チャリング・クロス街84番地-増補版 (中公文庫, ハ6-2)

制作 : ヘレーン・ハンフ 
  • 中央公論新社
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感想 : 57
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122070257

作品紹介・あらすじ

ロンドンの古書店に勤める男性と、ニューヨークに住む本好きの女性。大西洋をはさみ、二十年にわたって交わされた手紙には、読書の愉しみと相手への思いやりがあふれていた。本作発表後のあたたかい反響を描いた記事「その後」を新たに収録する。〈解説〉辻山良雄

感想・レビュー・書評

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  • DVDを観て原作を読む。どちらも素晴らしかった!
    本好きな人だったら感動すること間違いなし。詳しい感想はDVDの方に~

  • イギリス古書店のフランクとその家族と、アメリカに住むライターのへレーンの20年にも渡る往復書簡集。
    同じ言語を持つ国同士ってこういう幸せなやり取りができるんだ、と羨ましく思える。
    古書の持つ役割が今とはずいぶん違い、書物が大切にして扱われている良き時代の風景だ。
    こんなふうに書店とのやりとりができるといいなと思う。
    今年は私の住む街でもどんどん書店が潰れていった。インターネットで本を注文する人がほとんどの時代。書店を存続させて育てていくのは私達読者なのだよね、と思う。なので、本屋に行って本屋で本を買うことに決めている。だって楽しいし。
    でも仲良しの書店員さんはいないなあ。洋服だとショップの店員さんと仲良くなるのに不思議ではある。今年はレファレンスしてくれる書店員さんを探そうかな。

    後日譚がまた楽しかった。多くの読者が、この二人の関係を羨み愛したということに胸が熱くなった。

    今からNetflixでアンソニー・ホプキンス主演の映画を見ます!

  • ロンドンの古書店勤務のフランクとニューヨークの脚本家のへレーン、そして徐々に2人の周りの人々との友好関係が、古本の購入を通じて深まっていくのが、本当に心温まる書簡集(これが実話とはなんてすばらしい!)。

    お恥ずかしながら、注文されるイギリスの古本をほとんど知らなかったものの、丁寧で優雅、ちょっとお茶目な手紙の文体が素敵で、上質な気持ちになりながら読み進めた。
    20年の文通の間に、消息不明になる人や亡くなる人もいて、人と人とが心を通わせられる時間の儚さ、それゆえのかけがえなさについて、思いを巡らせずにはいられない。

  • 1949年10月5日から始まる、ロンドンの古書店マークスの店員とニューヨークの脚本家ヘレーン・ハンフとの20年間の交流を描いた書簡集。ネットの普及により奔流のような伝達の迅速性や簡易性を得た代償に、緩やかな流れからの景色のような大切なものが失われたことに気付かされる。大戦後の米国の好景気と英国の疲弊の様子も綴られ、食糧を贈るへレーンと喜ぶ店員からの感謝の手紙にはほっこりさせられる。カジュアルなへレーンと律義でフォーマルなドエルや店員とのウィットやユーモアに富む手紙のやりとりは、江藤淳の巧みさもあって大西洋を隔てた両者の笑顔や困惑顔が目に浮かんで来る。心和らぐ一冊でした。

    I love inscriptions on flyleaves and notes in margins, I like the comradely sense of turning pages someone else turned, and reading passages some one long gone has called my attention to. 私は見返しに献辞が書かれていたり、余白に書き込みがあるの大好き。だれかほかの人がはぐったページをめくったり、ずっと昔に亡くなった方に注意を促されてそのくだりを読んだりしていると、愛書家同士の心の交流が感じられて、とても楽しいのです。

  • 増補版「本作発表後のあたたかい反響を描いた記事「その後」を新たに収録する。〈解説〉辻山良雄」

    チャリング・クロス街84番地 ヘレーン・ハンフ(著/文) - 中央公論新社 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784122070257

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      kosamebitakiさん
      ゴソゴソ探したら出てきたので、ちょっとメモします。

      ヘレーン・ハーンフ「ニューヨーク、ニューヨーク ニ...
      kosamebitakiさん
      ゴソゴソ探したら出てきたので、ちょっとメモします。

