- Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140819425
作品紹介・あらすじ
『自閉症の脳を読み解く』著者の集大成。脳内で緻密なイメージを描く驚異の力とは?
写真のように精緻な記憶、細部まで正確に再現するシミュレーション、視覚イメージを駆使した推測――特異な能力をもつ視覚思考者の脳はどのように作用するのか。多様な思考タイプが協力しあうことの大切さとは?
自身も視覚思考者の著者が多くの実例や最新研究をもとに、ものづくり、ビジネス、教育に革新をもたらす新たな才能の世界を示す。
感想・レビュー・書評
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何を持って物体資格思考者や空間比較思考者と分類するのかのロジックに納得がいかないので、後半の偉人の例やIT業界で活躍する人の例がヒビかない。
xxという特徴がある人を、〇〇といいます。すごい才能があります。
以上の情報を得られた気がしない。 -
これはなかなかおもしろかった。
人は頭の中で考えるときに、文字で考えたり音声で考えたりするが、「ビジュアル・シンカー」は、絵で考える人のこと。
自分も頭の中に映像が浮かんで、それがどんどん連想していくということがよくあるので、以前から「人はどうやって思考するのか」というのは興味があった。
小説家の森 博嗣がエッセイで「映像で考える」と書いており、自分に似た人がいるのだと思った。自分の場合は、彼ほど強い傾向ではない。
https://www.excite.co.jp/news/article/BestTimes_2954/
他にもアートディレクターの中島英樹氏も映像で考えると言っていた。
これは本人にお会いした時に聞いた。「変なことを聞くんだな」と思われたかもしれないが、きちんと答えてくれた。
本作には、逆に文字だけで考える人というのも出てくる。
そういう人は頭の中に文字が浮かぶのだろうか。それだとテキストという映像を思い浮かべていることになる。そうだとすると、頭の中に音声が響くのかもしれない。その場合は「音声で考える」ということになるのではないか。
そういう時は、自分の声が頭の中に聴こえるのか、他人の声なのか、といった興味もわいてくる。また、友だちとの会話を思い出すときは、友だちの声なのだろうか。
自分に引き寄せた感想を書き連ねてしまったが、自分が追いかけているトピックなので、非常に興味深く読めた。 -
人間の思考方法は、言語だけではない。
一般論として、それは受け入れられる。
だが、ではそれ以外の方法はどんなものなのか、それこそイメージができない。
そこで、本書を読むことにした。
著者は動物行動学者で、家畜の施設などの設計にも携わってきた人。
ご自身もビジュアル・シンカーで、かつASDの当事者でもある。
本書は、多くの研究を引用しながら書かれているが、当事者研究の様相を帯びる。
特に物体資格志向の人の考え方がどのようかというのを、言葉で伝えようとしているのが私は貴重だと思う。
さて、本書の問題意識は、アメリカのものづくりの衰退にある。
産業構造の変化で、製造の拠点は今やすべて海外に移ってしまった。
そのため、アメリカ国内では、ものづくりや修理のスキルを持った人もどんどん減っていて、新たに育てられることもない。
その結果、アメリカ全国で保守点検ができなくなっている。
特にインフラの老朽化については深刻だ。
2022年に起きたカリフォルニアの大規模な山火事も、本書によれば、電力会社の送電線の保守不全が原因だったとのこと。
ん?
これはアメリカのこと?
日本でも、現在進行形で同じことが起きているのでは?
さて、本書のテーマの視覚思考のこと。
言語思考と視覚思考があり、さらに後者は「物体視覚思考」と「空間視覚志向」がある。
これらは脳の特性であり、スペクトラム状なのだそうだ。
だから、複数のタイプの混成型というのもありうるらしい。
物体視覚志向とは、世界を写真のように見る人のこと。
画家、デザイナーの他、建築家、発明家、商売人などに多いという。
一方、空間視覚志向とは、世界をパターン化したり、コード化したりして、抽象化する力が強い人。
数学者、プログラマーなどがこれに該当する。
筆者は物体視覚思考者で、ある機構がどのようにはたらくか、どう壊れるかが、映像を見るようにわかるという。
もっとも、それは、これまでにいろいろな物を手にし、設計図などの資料と粘り強く結びつけるなどの学習あってのこと。
そして、これまでに学んできたものが頭の中に蓄積し、役立てられるようになっていくのだそうだ。
いかに物体視覚思考の特性があっても、何もしないでこのような考え方ができるわけではない。
そこでやはり重要になるのは教育。
学校や現代社会では、言語と抽象思考に価値が置かれ、本書でいう物体視覚思考者は、早い段階で落ちこぼれてしまうことが多い、という。
筆者は自分の経験から、このタイプの人には、社会見学や、実物をふれ、手を動かしながら学ぶ、実践的な教育が望ましいと述べている。
この辺りは、日本も同じだろうと思われ、アメリカの状況を述べているとはとても思えない話だった。
また、異なる思考タイプの人が協力することで、良い成果が上がるとも言っている。
その例として、GoogleChromeのユーザー・インターフェイスの話があった。
プログラマは空間思考タイプの人が多く、美しいコードやプログラミングを書くことに情熱を注ぐことがある。
しかし、それだけではいいアプリにはならない。
白い画面に検索窓がひとつだけあるGoogleの画面は、使う人がそこに入力すればよいことを、一目で伝えている。
これは、ユーザーがどう行動するかを目に見えるように想定できる物体視覚思考者がいたためだ、と筆者は考えている(実際にいたかどうかはわからない)。
物体視覚というのは、物理的な物だけに働くものではないのか、と驚く。
と同時に、それなら某MS社には、きっと物体視覚思考者が少ないのかも、なんて思ったりする。
(なぜTeamsはあんなにめんどくさいんだろう?)
