中国という難問 (生活人新書 274)

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  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140882740

作品紹介・あらすじ

経済格差、環境破壊、不正腐敗…、様々な問題を抱えながらも、中国は走り続ける。日本人にはなかなか実感できない、その大きさ、広さ、深さ、多さ。長年にわたる中国通いでの体験から、「中国」という不思議な存在の核心へと迫り、日本人の中国観、隣国との付き合い方に再考を促す。

感想・レビュー・書評

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  • 中国という国の持つ本質をしっかり掴み、我々読者にわかりやすく提示してくれている。一部の人からは親中派のようにもみえるだろうが、中国の持つ原動力をつぶさに解説した内容からは、現実的な分析になっていると言えるだろう。

    バイアスを外して中国をみたいひと、本質を掴みたい人に是非オススメ。もっと評価されてよい本だと思う。

  • 世に跋扈する「中国崩壊論」や「中国脅威論」。なるほど本屋へ行けば、必ずさういふ内容の書物が海外事情コーナーを賑せてゐます。しかし本当に中国は崩壊の危機にあり、脅威なのか。
    さういふ論調に違和感を覚えた著者が、自らの体験から独自の中国論を展開します。

    著者は本書のキーワードとして、中国は「大きい」「広い」「深い」「多い」といふ言葉を多用します。それぞれ「とてつもなく」といふ副詞が付くやうです。
    歴史的に見て中国は統一と分裂を繰り返し、その度にこれらの4つのキーワードは更に進化してきたといへます。
    これらの基本的な認識無しに中国を語らうとしても、それは皮相的なものにとどまり、あくまでも我々日本人の視点からしか見えない。逆に言へば、この中国の「大きさ」「広さ」「深さ」「多さ」に気付いてゐるならば、さう簡単に隣の大国が崩壊する、などとは発言できないだらう...といふことだと思ひます。
    ここで慌てて付け加へますと、著者は決して中国礼賛をしてゐる訳ではありません。むしろ問題が多過ぎると再三述べてゐます。よく共産党の言ひ訳に使はれる「中国の特色ある社会主義」といふ言葉も「詭弁」と切り捨て、「困難な時代を迎える現代にふさわしい哲学的思考を生み出さざるを得ない」と求めてゐます。
    さういへば私も中国人の友人が結構ゐますが、中国が抱へる問題を指摘したりすると、大方「中国は日本と違ふのだ!」と誤魔化します。まあ私もそれ以上追及しませんが。

    そして石川好氏は、今後の国際社会における日本の行動についても言及いたします。中国をはじめとするアジア諸国への「謝罪」問題については異論もあるでせうが、傾聴すべき部分が多い。とにかく我々は人任せにしすぎますね。私もすぐ人に頼るのですが。

    本書は「現代中国入門」の面も持合せてゐるので、特に今まで関心がなかつたり、特別知識がなくても理解出来ます。中国が好きな人にも嫌ひな人にもお薦めするものでございます。

    中国の友人談「人口13億? そんなことはない。あと2億や3億はどこかにゐるよ。戸籍なんか信用できないからね。ははは...」

    http://genjigawakusin.blog10.fc2.com/blog-entry-75.html

  • 中国という難問への確かなる取り組み《赤松正雄の読書録ブログ》

     先日NHKのラジオ深夜便を聴いていると懐かしい声が聞こえてきた。作家の石川好さんが中国の南京などで日本人の戦争被害をアニメや漫画で紹介する試みをしてきたことを話していた。彼が日中友好21世紀委員会の一員として、ユニークな活動を展開してきていることをかねて知ってはいたが、なかなか聞き応えのある中味で強いインパクトを受けた。

     新聞記者時代に取材していらい交遊関係が続く仲でもあり、彼が専門としてきたアメリカについての著作はほぼ読んできた。最近は「中国」にスタンスを移されており、二年前の著作『中国という難問』は未読だった。一読、非常に新鮮な印象を持った。前回の石平VS加瀬英明の対談をあげるまでもなく、世に「嫌中論」や「中国崩壊論」的な論考は多い。それを十分に意識した上で、単なる日中友好の書ではなく、「大きく」「広く」「深く」「多い」国としての中国をあるがままに捉えようという試みは新鮮味があり、読み応えがあった。ありきたりの「友好論」ではなく、ためにする「反中論」でもない。等身大のかの国を真摯に掴もうとしているアプローチの仕方は中国に関心をもつ者にとって参考になる。

     56もの民族を抱える他民族国家中国。その憲法に少数民族の処遇が掲げられていることを“絵に描いた餅”だとはいうまい。我が日本国憲法にも類似した規定は少なくないのだから。日中間に真の和解を実現するために、二つの謝罪「日本国家から国民へ」と「日本からアジアへ」が必要であるとか、10年以上も前からの持論である「非西洋社会を代表しての弾薬を込めた謝罪」論(したたかな計算による戦略的な謝罪の仕方)を提案するなどいかにもこの人らしいアイデアである。

     「崩壊分裂ではなく大統一に向かっている」中国との付き合い方を日本は考えよという。政権交代を超えて、日本政府の中国問題のブレーンであり続ける石川さん―現代中国の現場をもっとも知っている人の提案だけに大いに傾聴に値する。

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著者プロフィール

1947 年東京都大島町生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。
89 年『ストロベリー・ロード』で第20回大宅壮一ノンフィクション賞。
新日中友好21世紀委員会委員、
秋田公立美術工芸短期大学学長などを歴任。
主な著書に『60 年代って何?』(岩波書店)、
『中国という難問 生活人新書』(日本放送出版協会)、
『漫画家たちの「8・15」 中国で日本人の戦争体験を語る』
(潮出版社)ほか多数。

「2015年 『漫画家たちのマンガ外交』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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