      ヘレーン・ハーンフ「ニューヨーク、ニューヨーク ニューヨークっ子のN.Y.案内」 (サンリオ文庫) 犬養智子:訳
      カバー折り返しの著者紹介に"1970年に出した『チャリング・クロス街84番地』は、ロンドンの古書店との20年にも及ぶ交流を描いたエッセイで、書物への限りない愛情を綴っている。日本にも紹介され(中公文庫・江藤淳訳)話題を集めた。その続編として『ブルームスベリィ公爵夫人』が出版されている。"
      2021/02/05
    • kosamebitakiさん
      ヘレーンさんは、NYの案内本も出版されていたのですね。
      中公文庫の増補版は、4月に発売日が伸びてしまいましたね。その後のことが書き足されて...
      ヘレーンさんは、NYの案内本も出版されていたのですね。
      中公文庫の増補版は、4月に発売日が伸びてしまいましたね。その後のことが書き足されているようですが。
      2021/02/05
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      kosamebitakiさん
      延期かぁ、、
      増補版が売れたら、続編も文庫化!と妄想しています。
      kosamebitakiさん
      延期かぁ、、
      増補版が売れたら、続編も文庫化!と妄想しています。
      2021/02/06
  • 近所のお気に入りの古本屋がなくなって何年も経つ。それからずっといい古本屋を見つけられないでいる。

    時は第二次大戦直後、若いアメリカ人女性がロンドンの古書店に本の注文の手紙を送ってくる。彼女は古い英国文学が好きなのだが、アメリカには希望の本がないからなのだ。その女性は売れてない脚本家で、そのウィットのある文章に魅せられた担当者以外の店員やその家族も加わり、古書店と客の付き合いは20年以上続いた。その書簡をまとめたもの。

    こういう昔の女性の話し方が好きで。訳文だから、訳し方のセンスもあるだろうけど。ですわ、とかありましてよとか。お嬢様言葉っぽいけどまた違うんだよね。


    本の値段がイマイチよく分からなくて。さらっと調べたら、えっ!こんな安いの⁇って値段になったんだけど、古本だから?この時代だから? もともと買っているのは内容重視で装丁には拘って無かったという事なのかな。装丁のちゃんとした古本は高いイメージだったので、そこが分からないまま読了してしまった。ちゃんと調べたら分かるだろうけど、それも違うような気がして放置。
    心温まる良いやり取りを読みながら、出て来る本の値段を都度確認してる自分ってなんて俗物。

    ヘレーンは結局最後イギリスに行った?のか。とはいえ、担当店員は亡くなってしまい、この本が出た後に、だけど。
    私だったら行きたくないな、20年も文字だけで繋がっていた相手に現実の自分を見て幻滅されたくないししたくない。相手も自分が作り上げたイメージと違ってたら、勝手にガッカリしてもうやり取り出来なくなるし。だからヘレーンもお金がないとか仕事が入ったとか言ってずっと誘いを断り続けていたんじゃないかと思う。良い本屋さんを失いたくないから。
    最初の頃は、ほんとに行けなかったんだろう。お金が無くて。宿は任せてうちに泊めるからとか言われたら、心が動く。けど、だんだんと行きたくないなこの付き合いを守る為にという思いが生まれてきたのでは?

  • 広い大西洋を挟んだロンドンの書店に務める男性とニューヨークに住む女性脚本家の書簡集、ドキュメント。
    それぞれの国の食料事情など互いに思いやりを持っての文通と本の注文のやりとり。
    現代では味気ないネット通販となりがちだけれどこの時代だからこその味のある文面と互いの本の知識の交換に目を見張るものを感じる。一冊一冊に注釈も入り、本を愛する人に愛される二十年にも渡った書簡集となったのはありがたく嬉しい限り。
    本好きという人種には一種同じような空気感まとわりついてますね〜

  • ニューヨークに住む古本が好きな女性へレーンと、ロンドンの古書店に勤める男性フランクとの20年に渡る往復書簡集。
    最後の最後まで、実話とは知らずに読んでました。
    最初は古書店宛ての注文から始まるんだけど、やり取りを重ねるうちに生まれた友情のような愛情のような温かい心の交流が描かれています。
    いいなぁ。本好き同士の文通。
    メールじゃなくて、直筆で。
    切手を貼ってポストに投函。
    返事来てるかな?って待つ時間も良いなぁ。
    アナログな温かさって豊かだよなぁと思う。

    “余白に書き込みがある古本や、前の持ち主のお気に入りのページがパッと開くような本が好きで、愛読書家同士の心の交流が感じられてとても楽しい”

    と言うへレーンの本の愛し方が好き。
    私自身、古書店で購入してこの本を読めたことがとても嬉しい!

