ファウスト-悲劇第二部 (中公文庫 ケ 1-5)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (628ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122067424

作品紹介・あらすじ

グレートヒェンを悲運のどん底に落とし心身ともに疲れきったファウストは、しかし「最高の生き方をめざして絶えず努力をつづけよう」と決意する。巨匠ゲーテがその八十年の生涯をかけて、言葉の深長な象徴力を駆使しつつ自然と人生の深奥に迫った不朽の大作の画期的な名訳。

感想・レビュー・書評

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  • 厨二病に罹患した自覚のあるものはただちに読むがいい。圧巻のセンス・オブ・ワンダー! 物語の筋の悪さには目をつぶり、裏読みを要するような難解さは専門家に任せ、この大いなる幻想を楽しむがいい。

    筋の悪さ。
    悪魔の力を手に入れたファウストは欲望の赴くままにそれを楽しみ、時には非道な行いをする。それに悔いることもなく次なる欲望につきすすむさまは、芸術家ならわかる心情というものか。文豪がまれによく持つゲスい感性のなせるわざか、苦い経験などなかったかのごとく生きていく。
    第二部は、行間を大いに読めば、奔放に生き、時には幸せを得、儚く失い、時には非道をふるまったファウストの人生模様である。いつとは知れぬ人生の場面をただ見せられる。なぜそういうことになったのか説明されないので、たいそう座りが悪い。壮大な幻想風景に感嘆させられながらも、物語性の欠如を強く感じさせられる。
    そもそも神とメフィストフェレスが、ファウストが堕落するか否かを賭けて物語がはじまる。ファウストの血を混ぜたインクで契約書を書かせたにも関わらず、そんな事情を知らぬ天使たちにファウストの魂を天へ連れて行かれてしまう。天使たちの光はイノセントに見守るしかないメフィストフェレスを焼いている。
    欲や罪にまみれた人生であっても神は救う。そういうことでいいの?

    裏読みとは押井守氏の言葉を借りたものだが、氏曰く、映画は必ず裏読みできるようにあるべきだという。氏の作った映画は全てそのように作っているという。そういうふうに作ってあるからといって面白い訳ではないということだね。
    氏の主張ではないが、文学もまた、そうあるべきという風潮があるように思う。あるいは、ない裏もあるとして論ぜねばならないように思う。だが、それはできる人に任せておけばよい。本書について言えば、注釈やあとがきによって、背景や感じ方というものに触れることはできる。無論、訳者の解釈に過ぎない。正解はおそらく著者も持っていない。

    マーガレット・ワイスは、マジェーレ兄弟やソス卿の創造にあたってファウストを意識しただろうか。
    永野護のFSSは、ファウストに依るところが大きいのかもしれない。
    とか思いながら。
    どうやら、現代に与えた影響を知ることを、古典を読む楽しみとしてるようだ。

  • 第一部も含めての感想です。

    初読。訳は手塚富雄ので。ファウストが思ったより大分ろくでもない奴で、その上内容も中々ぶっ飛んでるせいで、なんか途中からギャグ漫画みたいに感じながら読んでた。そのせいか登場人物の脳内イメージが漫☆画太郎の絵柄で再現されて困った。たぶん正しい読み方ではない。

    まあでも解説で「読み方は自由」と言ってたしこれも正解の一つなのかな?

  • ・眠りは殻、その誘いを振り棄てよ。臆することなく起って進め、世の人々はためらい惑うとも。気高い者が明知と勇気をもって事にあたれば、すべてのことは成就するのだ。

  • 図書館の貸出期限を何度も延長して、ようやく読了。とはいえ、話を追うのに精一杯でぜんぜん噛みしめられなかった。メフィストはやっぱりかわいかった。

    第一部のほうが読みやすかったのはやっぱり書いてる時のゲーテの年齢が近いからだろうか。10年おきに読み返したい気がする。解説で中村光夫も書いていたように、ぜったい年をとったほうが面白い作品だろうと思う。

  • ワルプルギスの夜に最愛の女性を救えなかったファウスト。舞台はギリシア神話の色濃い世界へと移ります。全てを見たいと欲していたファウストが盲人と化し、勘違いの上に至上の喜びを感じた結末は皮肉的でもあり、同時に向上心が強く、理想を抱き続けたファウストらしさも感じられます。キリスト教的な価値観で言えば、異教であるギリシア神話の世界との交流やファウストの犯した様々な悪行は救済に値する物ではない様に思えますが、単なるヨブ記的調和としての救済ではなく、ここにゲーテが作品に託した想いがあるのかもしれませんね。

  • 巨匠ゲーテが言葉の深長な象徴力を駆使しつつ自然と人生の深奥に迫った大作を、翻訳史上画期的な名訳で贈る。読売文学賞受賞作。〈巻末エッセイ〉中村光夫

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著者プロフィール

ゲーテ

Johann Wolfgang Goethe 一七四九―一八三二年。ドイツのフランクフルト・アム・マインに生まれる。ドイツを代表する詩人、劇作家、小説家。また、色彩論、動植物形態学、鉱物学などの自然研究にも従事、さらにワイマール公国の宮廷と政治、行政に深く関わる。小説の代表作に『若きウェルテルの悩み』『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』など。

「2019年 『ファウスト 悲劇第二部』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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