三の隣は五号室 (中公文庫)

  • 中央公論新社 (2019年12月19日発売)
3.45
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本棚登録 : 405
感想 : 28
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  • 本 ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122068131

作品紹介・あらすじ

傷心のOLがいた。秘密を抱えた男がいた。

病を得た伴侶が、異国の者が、単身赴任者が、どら息子が、居候が、苦学生が、ここにいた。

――そして全員が去った。それぞれの跡形を残して。



驚きの手法で描かれる、小さな空間に流れた半世紀。

今はもういない者たちの一日一日が、こんなにもいとしい。

優しく心を揺さぶる著者最高作。



谷崎潤一郎賞を受賞した、アパート小説の金字塔。



〈解説〉村田沙耶香

感想・レビュー・書評

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  • 今まで読んだ長嶋さんの中で一番好き。第一藤岡荘五号室を舞台に、歴代住人達の群像劇のような不思議な構成の物語。それぞれの時代の日常を描く。村田沙耶香さんの解説もよい。〈生きていて「なにも起こらない」なんてことは、本当はない。〉

    • ☆ベルガモット☆さん
      111108さん こちらからもこんにちは

      谷崎潤一郎賞を探してみたらこちらも2016年受賞作品ですね!
      色っぽい話なんでしょーか?!...
      111108さん こちらからもこんにちは

      谷崎潤一郎賞を探してみたらこちらも2016年受賞作品ですね!
      色っぽい話なんでしょーか?!
      次に読みたい本にしようと思います
      2022/09/23
    • 111108さん
      ベルガモットさん、おはようございます♪

      うーん‥色っぽい話もあり、しょうもない話もありという感じでしょうか。群像劇というか短編集というか、...
      ベルガモットさん、おはようございます♪

      うーん‥色っぽい話もあり、しょうもない話もありという感じでしょうか。群像劇というか短編集というか、5号室を舞台にしてるだけのいろんな話集ですよ。
      ベルガモットさんのお好みに合うといいですね♪
      2022/09/24
  •  古いだけで一見なんの変哲もない2Kの木造アパート。だが住み始めると、その間取りが少し変わっていることに気づく。
     そんなおかしなアパートの一室、5号室を舞台に、そこに暮らした代々の住人たちを描く群像劇。
     第52回谷崎潤一郎賞受賞作品。
             ◇
     「変な間取りだ」
    1982年、第1藤岡荘5号室に入居したばかりの三輪密人はそう思った。

     内見することも間取り図を見ることもなく適当に決めた部屋である。6畳4畳半とキッチン3畳だが、ドアを入ったところに「玄関の間」とでも言うべきスペースもある。
     けれど、玄関の間の先にはキッチンに入るドアと4畳半に入る障子が並んでいる。それらの奥に6畳間が控えていてキッチンからも4畳半からも障子1枚で仕切られていた。

     煙草を吸いながらそんなことを考えているうちに、引っ越し業者が大量のダンボール箱を搬入していく。どんどん積み上げられる荷物で部屋のほとんどが埋まっていくのを、三輪はただ眺めていた。
        ( 第1話「変な間取り」) ※全10話。

         * * * * *

     なんと風変わりな小説だろう。そう思いました。少し変わった間取りを持つ2Kのアパートの一室に入居した、歴代の住人の生活記録です。

     ただし、50 年間に渡る 13 代の住人の全記録を順に述べるのではなく、第8話まではテーマごとに各住人の言動や思考を列挙していくという手法で書かれています。
     そして、第9話は住人たちの退去のいきさつが紹介され、最終話で後日談が明かされます。

     この観察日記とも言える記録集は、試みとしてはおもしろいしそれなりに楽しめたのだけれど、語られる人物が次々と入れ替わっていくため、プロフィールを思い出すのに苦労します。
     また、誰にも、そして何にも主眼が置かれておらず、ひたすら淡々と書き綴られていっている印象で、読み通すためのモチベーションの維持も大変でした。

     でも第9話「メドレー」から最終話「簡単に懐かしい」での三輪密人に絡む話はサスペンスミステリーのにおいがして、少しばかりドキドキします。
     ここまで読んだ人へのご褒美のようなものかなと思って、ひとりでニンマリしました。