IT関連では、サイバー攻撃への備えについても提言していた。
コンピュータで完結するシステムを作らないことの重要性は、技術音痴の自分にもよくわかった。
例えば、水道に化学物質を加えるシステムをコンピュータに制御させるにも、バルブそのものの口径を小さくしておけば、万が一ハッカーに乗っ取られても、被害を小さくすることができる。
致命的な障害につながりかねない部分は、旧来型の、物理的に動かさないといけない制御方法を残すということだ。
すべてがブラックボックスに入っている現代社会のもろさを考えさせられる。 -
まったくイメージが浮かんで、そのイメージが立体的で動いている・ズームアップしてさらにそこがまた立体的に動いている、というとらえ方のできるもの(たとえばエンジンとか)と、たとえば法律のように文章で、その理屈みたいなところを追い込んでいくものと、ありますよね。なんか考え方というよりは得意な対象が違うんじゃないか、という気もしたり。ただ、確かに前者が得意な人は評価されにくい、という面はあるように思う。特に日本は目に見えないものが評価されない(テストでいい点を取るとか、受け答えがはっきりしているとかが評価され、ものをすぐ直すことができるとか改良できるというようなことが評価されない)傾向がとてもあると感じる。それを変える一石となるといいと思う。
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『#ビジュアル・シンカーの脳: 「絵」で考える人々の世界』
ほぼ日書評 Day714
タイトル、どうせなら(本文中でも用いられている)「視覚思考者の脳…」として欲しかった。が、原題が"Visual Thinking"であることを考慮すると、よくやった方か?(そのまま、ビジュアル・シンキングだと、クリシンとかデザシンみたいなコンサル本に誤解される危険大)。
とまれ、ひじょうに面白い!!
副題にあるように"「絵」で考える人"が、言語で考える人と、(比喩ではなく)文字通り、どのように「考え方が違うのか?」を、一冊を通じて徹底的に解き明かそうと試みる。
この視覚思考者にも2種類あるそうだ。
物体視覚思考者、手で考える技術屋。略図を描く必要もなく、全て頭の中で考えただけで、どんなものでも組み立ててしまう。
一方、空間視覚思考者は、抽象的に考えるエンジニアタイプ。
前者は、日本語で言うところの「職人気質」な人達だろう。実際、著者も"物体視覚思考の世界での成功者は、一風変わった、現代であれば何らかの「精神医学書に出ている診断名」が付くような人が多い"と指摘する。
ところが、現代の米国では(だけではないかもしれないが)、この物体視覚思考者がきわめて軽んじられているという。
「物体視覚思考者なら、ずさんな仕事が目に飛び込んでくる。言語思考者にとっての誤字脱字と文法間違いだらけの文章のようなもので、意味が通らず、修正すべきものとして映る…ことで、想定される危険を未然に防ぐことも可能になる」にもかかわらず、そうした扱いを受けることで、担い手が減り、結果、米国の社会インフラの劣化が著しく進んでいる。
デジタルツイン等の試みも進んではいるが、まだまだ、そうした「職人技」を絶やしてはいけないはずである。
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この本では視覚思考者(ビジュアル・シンカー)と言語思考者を対比させているが、個人的にはもっと色々な分類がある気がする。
聴覚思考者、臭覚思考者、触覚思考者、味覚思考者、という具合に。
当然、私は触覚思考者。 -
言語ではなく画像で物事を思考する視覚思考者(ビジュアルシンカー)の脳の仕組みや特徴について論じた本。言語思考と視覚思考の間のスペクトラムという尺度を提示することで、多様性とは何か?社会とはどうあるべきか?を考えるヒントを与えてくれる。