展覧会いまだ準備中 (中公文庫 や 61-1)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 141
感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122062054

作品紹介・あらすじ

大学時代は応援団に所属し、今は新米学芸員の今田弾吉、二十八歳。個性的な先輩らから振られる雑用をこなすことに精一杯の毎日で、いまだ自ら企画した美術展を実現させていない。だが、美術品専門運送会社の美人社員・サクラの存在と応援団OBから鑑定を依頼された一枚の絵が、彼の心に火を付ける-。特別書き下ろし短篇付き。

感想・レビュー・書評

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  • 大学では応援団員、現在学芸員として4年目の主人公が、東京郊外の架空の中規模美術館で、素人館長、個性的過ぎる先輩学芸員3名、ボクシングをやる運送会社の女性、応援団の先輩などに囲まれ、日々雑務をこなしつつ、頼まれごとの地元作家の羊を描いた作品が大きな位置を締めていき…と。目黒考二「息子たちよ」で紹介されていて、猛然と読みたくなった一冊。好きなことを仕事にしたが、その先好きなことを出来ていない思い。好きなことを仕事にできなかったものの思い。好きなことを仕事にして、そのことに没頭すると寝食も忘れてしまう人の存在。生きている実感をしっかり味わえているかの自問。右往左往しつつ振り回されつつも、これをやりたい!という展示をようやく見つけて、そこへ向かう道筋が見えたところまで。美術館が舞台というのに心惹かれた。ちょっとキャラがマンガチックな人がちらほらというのが気になったところもあったけれど、おおむね楽しく読めた。◆「自分がいいと思ったものを世に知らしめるのが、きみの役目ではないのかね」p.86◆「ものの価値はひとそれぞれが判断するわけで、わかるわからないっていうもんじゃないと思います」p.200

  • 人生の確固たる目標があると、
    実現に向けて真っ直ぐ生きていける。
    でも、そんな状態は本当にあるだろうか。
    昨日魅力的に見えた将来の夢が、
    翌日には違う夢が輝いて見えたりする。
    手につかんだと思った想いが、
    いつの間にか消えてしまうこともある。
    自分の中に色んな自分がいるように、
    自分を取り巻く周囲の世界が
    日々変わり続けるように、
    ひょっとしたら目標や夢も
    変わり続けるものかもしれない。

    美術館で新米学芸員として働く
    今田弾吉君が主人公。
    つい「君」とつけたくなるような、
    大学時代は応援団長だった気持ちのいい大男。
    先輩にこき使われ、仕事の悩みは尽きない。
    そんな大男の周りに集まる者たちは、
    誰も彼も迷いやひっかかりを持っている。
    そう皆「準備中」のような宙ぶらりんの状態にある。

    でも人生って、ずっと「準備中」なのかも。
    確信を持って生きる時間の方が
    少ないのかもしれない。
    それでも目の前のことに懸命に生きる。
    こっちの方向に行けたらいいなあと
    ぼんやり検討つけながら、
    次から次へと訪れる出来事に食らいついてく。
    それでいいのかもしれない。

  • 自分のやりたい事を仕事にするとは…と仕事をしている身としては色々考えてさせられる本でした。

    主人公とマサヒコの光と影のような対比になっているやり取りが好きです。

    ただ男女が2人で仲良くしていたらすぐ恋愛の話を絡めてくるのにはモヤっとしました。

    終盤は登場人物たちそれぞれの事情なのどが分かってきた所で話が終わってしまうのでスッキリした気持ちで読み終われなかったのが残念。続編があれば読みたいです。

  • 美術館が舞台という意外性以外は普通かな。
    読んで面白かったです。
    でもオススメかと言うと自分は疑問です。

  • 美術館の学芸員として働く弾吉。
    大学では応援団いんだったというノッポさん。
    その大学時代の先輩も美術館の先輩方も個性的な人ばかり。
    そんなキャラの濃さの面白さと仕事に対する向き合い方みたいなのがうまくミックスされている。

    2018.1.8

  • 市立美術館で働く学芸員・今田弾吉は、元大学応援団部員の変わり種。キャラクターの強い女性先輩陣に振り回される毎日に、ひょんなことから出会った一枚の羊の絵が彼の心に火を点ける。
    仕事っていうのは勿論飯を食うためにやるものだが、今田の恩師・ボテロの言葉に重みがある。同じ道を目指した人たちの思いものせてやってみるって考え方は、行き詰まっている時にいいかもしれない。

  • まだ何も始まっていないけど、とても素敵な何かが始まりそうな、そんな予感がする物語。羊の絵は実際に見てみたいと思った。
    一匹羊を読み返さないと。

  • やり手の女性上司に振り回されながら奮闘する、若手学芸員の今田弾吉。
    甘い噂につられて大学で入った応援団の根性が染み付いていて、先輩は絶対と条件反射で思ってしまう。そのため働きだしてからも流されることばかりで、なかなか自分の意見や意思をあらわせない。もどかしいようだけど、実際のところ、自分はこれがどうしてもやりたい!と言える若手なんか少数派じゃなかろうか。
    日々の雑務に追われ、あいまに出す半端な企画はすべてボツ。しかしそれで嫌になるかといえばそうとも限らず、とりあえず職種は好きだから働いている。それって昔の私のことじゃない?というわけで、共感とはいかないまでも分かるわ~、とストレスなく読み進んだ。
    一枚の羊の絵から始まる、将来に悩む少年マサヒコとの宝探し旅は、現実的な厳しさを織り交ぜつつも時々ぴかっと光る希望が見えたりして、わくわくできた。
    お侍の白昼夢は・・・、なくてもよかったかな?書き下ろしは、登場人物それぞれが本編の誰かに生まれ変わったのかな~、とも想像させる描き方がちょっとおもしろかった。

  • 2016/4/21
    羊の風船の会社!
    前読んだの読み返したい!
    すごく面白いんだけど美術館のその後も気になるよ。
    結構まだ何も始まってないところで終わっちゃうんだもん。
    ヤギさんがニューヨーク行った後どうなるのさ?
    弾吉の企画は実現するのかい?
    続編あるのかなぁ・・・

  • 面白かったけど、福助どのは唐突だったな。笑

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著者プロフィール

山本幸久
一九六六年、東京都生まれ。中央大学文学部卒業。編集プロダクション勤務などを経て、二〇〇三年『笑う招き猫』で第十六回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。ユーモア溢れる筆致と、魅力的な登場人物が読者の共感を呼び、幅広い世代から支持されている。主な著作に『ある日、アヒルバス』『店長がいっぱい』『大江戸あにまる』『花屋さんが言うことには』『人形姫』などがある。

「2023年 『あたしとママのファイトな日常』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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