- Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122068834
作品紹介・あらすじ
「朝、目が覚めると戦争が始まっていた」
キノベス!2018第1位、アメトーーク!「読書芸人」で紹介
読売新聞、毎日新聞など各紙誌で賞賛の声!
全体主義の恐怖を描く傑作、待望の文庫化。
近未来の島国・R帝国。人々は人工知能搭載型携帯電話・HP(ヒューマン・フォン)の画面を常に見ながら生活している。ある日、矢崎はR帝国が隣国と戦争を始めたことを知る。だが何かがおかしい。国家を支配する絶対的な存在”党”と、謎の組織「L」。この国の運命の先にあるのは、幸福か絶望か。やがて物語は世界の「真実」にたどり着く。
感想・レビュー・書評
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教団Xほどじゃないにしろ、この作家はやはりけっこう理屈っぽいが、こういう実際のできごとを元にしたSFはわりと好みなので楽しめた ただし、おわりかたは個人的にはイマイチ
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『人々が欲しいのは、真実ではなく半径5メートルの幸福なのだ。』(引用、352頁)
〈要約〉
舞台は近未来の島国・R帝国(サイエンス・フィクション)。人々は高性能のAIを搭載したHP(ヒューマン・フォン)を持ち、HPは私たちにとって恋人であり、友人であり、相談役であり、欠かせない存在となっている。
この国は与党(国家党、通称“党”)が絶対的存在であり、表面的な民主主義を与え、国民をコントロールしている。
その世界で登場人物たち(戦争に巻き込まれた男【矢崎】と、形として存在しているだけの野党の秘書【栗原】)は、”党”と戦争の思惑、世界の真実を知ることとなる。
謎の組織【L】とは何か?
この国が向かうのは幸福か絶望か?
真実、幸福、偽善。
人にとっての希望や幸せはいったい何なのだろうか。一緒に考えてみませんか?
〈おすすめの人〉
・人の幸福とは?について考えるの好き!
・社会(世の中)、人の本性の真実の姿をしっかり見つめたい!
・科学や文化の進歩、その先にあるものを考えたい! -
いやー重くてしんどい本だった。元気のない時には読めない。爽やかな朝にも似つかわしくないから読めない。
21世期の「1984年」。扱ってる内容も重く絶望に満ちたトーンも、大きな類似性を感じる。舞台が半世紀ほど下り、ネットやAIなど現代的なギミックが加わりより深みを増した後継者的作品と感じた。
ジョージ・オーウェルがソ連を強く意識して全体主義国家“オセアニア”を描いたように、この作品のR帝国をはじめとする国々はどれも現実の我々の世界の国々がモデルとなっている。R帝国は戦前・戦後両方の日本の悪いところを寄せ集めてデフォルメしたような国だし、他にも現実の世界問題がモデルとなっていると思われるものがチラホラ。
戦争、テロ、政治、宗教、軍需産業、マスコミ、ネットの誹謗中傷、移民難民問題、差別、スマホ依存など現実に存在するあらゆる問題が扱われていて、こんなに詰め込まれているのにごちゃごちゃせずすっきりと読める文章力がすごい。
終盤に黒幕により明かされる衝撃的な事実、その異常性、絶望感・無力感はまさに「1984年」のオブライエンを彷彿とさせる上に、それを大きく上回る。
綺麗事を一切削ぎ落とした生々しい一般市民の本音。その筆致力。
後書きでR帝国のRが何を表すのかが示唆されていて、とても納得。
20世期初頭にはオセアニアが、次の世紀にはR帝国が現れ、次には何が現れるのだろうか…。
『R帝国の人民の“84%”が貧困層』という設定が出てくるけど、これはオマージュなのかな。気になる。 -
中村文則『R帝国』中公文庫。
近未来の島国『大R帝国』のコーマ市を舞台にした物語。内容にオリジナリティが感じられず、結論も、結末も無いつまらない小説だった。やはり『掏摸』の成功はフロッグだったのだろうか。
国民の殆どが人工知能搭載の携帯電話HUMAN Phoneを持ち、過剰な情報に過敏に反応する近未来。移民、少子化、ネットリンチ、右傾化と左翼思考、ヤラセなどなど、誰もがスマホを持ち、ネットでしかコミュニケーションを取れない人間であふれた現代の日本を諷刺しているかのような描写が目立つが、せいぜい高校生のお遊び程度といったところ。
現代日本の諷刺小説には全くオリジナリティが感じられず、百田尚樹の『カエルの楽園』の真似物といった感じがした。
そろそろ中村文則には『掏摸』を超える傑作を書いてもらいたいのだが。
本体価格720円
★★ -
最初の方はおもしろかったけど、だんだん話が複雑になってきて、読み進めるのがしんどかった。
戦争の話、ウイルスの話、未来のスマホのようなものの話が、近い将来起こり得るのではないかと思った。
偶然に起こっているようで、必然に起こっていることがこの世界にはあると思う。
また、情報化社会で、真実である情報とそうでない情報を個人が判断するのは難しく、情報操作の恐ろしさも感じた。 -
楽しい。
現代の話ではないのに炙り出ししているかのよう。皮肉が効いている。
日本のマスコミや国の中枢の政治家や官僚に不信感を持ったり、三権分立はどうした?なぜみんな投票に行かないの?そう思った事がある人は楽しめるのでは。
世論誘導なんてお手の物だし、遥か上空から民を見るかのように戦争を起こし、軍事産業で儲ける僅かな富裕層。悪人をしっかり悪人として書いている。洗脳されても生きる価値はある世界なのか?私たちはこのままでいいのだろうか。
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世界は悪くなっていくだろうかについて考えさせられた。
・戦争は誰の為に行われているのか?無くならせる事は出来なくても少なくする方法はあるだろうか?
・日本の民主主義は優れているだろうか?自民党の長期政権、スポンサーに配慮するメディア、政治に取り憑く各種団体、選挙の在り方、数が強さに比例する民主主義
・他人を傷つける事で精神的に優位に立とうとしたり、自分のストレスを解消したりする醜さ、辞められない苛め
・他国を卑下する事で自国の価値が高まっているように感じる誤解
・AIが人間よりも知性的に考えられるようになるであろう未来
・娯楽の多様性による堕落
中村文則さんの小説で久しぶりに読んで良かったと思えた!
それと、小説の中の世界と現代が似ている事に不気味さを感じる・・・
近未来の島国R帝国
国民はAI搭載の携帯電話の画面を常に見ながら生活している。
そんなある日、R帝国は隣国と戦争を始めていた。
国家を支配する【党】と謎の組織【L】
ジョージオーウェルの【1984年】を思わせるような世界観は読み手に不穏な空気感と不安を感じさせる・・・ -
悪とそれに虐げられる弱者を描いている。。
いつもの中村文則の作品、ややディストピア要素多目って感じ
悪と衆愚性、閉塞による幸福など、これまで同様の作品で扱ってきたテーマを詰め込んだ繰り返しになる
それも含めてリピートですね
初めて中村文則さんの本を読む人にはお勧めです、読みやすいし
今まで著者の他の作品を読んできた人にはやや単調なsf小説かもしれません