ドン・リゴベルトの手帖 (中公文庫 ハ 15-2)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (425ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122057371

感想・レビュー・書評

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  • すげえ。必読。
    北欧のミステリブームで精緻な整合性の律する世界に慣れた後では、目が眩むほどの豊穣、時制の混乱、彼我の癒合。前日譚があると知らずに読んだので、明かされると思っていたらスカされた。
    でも最後にいきつく愛の豊かな姿。それを脅かすと同時に守る恐ろしい知性。
    こんな夫婦になりたいな。

  • 『継母礼讃』の続編だが作品の構成は随分と複雑なものになっている。すなわち、フォンチートとルクレシアの物語、リゴベルトの覚書と妄想物語、そして短い手紙が繰り返される。フォンチートの物語はエゴン・シーレの絵と画家の生涯からの度重なる引用、そしてリゴベルトの物語はハイスムスの『イーディアスの日記』他からの引用に満ちている。そして全編を貫流するのはフェティシズムであり、ここでの性的な行為や妄想は生殖からは遥かに遠い。頽廃や官能やエロスは、まさにそうしたところにしか存在しないからだ。本書はまさに究極の都市の文学だ。 また、表紙の絵はクリムトの『ダナエ』だが、これもまた作品のキー・イメージに繋がっている。

  • 『継母礼賛』の続編。前作で継子と出来ちゃって別居することになった継母のルクレシアのもとへ、しょうこりもなく会いにくる継子のフォンチートのパートと、独り身で寂しく妄想&回想に耽る父リゴベルトのパートが交互になる構成。表紙はクリムトですが、今回ストーリー上で重要な役目を果たすのはむしろエゴン・シーレ。それにしても天使の皮をかぶった悪魔フォンチートは可愛いけど怖すぎる。ラスト一見ハッピーエンドのようだけど、この先どんな企みでまた両親を陥れるやらと思うと恐ろしい・・・。

  • 別居中の惚れ合っている中年夫婦が元の鞘におさまるまでのエロティックなラブストーリーと、別居の原因を作り且つ別居解消を助けた息子と、リョサの説教から成るなかなか深いお話。

  • 2012-12-28

  • 2017/1/27購入

  • 前作の『継母礼讃』での
    おっさんが鼻毛をいかに抜くかで10Pを持っていくような荒々しさ(笑)や衝撃は今作にはなかった;

    濃厚な妄想によるエロスが展開されるが、
    話自体もやや起伏に乏しく
    いまいち面白みがなかったように思う。

    絵画をモチーフにしながら、
    前作のようなカラー挿絵がないのは残念。
    これがあるとイメージがだいぶ変わる。

  • 究極のラヴストーリー。嵐でも消せない愛の灯火。我が唯一の望み。パラダイス。アダムとイブ。バラバラになったジグソーパズルはLEGOブロックのように組み上げられ、時間も人も空間も曖昧になり霧散してしまう。目の前の9枚のカードをめくると官能的な描写と共に絵画、小説からの引用、芸術論、エロティシズムの考察、文明批判が盛り込まれていて熱湯と冷水を交互に浴びせられるかのよう。幻惑され翻弄される、まさに魔術的リアリズムだ。書き写したいセンテンスがたくさんあって、早く先が読みたいのに読めないもどかしさを再び味わった。

    幸福でありながら不幸、平手打ちをしてキスしてやりたい、賞賛と羨望と嫉妬の三すくみの感覚、左右に引き裂かれるような矛盾し、相克する感情表現はすごい。この物語を貫くキーワードは〈屈折した空想、偏執性、誘惑の力〉『継母礼讃』が光ならこの作品は影、または太陽と月のようなものかも。もしくは息子の物語と父親の物語。


    〈人間の自由を卑しめ、毒し、切り捨てるあなたがいなければ、自由のありがたみはなくなるし、わたしの想像力は高くは飛翔しないし、わたしの欲望は切迫したものではなくなるだろう。というのは、自由も想像力もすべてあなたにたいする反逆、自由で感受性のある人間の感性と、自由意思を否定するあなたにたいする反発をバネとして生まれてくるからである。〉
    〈幸福とはつかのまのものだよ。例外的なことさ。平凡とは対照的な。でもときどき幸福を掻き立ててやらなければならない。消えてしまわないように。焔を吹いてやらなければ。〉

  • ストーリーは前作のほうがストレートでぎゅっと凝縮されていて面白い。今回は妄想の度合いが高まって、思わず苦笑してしまいそうなほどにだらだらと綴られているので……不思議と品がないという感じはしないが、よくもまあそれだけあれこれ考えられるなあと、リゴベルトがかわいらしいやらいじらしいやら(笑)。そして悪魔の化身フォンチートはやっぱりやらかしてくれるので、この先も気が気でないところだが、さすがにもう彼らのドタバタはここで完となってほしい。

  • 面白いところもあった。

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著者プロフィール

1936年ペルー生れ。ラテンアメリカを代表する作家。2010年ノーベル文学賞。著書『都会と犬ども』『緑の家』『ラ・カテドラルでの対話』『世界終末戦争』『楽園への道』『チボの狂宴』『つつましい英雄』他。

「2019年 『プリンストン大学で文学/政治を語る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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