イスラエル 人類史上最もやっかいな問題

  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (385ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140819333

感想・レビュー・書評

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  • かなり詳細なイスラエルとパレスチナの歴史が書かれている。
    それぞれの歴史的な事件がどのような背景にあり、どのような了解可能な流れがあったのかについてひとつずつ触れられている。またその中でシオニズムやイスラエル人の中での多様性や格差についても触れている。読むことで、作者の意図通り、複雑さを知ることができる(あまりに複雑なので一読ですべてを頭に入れることは難しいが)。

    アメリカのユダヤ人とイスラエルのユダヤ人の関係についても紙面をさいて説明されている。また福音派がなぜイスラエルを支援するのかについても記述がある。この点についても、単純な「イスラエルロビーが政治的圧力をかけている」といった理解から一歩踏み込んだ複雑さに触れることができる。

    2020年頃までの記述しかなく、ネタニヤフが政権の座をおりたことに筆者が希望を見出しているのが切ない。その後2023年までにどのような流れがあったのかについての記述は、発行年度的に当然ないので、その部分については補完したい。

    作者はなるべく一方的に糾弾したり理解不能だとしてどちらかの行動を異化することなく、歴史的な事実をすべて了解可能なものとして説明しようとする。そういった点で、ある程度の中立性という筆者の目標は果たされているように感じた。
    一方で、リベラルなユダヤ系のアメリカ人で、幼少期まではイスラエルに憧れを抱いていたという筆者の来歴をそのまま写し取るかのような、「迷い」が文章のあちこちに顔を出すこともあり、パレスチナの惨状を記すことを否認しようとする傾向や、平和や共生についての筆者の感情的な部分が伝わってくることも(そしてアメリカの若いリベラルなユダヤ人についてはもしかすると理想化しすぎているところがあるのかもしれない)ある。しかし本の中で冒頭から、そして至るところで、そういった筆者の来歴について、そして現在のスタンスについて語られており、そういった点でも非常に誠実な書き方であると感じた。

  • 繰り返される戦争、決裂する和平交渉、日本人にとってあまりに複雑なイスラエル−パレスチナ問題を深掘りする本である。おそらく一読して分かる内容ではない。ただ中東の石油依存を深める日本人にとって決して避けては通れない、そして知らなくてはならない問題だ。

  • 2023年10月にイスラエル問題が再び激化した事によって、この本を読み始めた。

    この本を読んでいる間はイスラエルに関する、日本のニュース、YouTubeの動画、Xの情報は見ないようにしていた。偏った情報を入れない為に。

    著者はユダヤ系のアメリカ人のようだが、読んだ限りでは、あまり知識の無い自分でも、イスラエル、パレスチナ、両者の目線に立った公平な視点で書かれている気がした。

    この他にも関する本を読みたい。
    色々なメディアの取り上げ方にも触れ、またこの本に戻ってみようかなと思う。

  • 大変よくわかりました。まだ途中なんだけど、和平と戦争を繰り返し。イスラエルも建国当時から左派だったけど、今は右派。だから、その前政権のアンチテーゼのために戦争をする。誰と、第四次中東戦争後はエジプトと和解。ヨルダンと交渉。でもそもそもパレスチナ側は国にもなってないし、イスラエルは認めるわけにはいかない。だから戦争継続、パレスチナもそもそもPLOの後は、ヒズボラだハマスだといろいろ権力闘争して、その時にチカラのあるやつをイスラエルは叩くだけ、根本解決出来ない。読んでるだけで、疲れて来た。ここに住む人はたまったもんじゃないね。

  • ガザ地区とイスラエルの戦争は終わりが見えなくなってきた。
    パレスチナの怒りはもっとも。各国で差別されホロコーストを経験したユダヤ人には同情するが、なぜユダヤの国が必要なのか? なぜ2000年も他国に同化しないのか? ヒッタイト人とかもう居ないだろ?
    イスラエルに非があると言わざるを得ない。

    イギリスの三枚舌外国やグレートゲームのとばっちりと言われるが、宗教右派と国家が結ぶと戦争になる見本。
    イギリスはだんまりを決めこむ中、アメリカが不支持に回ればイスラエルは孤立化しアラブ諸国の反攻に合うだろう。トランプが再選すれば、逆にパレスチナを見殺しにしアラブがイスラエルに宣戦布告し、、、WW3か、、、
    解決の道筋が見えない。

  • 『感想』
    〇イスラエル問題は、日本にいるとニュースで聞いてもどこか他人事で大変だなと思う程度の意識しかなかった。なぜならここに至るまでの歴史を全く知らないから。

    〇本を読んでいくと、知らないことばかりなんだと改めて分かった。だから読み切るのが大変だったし、理解できずに進めていくところばかりだった。

    〇宗教を大事にする人からすれば、遠い昔の一部の人しか信じていない約束が大切で、それは現在の状況など加味しない(たぶん他宗派は関係ない)のだろうか。

    〇宗教を抜きにすれば、人の土地を奪うこと、人権を認めないこと、命を軽く扱うことはおかしなことだ。

    〇キリスト教国がアラブ諸国よりも発言権があることが更にややこしくしている気がする。

    〇そう言って簡単に切り捨てることができない問題であることはよくわかった。

    〇イスラエル側もパレスチナ側も、それぞれ将来的な希望はあるのだが、どちらかに大きく傾くことはより大きな犠牲を生むことにもなるわけで、現状のなし崩し的な状況が望ましいのか。それぞれの国にもいろいろな考え方があり、自分たちが譲歩してまで平和的に解決したくないという人はいる。結局誰もが納得できる答えはない。

