あの日の交換日記 (中公文庫 つ 32-2)

著者 :
  • 中央公論新社
4.02
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本棚登録 : 406
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122074965

感想・レビュー・書評

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  •  辻堂さん作品は『十の輪をくぐる』しか知りませんでしたが、本作も同じ2020年の刊行で、27歳での作品、恐るべし! その才能に驚かされます。

     日常の謎や書簡小説等は、他の作家さんも手がけており、幾つか思い当たります。でも本作は出色の作品に思えました。読み始めと読後の印象が(よい意味で)だいぶ変わります。
     様々な関係の2人が紡ぐ「交換日記」をモチーフにした7篇の連作短編集です。ネタバレや匂わせを避けつつ、感心したことを何点か挙げます。

     7篇それぞれの、誰かと誰かの関係性が変化に富み、豊かにストーリーに反映されていること。
     各編に設定された小さな疑問と驚きが、次第に振り幅と引き込みが大きくなり、魅力的なこと。
     秘密めいた交換日記に散りばめられた、鮮やかな仕掛けと繊細な心理描写が優れていること。
     文章の筋道の緻密さ、日記表現を意図したであろう温かい言葉を入念に選び、練られていること。
     これら全てが、最終章の驚愕の真相に繫がり、感動の収束に結びつくこと。等々‥

     日常的に、人と人との気持ちがすれ違う経験は誰しも思い当たります。何かがきっかけで最後に分かり合えたら素晴らしいですね。
     本作では交換日記がそのきっかけでしたが、どこかで自分の心の内をさらけ出すことも、時に必要かもしれません。SNSじゃ無理ですかね? 熟考せず簡単に話し言葉で書き込みますもんねぇ‥。

     せめてブクログのレビューは、嘘・偽りのない心の声を記したいです。誰かを傷つけない程度に‥

  • 辻堂さんの本は4冊目。ほとんど予備知識なしで読んだのがよかったのか、これまでで一番面白かった。教師と児童、姉と妹などそれぞれの交換日記に隠された真実に〝そうだったのか!〟と驚かされること7度。第1話で心を鷲掴みにされ、最後のエピソードで全て繋がったときの爽快感といったらない。冒頭で示される「お約束」の仕掛けにも唸らされた。これからも注目していきたい作家さん、近日刊行予定の新作「二人目の私が夜歩く」も非常に楽しみ。

  • 初めての作家さん。
    帯に〝辻堂ミステリの真骨頂〟とありましたが、こちらも謎解きミステリになるのかな?
    交換日記から生まれるどんでん返しがテイストとなった心温まる7つの物語。

    長い黒髪に膝丈のフワリとしたスカートが素敵なみんなの憧れの先生。

    交換日記という少しスリリングなコミニュケーションを私たちアナログ世代の元女の子は、もしかすると経験した人は少なくないような気がする。私はある笑
    言葉では伝えきれないことでも文章にすると言える。それは確かにあって、私の場合は今でもコミニュケーションとしてはかなり有効で、ただ、その媒体が紙から電子へと移行してはいる。

    手書きというルールの中で生まれる、交換日記ならではのトリック。
    ・長期入院を余儀なくされた少女と教師の心温まる物語(入院患者と見舞客)
    ・先生、聞いて。私は人殺しになります(教師と児童)
    ・性格の違う双子の姉妹は交換日記の中で激しく言い争う(姉と妹)
    ・ASDというこだわりの強い息子。息子の提案ではじめた交換日記に母は振り回されて(母と息子)
    ・飲酒運転で交通事故を起こしてしまった青年と被害者女性の交流(被害者と加害者)
    他…

    1つひとつのストーリーの中にある小さな違和感が紐解かれたとき「嗚呼」となんとも言えないため息が漏れた。
    辻堂ゆめさんの他の作品も是非読んでみたい。
    今年の10冊目

  • 交換日記を軸に話しがすすむ、7作からなる連作短編。
    先生と病気で入院中の小学生、双子や親子など。キレイに登場人物が繋がっていきます。

  • 辻堂ゆめさん初読みでしたがめちゃくちゃ面白くて驚きました
    こんなトリックがあるなんて!誰も殺されないのに、まんまと騙されたミステリーで震えます
    徐々に真相がわかっていくうちに鳥肌が立ちっぱなしでした
    すっかり辻堂作品にハマってしまい今月発売の新刊予約しちゃいました
    連続短編なので一つのお話が終わるたびに騙されて、次こそはトリックを暴いてやると意気込み読み進めるもまた騙されてしまいます
    読後はミステリーなのに癒されますよ

  • 最っ高‼️でした‼️

    書店での入荷をずっと待っていてやっとゲットできて1日で読みきりました。

    最近読んだ本の中で個人的に上位にランクインしてます☆

    全てが繋がった時、、、もう胸がいっぱいになりました。

    交換日記、、、。私も大切な人としたいな。

    とても読みやすく文章も綺麗で、心が暖まる作品です。

    みなさん良かったら読んでみてください。

  • どうしても好きになれなかった...。
    本作は、6つの短編がそれぞれ、最後に少しひっくり返るという展開であった。暗い内容から救いを最後に見ると言う展開は正直、途中から疲れてくるし真相に気付く場合も多かった。そして、最後の短編で6つのストーリーを回収すると言う感じ。時系列を脳内で並べ直したりする作業は、直感的ではなく不本意で面倒臭いと感じてしまった。(少なくとも、それは感動と両立できないので。) (これは態々グチャグチャにする必要を感じなかったと言う意味で)
    個人的このような、悪は限りなく悪と描き、その他全ての人々を全肯定するという話は嫌いで今回もそう思った。また、ラストで同乗者だからきっぱり許すというのも、事件の真相がどうであれモヤモヤする。(飲酒は認知していたわけだし止める責任は当然ある、これは罪深いことだし決して肯定(?)してはいけないのではないか。)
    今回は、期待し過ぎたと言うのもある。(52ヘルツのクジラを読んだ時と同じ気持ち)。しかし、良きところを挙げるとすれば、お婆ちゃんの事故死として読者に違和感を与えないようにしつつ、最後に時系列を入れ替えて筋を通すと言う腕の見せは感心した。(俺ではない炎上を想起させるような)

  • 辻堂ゆめさんの作品は初見でした。
    交換日記にまつわる短編連作ですが、そう繋がっているのかーと驚きでした。
    とても読みやすかったです。

  • 長編の合間に読めるくらいのボリュームなのに、満足度は◎
    ミステリと心温まる感じを同時に味わえます。

  • 日記が題材の作品にありがちな「過去の罪の告白」ないし「告発」みたいなものに寄らず、交換日記を軸にして登場人物どうしが心を近づけていく様子と、綺麗に配置されたミステリ要素がとても良かった。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。東京大学在学中の2014年、「夢のトビラは泉の中に」で、第13回『このミステリーがすごい!』大賞《優秀賞》を受賞。15年、同作を改題した『いなくなった私へ』でデビュー。21年、『十の輪をくぐる』で吉川英治文学新人賞候補、『トリカゴ』で大藪春彦賞受賞。

「2023年 『東大に名探偵はいない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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