  • アメリカ人ライターのヘレン・ハンフが英国の古書店と第二次大戦後から20年にわたってやりとりした書簡集。増補部分の書評に「アメリカ人の率直さが英国人の慎ましさを突き破った」というようなことが書いてあったが、確かに気質的に書店員フランク・ドイル氏側に近い一読者としては「ちゃんと私が頼んだ本を探してくださってるの?」なんて書面で見たら度肝を抜かれそう。

    だがそんな手紙と同時に、戦後の物不足を心配したヘレンがハムだの卵だのを送り、店と顧客の関係を超えた信頼関係が築かれていく様子が手に取るようにわかる。最初は名前を明かさなかったフランク。店に手紙の写しを保存しなくてはいけないので個人的なことは書かないつもりだったが、だんだん人情味が出てきるところなど、今で言えばメールのccを外してジョークを交えた私信を交わし始めるといったところか。更には隣のおばさん、他の店員、妻や娘までも文通の輪に入ってくるのだからヘレンの文章力と、それを超えた人間力みたいなものの凄さよ。しかもそれと同時に、フランクが亡くなるまでも、その後も対面での交流はなかったというのだから面白い。

    古書のタイトルが飛び交って置いてきぼりを喰らうかと思ったけれど、こんな風に芋づる式に本を読んでみたいなあという羨ましい気持ちがつのった。簡潔なやりとりで、さらっと読める。

  • イギリスとアメリカ。
    20年にわたる大西洋を越えた往復書簡集。
    こういう結末はちょっと予感があった。

    前の持ち主が愛読したところが自然と開けるような本が好き。
    余白にある書き込みが好き。
    見返しにサインをしてほしかったのに。

    主人公の、本の愛し方が伝わってきてドキドキする台詞がたくさん。

    内容を知りたいんじゃない。
    そのお話が載った、その唯一無二の本という個体が経てきた出会いの数々を手中に収めようとするような感覚がとても素敵だった。

    誰それの挿絵の版で。
    朗読するとバッハのフーガのようだった。

    こうした内容に対する表現だけでなく、本の装丁に関する描写も、とても美しくてうっとりしてしまう。

    書簡のやりとりが進むにつれて「様」を省くようになり、愛称で呼ぶようになり、会いたいと思うようになり、という変化がいい。読者にもいつの間にか、登場人物の人となりや生活環境、職業や家族構成が分かってくる仕掛けになっている。それぞれの家族の生老病死、移住や政権交代、それに伴う生活の変化など、さまざまな出来事の、その内容が時代を感じさせるものばかり。
    各国の食糧事情に話が及んで、改めて日付の意味に気付かされる。

    「イギリスへ行かなくても、イギリス文学はここにある」という、末尾に近いところに出てくる筆者の台詞が、全てを物語っているみたい。
    そうだよね、その気持ち分かる、と心から頷いてしまった。


    訳者である江藤淳さんの解説にあった言葉の中で「うたかたのように消えていく書物への嫌悪感を持ちつつ、テレビの脚本も書いて生活を立てていることの羞恥と反撥」という表現があって思わず立ち止まった。
    表現者の苦悩をつい漏らしてしまう相手が、信頼できる古書店の店員だったということにとても共感したから。

    巻末エッセイの辻山良雄さんの言葉も印象的だった。
    本を売る人の立場で、まだ見ぬ読者に対して「自分の顧客の本棚に責任を持っている」という台詞。
    「商いの規模や利便性ではなく、お客さんと心の通ったコミュニケーション」、それが商売のあるべき姿、というフレーズに拍手を送りたくなってしまった。

    あんまり懐古主義的な理想論を振りかざすのは控えたいけれど、こと文章や音楽のやりとりについては、、、いや、本当は家具や服や食べ物でもそうなんだろうけれど、、、やっぱりマニュアル通りの「ヨゴレ書き込みアリ」かどうかだけではない、美しさや愛おしさを分かり合える人とやりとりする、そのやりとり自体にも価値があるんだよ、などとつい、イタズラにコトバを連ねたくなってしまう。


    1949年から1969年。

    この書簡のやりとりから数十年が経って、数秒でやりとりできるメールが主流となり、検索してワンクリックで欲しいものが手に入りクレジット決済、ということが普通になった。

    でも、この頃のやりとりと同じことが今も行われている、そういう関係もちゃんとまだ生き残っている場所がちゃんとあるし、きっとこれからもそうだよ!と声を大にして言いたい気持ちになった。

    この本棚も、このレコード棚も、今風なモノも加えるならこのiTunesの中身も、それぞれ「お世話になった人」の顔が思い浮かぶ。

    書簡も、メールも、捨てられない。
    それが人生の醍醐味。


    ・・・じゃない?




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著者プロフィール

一九一六年、アメリカ、フィラデルフィア生まれ。テレビドラマのためのシナリオ執筆に勤しんだ後、雑誌や書籍で活躍。本作発表後一躍注目を集め、その名を高めた。一九九七年、死去。

「2021年 『チャリング・クロス街84番地 増補版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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