償であったこともその経済的自立を促したらしい[p375]。日本の膨大なODA(政府開発援助)が一概に良いと言えるか考える必要があるだろう。

    かつては戦争が世界、各地域を刺激して発展を促していた。しかし、二度の先進国を中心にした世界規模の大戦を経て、そのあまりの悲惨さと無意味さに直面した人類は、核兵器などを背景に(次に戦争が起こったら人類は滅亡するであろう)徐々に直接的な戦争から離脱していき、現代はかつての植民地や社会主義体制、冷戦構造のツケを支払う小規模な局地的なものに収束しているようにみえる(民族の問題、イスラーム原理主義との争い、テロリズムとのたたかいなど)。湾岸戦争に見られるように[p130]、戦争はもはや時代遅れ、時代錯誤になったのである。戦争に代わって現代において、世界を結びつけ、発展の刺激となっている大きなものは、経済的な側面(競争、そして協調)と、環境問題であろう。

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著者プロフィール

法政大学法学部国際学科教授。
1948年生まれ。東京大学法学部卒業、同大学法学博士。成蹊大学教授をへて1988年より現職。専門:ロシア政治、ソ連史、冷戦史。
主な著書:『ソビエト政治と労働組合─ネップ期政治史序説』(東京大学出版会、1982年)、『ソ連現代政治』(東京大学出版会、1987年/第2版、1990年)、『ゴルバチョフの時代』(岩波新書1988年)、『「ペレストロイカ」を越えて─ゴルバチョフの革命』(朝日新聞社、1991年)、Moscow under Stalinist Rule, 1931-34(Macmillan, 1991)、『スターリンと都市モスクワ─1931~34年』(岩波書店、1994年)、『独立国家共同体への道─ゴルバチョフ時代の終わり』(時事通信社、1992年)、『ロシア現代政治』(東京大学出版会、1997年)、『ロシア世界』(筑摩書房、1999年)、『北方領土Q&A80』(小学館文庫、2000年)、『ソ連=党が所有した国家─1917~1991』(講談社、2002年、2017年文庫版『ソヴィエト連邦史』予定)、『アジア冷戦史』(中公新書、2004年)、『モスクワと金日成─冷戦の中の北朝鮮1945~1961年』(岩波書店、2006年、露版、2010年)、『図説 ソ連の歴史』(河出書房新社、2011年)、『日本冷戦史─帝国の崩壊から55年体制へ』(岩波書店、2011年)、『ロシアとソ連 歴史に消された者たち─古儀式派が変えた超大国の歴史』(河出書房新社、2013年)、『プーチンはアジアをめざす 激変する国際政治』(NHK出版新書、2014年)、『日ロ関係史─パラレル・ヒストリーの挑戦』(共編著、東京大学出版会、2015年)、『宗教と地政学から読むロシア─「第三のローマ」をめざすプーチン』(日本経済新聞出版社、2016年)。論文に「クバン事件覚え書」(『成蹊法学』No.16、1982年)、「労働組合論争・再論─古儀式派とソビエト体制の視点から」(『法政志林』No.1-3、2016年)など。

「2016年 『ロシアの歴史を知るための50章』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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