怪獣-岡本綺堂読物集七 (中公文庫 お 78-7 岡本綺堂読物集 7)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 44
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122066496

作品紹介・あらすじ

あることをきっかけに人がちがったようにふるまう姉妹の話「怪獣」、自分の写し絵を取り戻してくれと泣く娘の話「恨の蠑螺」、盂蘭盆の夜に海に出てはいけないと言われる婚約者の話「海亀」、そして美しい狐にとりつかれる若い歌舞役者の話「岩井紫妻の恋」など、動物や道具を媒介に、異界と交わるものたちを描いた好評妖異譚の第七集。綺堂が自ら編んだ短篇シリーズ最終巻より全十二篇と、単行本未収の附録一篇を収める。
〈解題〉千葉俊二 カバー・口絵 山本タカトによる書き下ろし

感想・レビュー・書評

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  • タイトル作の「怪獣」は字面だけ見るとゴジラ的なアレを想像しちゃうけど、なんせ江戸時代の話ですし文字どおり「怪しい獣」=正体不明のなんかよくわからないもの的な意味でした。老舗旅籠の美人姉妹が突然淫蕩になって家族を困惑させるもその原因は・・・。呪いの正体がよくわからないのも怖いし、原因わかっても助からないのも無念。

    他の短編も、なんかしらの怪獣=怪しい獣が出てくるものが多かった。タイトル見ただけでも海亀、鯉、鼠、と動物の名前が並んでいるし、「岩井紫妻の恋」は美女に化けて夜な夜な若い歌舞伎役者の精気を吸い尽くす古狐、「深見夫人の死」では足利時代からの先祖の因縁で一族に不幸をもたらす蛇、「夢のお七」は幕末に上野の彰義隊に加わった旗本がお七の夢に助けられるのだけど、そのお七はなぜか鶏で顔だけ人間の娘(想像するとかなり怖い)などなど・・・。

    蛇とか狐とかいかにも祟ったり憑いたりしそうなものはまだしも、海亀がなぜ危害を加えてくるのかは意味がわからなすぎて逆に怖い。「深見夫人の死」は細部に謎が多いので色々想像で補って掘り下げたら長編ミステリーにできそうな面白さがありました。

    「恨の蠑螺」は大金もらって春画のモデルになった素人女性が、やっぱりお金返すから絵を返してというも当然聞いてもらえなかったので関係者全員祟るというお話ですが、ちょっと自業自得感もあるのでどちらに肩入れしていいか困惑。無理強いされたわけじゃなくてお金もらってOKしちゃたわけだし、あと現代人的にはネットで写真ばらまかれたわけじゃなし、絵の1枚くらい、しかも公開されるわけじゃなく金持ちが秘蔵するだけ、誰かに見られても絵なら本人確定できないんじゃない?とか思ってしまうのだけど、まあ昔の女性にとってはとんでもない恥だったのだろうなあ。まあその前にヌード描かせるなよとは思うけど(堂々巡り)

    「眼科病院の話」「怪談一夜草紙」は怪談かと思いきや実は・・・のパターン。「まぼろしの妻」は死んだ妻の幽霊に最初のうちは喜んで仲睦まじくしていたものの、だんだんストーカー化する幽霊妻が疎ましくなってくる男の話。これはしんどい。そして怖い。中公文庫のシリーズはこれが最終巻になるみたいで寂しいなあ。

    ※収録
    怪獣/恨の蠑螺/真鬼偽鬼/海亀/経帷子の秘密/岩井紫妻の恋/深見夫人の死/鯉/鼠/夢のお七/眼科病院の話/怪談一夜草紙/まぼろしの妻

  • ストーリーは面白いんだけど、古い文体のせいか内容がなかなか頭に入ってこない。ゾッとする度は低め。

  • 表題作含む短編12作に、文庫本初出となる「まぼろしの妻」計13作品を収める。
    やはり、面白い。巻末の解説で本巻が岡本綺堂読物集の最終巻と知りショック。

  • 岡本綺堂読物集。この巻で最終との事。

    今回は、動物や道具を媒介に、異界と交わるものたちを描いた好評妖異譚ということで、数々の不思議で少しゾワっとする話を堪能させて頂きました。
    個人的に「経帷子の秘密」「深見夫人の死」が印象に残りました。

  • 今回は生き物にまつわる怪談が殆どでした。
    古狐や蛇と言った昔から祟ると言われるものから海亀や鯉と言ったあまり聞かないものまで様々。
    最後までなぜそうなったのかがはっきりとしないまま終わる話があるのもいかにも本当らしく感じられます。
    時々人間が一芝居打った話もあり人もある意味では獣(しかも狡賢い)なのかも知れないと感じてしまいました。

    このシリーズもこの本が最終巻。楽しませていただいたので寂しいです。

  • 自分の裸体の写し絵を取り戻してくれと泣く娘の話、美しい娘に化けた狐に取り憑かれる歌舞伎役者の話など、綺堂自身が編んだ短篇集最終巻。〈解題〉千葉俊二

  • いつのまにか文庫シリーズ最終か。さみしい。
    面白いは面白いんだけど、他の巻に比べるとものたりなさがある。編者がいうように現代(当時)物が江戸末期物に比べると落ちるのか、それとも綺堂は「怪獣」物じゃなくて人間物でこそ筆が冴えるのかもしれない。

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著者プロフィール

(おかもと・きどう)1872~1939
東京生まれ。幼少時から父に漢詩を、叔父に英語を学ぶ。中学卒業後、新聞、雑誌の記者として働きながら戯曲の執筆を始め、1902年、岡鬼太郎と合作した『金鯱噂高浪(こがねのしゃちほこうわさのたかなみ)』が初の上演作品となる。1911年、二代目市川左團次のために書いた『修禅寺物語』が出世作となり、以降、『鳥辺山心中』、『番町皿屋敷』など左團次のために七十数篇の戯曲を執筆する。1917年、捕物帳の嚆矢となる「半七捕物帳」を発表、1937年まで68作を書き継ぐ人気シリーズとなる。怪談にも造詣が深く、連作集『三浦老人昔話』、『青蛙堂鬼談』などは、類型を脱した新時代の怪談として評価も高い。

「2022年 『小説集 徳川家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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