文化としての数学 (中公文庫 と 38-1)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122071131

作品紹介・あらすじ

数学が人間からかけ離れた絶対的な真理であるという思想、あるいは神が数学を創り人間に与えたとする神話は、古代から現代まで姿をかえてたえず登場してきた。だが、すでにできあがった数学を天下り式に子供に注入する教え方は、数学をつまらなくさせてはいないか? 人類と数学の出会いから今日の数学理論に至る発達史や、初等教育における分数の計算や数の抽象化の難しさなどを平明に語り、自然や人の営みと数学の関わりを説き明かす。

「数学には甘い菓子のようなおいしさはない。しかし、暑いときに飲む冷い真水のようなうまさはある」と語る著者の業績は、数学的側面だけでなく数学教育から障害者教育まで幅広く、かつ、学問・科学・芸術に対する深い造詣と、そこから教育や人間を捉える真摯な洞察に満ちている。本書は、50年代半ばから70年代前半に発表された、数学と文化について語った文章を集めたもので、著者の思想と、数学の面白さや奥深さを知る格好の入門書となっている。「数学勉強法」「数学と社会も変わった」の二篇を増補し、吉本隆明の追悼文を再録。


【目次より】

Ⅰ 数学はあらゆる分野に浸透する

 これからの社会と数学

 数学と現代文化

 専門の違った人たちとダベってみる その一

 専門の違った人たちとダベってみる その二

Ⅱ 数学はどんな学問か

 数学は単純で素直である

 数学は特殊な言語である

 数学は学問的に孤立する危険をもつ

 数学も時代の支配的イデオロギーに規定される

 数学は自然や社会を反映する客観的知識

 数学も人間を形成する

 数学はほんとうに論理的か

 数学と方法

 数学の発展のために

Ⅲ 数学はどう発展したか

 数学の歴史的発展

 現代数学の主役=構造とはなにか

 構想力の解放

Ⅳ 科学を学んでいくために

 科学への道――女性に与う三つの原則

 数学勉強法

 数学も社会も変わった

  あとがき

巻末エッセイ

 遠山啓――西日のあたる教場の記憶(吉本隆明)

感想・レビュー・書評

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  • 数学を”日本語”で説いてくれている点に、対象読者が見て取れる。例えばy=f(x)を、xというものに、fの「はたらきor機能」によって、yを作り出す、という言い換えは文系でもすんなり腑に落ちるなど。集合や構造等々の解説もたとえ話が平易で、苦手の自分でさえ、数学の愉しみと捉え方が解りやすかった。デカルトの『方法序説』を用いて勉強の原則を説明するくだりも良く、高度な知識を有する人ほど教え方をよく識っている典型のような書。半世紀前の著作だが、内容に古さが無いのは、普遍的価値がある証拠。

  • やっぱり数式が並ぶと難しく感じるけど、それ以外のところでは数学おもしろいかもって考えれそう。

  • この人の文系向けに書かれたいろんな解説を集めたもの、というかんじ。数学がどんなものか、まずおおまかにその考え方、"哲学"みたいなものを理解したい、という人にはとてもいいと思います。

  • 安野光雅『空想亭の苦労咄―「自伝」のようなもの』(ちくま文庫)と前後して出たようで、平台の近くにみつけ、いっしょに買わないという手はないぞということで入手。
    もとは1973年に国民文庫として刊行、2006年に光文社文庫になっていたらしい。
    今回、遠山啓全集から二篇を増補、巻末には解説に代えて吉本隆明のエッセイ「遠山啓―西日のあたる教場の記憶」(『追悼私記』ちくま文庫、初出は1979年「海」)がついている。

  • 人類と数の出会いからの歴史や初等教育での数の抽象化の難しさなどを平明に説き、人の営みと数学の関わりを語る格好の数学入門。〈巻末エッセイ〉吉本隆明

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著者プロフィール

遠山 啓(とおやま・ひらく):1909-79年。熊本県生まれ。東京大学数学科に入学するも退学、のち東北大学数学科を卒業。海軍教授をへて東京工業大学教授。数学教育への関心から民間教育団体「数学教育協議会」を結成、長く委員長をつとめた。数学教育の理論と方法を開発・提唱し、その水道方式、量の理論などは、教育現場に大きな影響を与えた。著書に『無限と連続』『数学入門(上・下)』(以上、岩波新書)、『代数的構造』『現代数学入門』『代数入門』『微分と積分』(以上、ちくま学芸文庫M&S)『競争原理を超えて』(太郎次郎社)などがある。教科書や雑誌の創刊にも多く関わった。

「2023年 『初等整数論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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