    〇この現状維持を望むような国際関係は他にもたくさんある。もっと小さな人間関係にもよくある。敵がいるから自分の立場があり、終わってしまえば用済みとされてしまうとしたら悲しいな。

  • ニュースで何となく知っている程度だったイスラエル、パレスチナ。最近また戦闘が起きた事をきっかけにきちんと知りたいと思い手に取った。読み応えのある本で、何度か読了を諦めかけたが、何とか最後まで辿り着いた。固有名詞がたくさん出てきたり、詳しすぎたりするために、頭の整理がおいつかなかったが、なぜこんなに問題がこじれているのかは概ね理解できたと思う。

  • 在米ユダヤ人によるイスラエル・パレスチナ問題に関する解説書。5月に日経の書評欄に取り上げられていて気になっていたが、買うのを先延ばしにしているうちに事態がだいぶ変わってしまった。
    歴史の記述などが豊富なのは当然として、興味深かった記述は、
    - 原題"Can we talk about Israel?"に表されているように、イスラエル・パレスチナに関する問題になると他のトピックとはうってかわって冷静な議論が難しくなるケースが多い
    - イスラエルの入植や攻撃の批判とanti-semitismは明らかに違うのに、意図的にそこを混ぜた反論がされやすい(現時点でもこれはかなり見られると思う)
    - ベン=グリオンの三角形の概念。恥ずかしながらこの言葉を知らなかったが、つまりイスラエルが(1)ユダヤ人国家であること、(2)民主主義国家であること、(3)占領や入植をすること、にはトリレンマがある。(3)を諦めるのではなく(2)を捨てる方向に行きつつある懸念は以前からなされている通り
    - アメリカにおけるイスラエルの扱い。在米ユダヤ人とイスラエルには乖離があり、トランプ登場がそれに拍車をかけた。むしろ(非ユダヤ人である)共和党の福音派がイスラエルに共鳴している
    - イスラエルにも多くの非ユダヤ人がいて、第三党はアラブ人政党(知らなかった)
    などなど。
    二国間対立が二か国共存の形で解決に向かうことを望まない勢力(過激派政党や民衆)が常に立ちはだかってきた事実を思うと気持ちが重くなる。今の日韓関係のムードはいつまで続くだろうか、など思わず自国のことも考えてしまった。
    読めば読むほど打ちひしがれる1冊であったが、だからこそ、最後の章で思わず目頭が熱くなった。

  • アメリカのキリスト教福音派がイスラエルを支持する理由。第三神殿、赤い班牛の生贄、キリスト復活、ハルマゲドン。訳わからん。
    アメリカ在住ユダヤ人の解説、分かり易かった。

  • イスラエル問題について詳細にかつ公平に(と感じる)書かれた一冊。もうね、こういうの以外は信じちゃダメだなと思った。どれだけ長く現地で記者をやってようが、どれだけ国際情勢に精通してようが、日本人がこの問題をどれだけ分析してみたところでこの著者からしたら「むちゃくちゃ浅い」のよ絶対。両国の間に起きた数々の事実は時系列順に並べればそれなりに歴史っぽくはなるんだけど、それぞれの事実の経緯を説明するに足る宗教観や感性はさ、もうこんなの当事者にしかわからないじゃん。自分がこの問題について全て分かってるわけじゃないけど、イスラエル問題について軽々しく書いてあるメディアに触れるのはほんと良くない。「日本の現在の人口は何万人ですか?」という問いに対して政府系のデータを参照しないで、まとめサイトにある「約1.2億人と言われています!」をそのまま引っ張ってきて理解した気になってるーみたいな。うまく伝わらないと思うけど、問題を考える上であたるデータソースって本当に大事なのよってことを言いたかった。

    あとこの問題は解決するの無理でしょ。問題解決を望まない層の勢力が強すぎる。ちょっとでも強硬なことを考えてる人間を双方で根絶やしにして初めてスタートラインなのでは?あと個人的に興味深かったのは、アメリカのユダヤコミュニティとイスラエルの関係性の変化。アメリカの若いユダヤ人がユダヤ人としてのアイデンティティを持たずアメリカというコミュニティに埋もれようとする中で、イスラエルがそれを阻止する手立てとして機能してたってのは面白かった。トランプ政権がアメリカのユダヤ人からしたらいかに狂っていたかってのも、他の立場から書かせたらきっと違うんだろうけど、1回の表に7点は入ってますね。後攻チームがこれ跳ね返せるのか?そんぐらい狂ってる。

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著者プロフィール

社会活動家。イスラエルの民主主義を名実共に達成させるためのNGO、「新イスラエル基金(New Israel Fund)」のCEO。同基金は、宗教、出身地、人種、性別、性的指向に関わらず、すべての国民の平等を確立すること、パレスチナ市民やその他の疎外された少数派の保護、およびあらゆる形態の差別と偏見をなくし、すべての個人と集団の市民権と人権を確立すること、イスラエル社会の本質的な多元性と多様性を認識し、それに対する寛容性を強化すること、マイノリティの利益とアイデンティティの表現および権利のための民主的な機会の保護、自国および近隣諸国と平和で公正な社会を構築し維持すること、などを目標に掲げて活動している。妻と二人の娘と共にアメリカ、サンフランシスコに在住。

「2023年 『イスラエル 人類史上最もやっかいな問題』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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