- Amazon.co.jp ・本 (394ページ)
- / ISBN・EAN: 9784130201551
作品紹介・あらすじ
近世日本における社会の変容と新たな世界への希求がいかになされてきたのか.空間論的アプローチから描く新たな政治史叙述を試みる.政治空間としての江戸城,そのなかでの裁判とはなにかを問い直すとともに,社会情報の浸透を担ったメディアのあり方,さらには幕末の新しい政体構想の模索を描く.
感想・レビュー・書評
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「近世史研究の成果に空間論的視点を導入した新たな政治史」(p.1)をうたった一書。書名の副題にあるとおり、「裁判」「公議」「世界のなかの日本」という3つの「空間」を手がかりに、近世の身分制政治社会が、空間的にも、身分的にも、地理的にも「開かれた」近代的な政治社会に編制替えされていく様相を描き出している・・・という内容だと思う。
個人的な関心からいえばやはり第7章が強い印象を残す。開成所会議と公議所が明らかに別のものだという指摘は基本的であるがやはり重要である。またその区別をふまえて、大広間会議と公議所が上下院の二院制を模して構想されたという指摘も印象深い。
さらに、公議所についてそれが町人や農民に至るまで書面、口頭の両方の参加が可能で、実際にそれが行われていたこと(p.324観世実の資料)、その口頭の申立は近世同様の「単なる書面による建白方式」ではない(p.323)という指摘も興味深い。「「公」の議論を保障するという強い意志」(p.324)という評価は、公議所のこれまでの評価(慶喜救解の方策を検討する)を一変するものとして意義があるだろう。
とはいえ、やはり裁き・公・「日本」の3点が有機的に連動しているか、というともうひとつ理解が及ばなかった。空間論としてまとめるにはやや個々の要素の距離が遠いかな、という印象は拭えなかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示