     エンタメ性はまったくありませんが、一風変わった小説が好きな人にはオススメです。

  • 無理だ。仕組みは出だしで理解したけど、章が変わってもしっくりこんのよ。多数出るしバトン渡す感覚もいいと思うけど入って来ん。猛スピードと佐渡の3人は気に入ったけどその後が感想見ると今回も含めて思ったのと違うってこと

  • とある古アパートの一室の、歴代住人たちの日常を切り取った短編集。

    って書くとめちゃくちゃありきたりなんだけど、同じ章の中でも時代が目まぐるしく前後して、歴代住人たちのエピソードが入り組みながら、パズルのピースのように少しずつ展開されていく。
    読み味は軽いのに、全体像は緻密に組み立てられているというアンバランスさ。
    実はめちゃくちゃテクニカルなことをしてるんじゃないだろうか。長嶋有恐るべし。

    大きな謎や事件が起こるわけではないので、そのあたりに話の推進力を求める人には退屈に感じるのも分かる。

    ふと他人の家の中が見えてしまった瞬間に、「こんな生活してんのかな〜」なんて、つい考えてしまう自分にはめちゃくちゃ面白く読めた。

    たぶん今後も読み返すお気に入りの一冊になりました。

  • 定点観測な連作集。
    こういうのって「ひとり1話」みたいな
    構成になっているものが多いと思うのですが
    これは少し変わっている。
    第一藤岡荘というアパートの一室に住んだ
    歴代の住人たちの人生を書き留めるのに
    「場所」や「もの」で章わけされているのです。

    たとえば『雨と風邪』の章なら
    部屋に響く雨音を風邪ひきの布団で聴く十畑保
    乗り物の中にいるようだと感じる二瓶環太
    天ぷらを揚げる音のように思う七瀬奈々。

    『ザ・テレビジョン!』の章なら
    白黒テレビだった藤岡一平から
    父・野球、母・ワイドショー、子はアニメと
    昭和そのものな視聴風景の二瓶一家。

    1966年から2016年までの物語。
    その時代、時代の暮らしぶりが
    郷愁を誘う一冊でした。

  • NHKの72時間というドキュメンタリーを思い出した。ある場所を3日間定点観測する番組だが、この小説の場合はあるアパートの一室を数十年にわたって観察している。
    この部屋にやってきて、数年住み、去っていった、年齢も性別も経歴も異なる人たち。後から住む人たちは、前の住人たちとは全く関係はないのだけれど、なんとなくその痕跡を引き継いだり、同じようなことを思ったり、全然異なる生活を営んだりして暮らしていく。ある場所に積み重なる、様々な人生・時代の地層のような感じ。すごく面白い観点だなと思った。

  • 珍しい小説、おもしろかった。
    みんながこういうささいなことを思ったり考えたり、工夫をしてみたり、していると思うと、かわいらしく思える。
    難しいだろうけど、映画とかでも観てみたい。

  • いやぁ面白かった。
    こうやって人生は紡がれていき、見えないところでそっと繋がっていくんだな。
    初めて一人暮らししたまるで5号室のような古くてボロい今は無いアパートを思い出し、妙に切ない気持ちになりながらも温かい世界観に引き込まれました。大切な一冊が増えました。

  • 時代の違う同じ部屋で過ごした住人たちの日常を魅力的に描いた作品でした。

    私たちが日常生活で感じているけれど、取り立てて誰に話す機会もないような事柄が詰まっていて、それが作品になっっているのがすごいです。

  • 自分の今住んでいる家も、帰り道も、仕事も
    誰かの過去で、誰かの未来なんだなと思うと
    今の見え方が少し変わりました

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著者プロフィール

小説家、俳人。「猛スピードで母は」で芥川賞(文春文庫)、『夕子ちゃんの近道』(講談社文庫)で大江健三郎賞、『三の隣は五号室』(中央公論新社)で谷崎潤一郎賞を受賞。近作に『ルーティーンズ』(講談社)。句集に『新装版・ 春のお辞儀』(書肆侃侃房)。その他の著作に『俳句は入門できる』(朝日新書)、『フキンシンちゃん』(エデンコミックス)など。
自選一句「素麺や磔のウルトラセブン」

「2021年 『東京マッハ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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