R帝国 (中公文庫 な 75-1)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122068834

感想・レビュー・書評

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  • 実際の世界と合うような。風刺のような。
    日本とは平和とは人間とは。曖昧にでも懸命に考えたくなるような話。読み応えがあり、時間をかけて読んだ。

  • 偶然の一致なのか?2017年に発売された小説なのに、今現在起こっている出来事に近しい事が描かれていて驚きです。常識は疑うのが当たり前な時代に突入した。読み応えがあり過ぎて疲れた。

  • 深い夜に部屋で一人、これを読んでたら泣いてた
    それくらい重くて、怖くて、耳が痛くなるようなしんどさがあった

    R帝国という架空の国の話なのに、とても身近に感じる。そう遠くない未来で起こり得る出来事だと思う。

    「人々が欲しいのは真実ではなく、半径5m以内の幸福」
    まさにその通りで、みんな自分が1番可愛くて大切。だから真実を語ったって、よっぽどのことがない限り世の中は変わらない。

    最後の方はお説教されてる気分で長く感じたけど、世の中に対する皮肉な感情は共感した。戦争という究極の状況になったから見えてきただけであって、世界はずっと醜いなと私は思う。

  • 中村文則流ディストピア小説。後味は期待通りに悪い。
    現代社会の問題を投影してるとのことで、無意識で従ってたことが目前に晒される恐怖があります。

    ストーリーとして展開も程よく、内省的な独白や心理描写も抑えられていて著書の作品と中では読みやすい部類ではないでしょうか。相変わらず語りの圧倒感はひしひしと感じるしそこが良い。

  • もし日本が右傾化したら?を予想した恐るべきディストピア小説
    刊行されたのは4、5年前ではあるがAI兵器や人工ウィルス、謀略による侵略戦争などまだ来たるべき未来の恐ろしい予想図が描かれていて自民党と某新興宗教との癒着が明るみに出た現在でも色褪せていない
    また随所オーウェルの1984年と似たような展開もあり、この作品からの着想も大きい事が伺える
    個人的にネトウヨを茶化した描写があるのは映像作品でも数少なく、こういう人物達に常にイラついていた自分としては非常に喜ばしい

  • どこか日本に近くて、遠いようなSFの話。

    世の中に興味関心を持たないとどうなっていくか
    考えることをやめた人間は管理しやすい。
    人が死んでいく世界の話ではあるが、今の日本にもどことなく通じる皮肉が含まれている。


    最後まで読んでも、心が晴れる事は無いので、
    メンタル強めなときに読むのがオススメ。

  • 『朝、目が覚めると戦争が始まっていた』

    というなんとも衝撃的な一文から始まる。

    架空の国「R帝国」が舞台。(架空だけど明らかに日本)
    人びとは人工知能が掲載された携帯電話 HP(エイチピー)=ヒューマンフォン の画面を常に見ながら生活している。
    B国が核兵器の発射準備を始めたことを察知したためにR帝国はやむなく宣戦布告し戦争が始まった。政府は言った。『私たちは平和を望みました。こんな犠牲は払いたくありませんでした。この度の戦争はわが大R帝国自衛のためやむを得ないものでした』云々・・・

    R市民である矢崎は思う。B国は野蛮すぎると。空爆で死んだB国の使者はかわいそうだけど仕方がない、それも運命だ、と。すぐ終わると思っていたB国との戦争だったが、気づけばY帝国とG帝国も加わって世界戦争に。
    突然始まった戦争、ミサイルが降り注ぎ逃げ惑う矢崎は敵である女性に救われる。そして事実を知る。これは『作られた戦争』だと。
    果たして世の中に真実を伝えることができるのか、矢崎は戦争を止めることができるのか。この世界はどう進んでいくのか。

    内容が壮大すぎて、ちんぷんかんぷんと思いきや、そこはさすがの文章力でぐいぐい引き込まれて、まさに没頭して読んだ。
    いったいどんな脳みそがあればこんな話が思いつくのか、どんでん返されまくり。とにかく登場人物が多く、何度も前のページを確認しながら、さらに、感情移入しすぎて熱が出そうなくらい頭に来たり、悲しくなったり、不安になったり・・・メンタル崩壊寸前。

    2017年に書かれたこの本は私たちに多くの問題提起をしてたんだけど、残念ながらその最悪のシナリオが今現実に起こりつつあっててほんとうに怖い。独裁政治、メディアの情報操作、SNSにハマりすぎる人、依存してる人、
    差別問題、ネット上の誹謗中傷やヘイト、それを気軽に拡散してしまう人びと。意図的なデマを流して炎上させる手法、政治家の悪行。貧しく苦しんでいる人たちをバッシングしたり自己責任と突き放す人たち、、、あぁ、胸が痛い。
    これはあくまでも小説だけど、リアリティがありすぎて戦争ってこんな風にあっけなく始まるんだなと怖くなったし、ネット上にあるフェイクニュースや、誰かのもっともらしい考えに振り回されないようにしたいし、物事を自分の頭で考えて行動することの大切さに改めて気づかされた。
    重くて苦しくて辛い話だけど、ラストにはかすかな希望も見えた。

  • SFと風刺、ディストピアと人間愛、これを描けるのは中村文則をおいて他にはいないのではないでしょうか。ACSっぽい人間が出てきてとても嬉しい。そして読み終わっても全然終わらない物語。戦争反対です。

  • 表現の自由、人権が認められている今の日本にいられることは恵まれてると思えた。
    でも情景や主人公の視点がころころ変わるため、ついていくのが少し難しかった。

  • 小説を通してニュースから伝わらない国の考え方を知ることができた。人間は必ず死ぬ。それまでこの世に生まれて意識をもつことができた自分という存在がいかに価値のある存在か理解できた。他人は他人。自分ともっと心で会話して磨いていこうと思った。それが一番幸せなことだと思った。

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著者プロフィール

一九七七年愛知県生まれ。福島大学卒。二〇〇二年『銃』で新潮新人賞を受賞しデビュー。〇四年『遮光』で野間文芸新人賞、〇五年『土の中の子供』で芥川賞、一〇年『掏ス摸リ』で大江健三郎賞受賞など。作品は各国で翻訳され、一四年に米文学賞デイビッド・グディス賞を受賞。他の著書に『去年の冬、きみと別れ』『教団X』などがある。

「2022年 『逃亡者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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