検証・日露戦争 (中公文庫 よ 41-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122053717

作品紹介・あらすじ

ロシアの侵略を撃退した祖国防衛戦争か、日本の大陸進出の一環である帝国主義戦争か…。日露戦争に関して不毛な論争が続いてきた。最新研究成果にもとづき「第ゼロ次世界大戦」というキーワードを突破口に、日露の地政学的現実やメディア報道など多彩な視点から日露戦争の現代的意義を問い直す。

感想・レビュー・書評

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  • 「検証 日露戦争」読売新聞取材班著、中公文庫、2010.09.25
    274p ¥680 C1121 (2022.04.21読了)(2011.12.18購入)
    吉村昭さんの日露関係を扱った三冊の本
    「ニコライ遭難」吉村昭著、新潮文庫、1996.11.01 明治24年5月
    「海の史劇」吉村昭著、新潮文庫、1981.05.25 日本海海戦
    「ポーツマスの旗」吉村昭著、新潮文庫、1983.05.25 ポーツマス講和会議
    を読んだついでにこの本も読んでしまうことにしました。
    日露戦争から100年の2004年から2005年にかけて『読売新聞』紙上に連載したものを一冊にまとめたものです。
    印象に残ったのは、国を守るための緩衝地帯という考え方です。216頁に以下のような記述があります。
    「(韓国)併合は、反日の動きを力で押さえつけることをとりあえずは容易にした。しかし、その反面で、併合は「緩衝国としての韓国の喪失」という、その後の日本の長期的な安全の確保を根本から脅かす大きな代償を払うことを意味するものであった。
    なぜなら、「併合された韓国」はもはや、日本を強国ロシアから守る「緩衝地帯の隣国」ではなく、日本の領土そのものになる。韓国が日本の領土となれば、その新たな領土を外敵のロシアから安定的に守るために、今度は、さらにその先に横たわる満州を新たな緩衝地帯として確保する必要が生じるからだ。」
    この考えが、満州国の建国につながり、日中戦争へと突き進み、アメリカとの戦争へと進んでゆくことになったわけです。
    2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻も同様の考え方のようです。ウクライナがロシアの友好国なら西欧諸国との緩衝地帯となるのですが、ウクライナが、NATOの仲間入りすると緩衝地帯がなくなります。そこで、ロシアと接する部分をウクライナから分離独立させて、ロシアの友好国とし緩衝地帯としようとしているのだろうと思います。
    ついでに、クリミア半島からの黒海沿岸部もロシアの友好国に組み入れて海への出入り口を確保しておきたいのだろうと思います。

    【目次】
    序 「第零次世界大戦」としての日露戦争
    第一部 日露戦争の実像
    1 日露戦争と司馬史観
    2 文学と戦争
    3 非戦論と反戦論
    4 あるスパイの肖像
    5 民族主義の光と影
    6 高度な諜報戦
    7 戦争はなぜ起きたか
    8 ベトナム独立運動への影響
    9 戦争を支えたユダヤ資本
    10 欧米メディアの報じた日露戦争
    11 戦争の教訓
    12 中国から見た日露戦争
    13 「メディア政治」の始まり
    特別寄稿 日露戦争の歴史的意義  横手慎二
    第二部 “英雄”たちの真実
    広報外交の提匠者―末松謙澄
    軍神の誕生―広瀬武夫
    東郷ターンの虚実―東郷平八郎
    ほんとうに“天才”参謀だったのか―秋山真之
    日韓併合の〝悪役〟―伊藤博文
    有能なる「軍事探偵」―石光真清
    孤独なる専制君主―ニコライ二世
    冷徹なリアリスト―山形有朋
    誤解を招いた自己顕示欲―桂太郎
    ボランティア活動の草分け―大山捨松
    「無能論」という神話―乃木希典
    強硬派外交官の独断―小村寿太郎
    素顔のエンペラー―明治天皇
    日露戦争関連年表
    文庫版へのあとがき

    ☆関連図書(既読)
    「坂の上の雲(一)」司馬遼太郎著、文春文庫、1978.01.25
    「坂の上の雲(二)」司馬遼太郎著、文春文庫、1978.01.25
    「坂の上の雲(三)」司馬遼太郎著、文春文庫、1978.02.25
    「坂の上の雲(四)」司馬遼太郎著、文春文庫、1999.01.10
    「坂の上の雲(五)」司馬遼太郎著、文春文庫、1999.02.10
    「坂の上の雲(六)」司馬遼太郎著、文春文庫、1978.03.25
    「坂の上の雲(七)」司馬遼太郎著、文春文庫、1978.04.25
    「坂の上の雲(八)」司馬遼太郎著、文春文庫、1978.04.25
    「ニコライ遭難」吉村昭著、新潮文庫、1996.11.01 明治24年5月
    「海の史劇」吉村昭著、新潮文庫、1981.05.25 日本海海戦
    「ポーツマスの旗」吉村昭著、新潮文庫、1983.05.25 ポーツマス講和会議
    「日本海海戦の真実」野村実著、講談社現代新書、1999.07.20
    「日清戦争-東アジア近代史の転換点-」藤村道生著、岩波新書、1973.12.20
    「日清・日露戦争」原田敬一著、岩波新書、2007.02.20
    「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」加藤陽子著、朝日出版社、2009.07.30
    「爆笑問題の戦争論-日本史原論-」爆笑問題著、幻冬舎、2006.07.31
    「明治天皇の生涯(上)」童門冬二著、三笠書房、1991.11.30
    「明治天皇の生涯(下)」童門冬二著、三笠書房、1991.11.30
    「旋風時代 大隈重信と伊藤博文」南條範夫著、講談社、1995.09.20
    「伊藤博文 知の政治家」瀧井一博著、中公新書、2010.04.25
    (「BOOK」データベースより)amazon
    ロシアの侵略を撃退した祖国防衛戦争か、日本の大陸進出の一環である帝国主義戦争か…。日露戦争に関して不毛な論争が続いてきた。最新研究成果にもとづき「第ゼロ次世界大戦」というキーワードを突破口に、日露の地政学的現実やメディア報道など多彩な視点から日露戦争の現代的意義を問い直す。

  • 「第ゼロ次世界大戦」という言葉を聞いた事がない人にはオススメの一冊。世界史の観点から捉え直し、日本近現代史としてだけではなく、「最初の総力戦・消耗戦」であり「20世紀の始まり」として「ヨーロッパ中心の歴史観」を再解釈。
    新聞記事の連載がベースであり、注も参考文献もないので学術的ではないのだが、一般読者向けとしては読み応えがあるし、「司馬史観」や「非戦・反戦論」についても問い直すという歴史ジャーナリズムとしての役割は果たしているように思える。

  • (欲しい!)/文庫

  • 保守系新聞の著作故に余り期待せずに読んだ所、非常に広い論点ポイントを抑えている。
    文章中に、日本人根底にある「坂の上の雲」での文脈への反論・参考図書が豊富に出てくる。
    乃木希典の愚将軍扱いへの反論は、コンパクトで解り易い。
    学術的にマイナー説の可能性があるのかも知れないが、積極的な明治天皇、好戦的な小村寿太郎、大山巌の妻・捨松、新しい見方については知らなかったので勉強になった。
    但し、「坂の上の雲」を未読の人には、余程近現代史を知らないとつまらん本。

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著者プロフィール

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「2022年 『わいせつ教員の闇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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