- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122074064
作品紹介・あらすじ
シベリア鉄道での亡命旅行「トランク」、満洲で芸者をしていた女性の一人語り「幕切れ」。旅を愛した林芙美子は、自身の訪れた国々を積極的に小説に描いた。庶民目線を貫いたその筆は、戦前の日本人が海の向こうの〈大陸〉に抱いた希望と憧れ、そして敗戦で負った傷跡を克明に写し取っている。絶筆となった「漣波」ほか欧州、ロシア、満洲を描いた小説七篇と、川端康成が単行本『漣波』に寄せた「あとがき」を収録。〈解説〉今川英子
感想・レビュー・書評
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戦前・戦後、日本やロシア、中国、パリなどを舞台にした短編集。
「雨」、なんとか命からがら日本に帰ってきた兵士が故郷に戻ったが居場所がなかった話が印象的。「いったいこんな焼け野原になるまで、どうして人々は我慢をしていたのか」 -
満州国というものが存在していた頃の、かの地やモスコー(モスクワ)や欧州へ野望や夢を抱いて乗り込んでいった人々を描く短・中編集。今の感覚で読むと、この人たち侵略に罪悪感とか抱かなすぎじゃない? と思ってしまうが、当時の普通の人々の感覚としては、内地で鬱々としているよりも海の外に出てやろう、という気持ちはイキイキした野心として肯定的に捉えられていたのだろう。異国の地で、女性としてのつらさや、男性との立場の差、同性間でも身分の差を感じたり、ということはあるが、侵略される側の人々のことを登場人物たちが慮るのは、表題作の男性二人くらいで、それはひどく一方的なものに終わる。これらの作品を違和感なく読めるようになってしまうような時代になりませんようにと願うばかり。当時のそれぞれの土地の様子や、人々の暮らしは細かく丁寧に描きこまれており、読み応えがある。
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旅好きで知られる林芙美子が欧州、ロシア、満洲を描いた小説を集成。絶筆「漣波」を含む七篇と、川端康成が「漣波」単行本刊行時に寄せたあとがきを収録。