現代哲学の論点: 人新世・シンギュラリティ・非人間の倫理 (NHK出版新書 667)

著者 :
  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140886670

作品紹介・あらすじ

哲学の常識は、今いかに変化しているのか?

「人間」を中心とした近代哲学の前提が今、揺らいでいる。パンデミックやテクノロジーの進化など、社会状況の変化によって、哲学には今どのような「問い」が生まれているのか?ネット時代の民主主義のあり方から、IT化と公私の変化、人新世とエコロジー、シンギュラリティとトランスヒューマニズム、動物・AIなどの「非人間」の倫理まで。哲学の最前線で起きている地殻変動を、8つの具体的な論点として提示し解説する!

《目次》
第一章 ネット時代に民主主義は可能か
第二章 人はなぜルールに従うのか
第三章 「公/私」の境界はいかに変化しているのか
第四章 「ポスト・ヒューマニズム」は何を意味するのか
第五章 動物・AIの権利はなぜ問題になるのか
第六章 哲学はエコロジーをどう捉えるか
第七章 人間を超えた世界の「科学」とは何か
第八章 コロナ時代の「自由」とは何か

感想・レビュー・書評

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  • 仲正先生の前作(現代哲学の最前線)がかなり自分のツボを押さえてくれていたのでこちらも手を出してみた。
    結論、前作の方が痒い所まで手が届いていた(内容の深さも網羅性も)ので、期待値は超えなかった。
    ただひとまず専門用語と文献、概要さえ教えてもらえれば自分で勉強できるので、手引書としてこのようにまとめてくれるのはありがたい。
    リベラルな優生学から自己進化、果てはトランスヒューマニズムに繋がる過程がかなり面白そうだったので、これらを2024年の学習テーマにしたいと思う。

  • 考え方をアップデートしなければいけない、
    「今の時代に沿った」価値観を身につけなければ、と紋切型の様な決め台詞が流通している。昭和的価値観を頭からバカにしたようなアレ。もしくは、その裏返しの「過去は良かった。失われた〇〇」的な懐古趣味。歴史の進歩史観や外国の動向に外的な正当性の拠り所をもとめる、つまりは宗教と同じ。
    本書も現代的な論点を取り上げて、どう言う議論がなされているかを概論的に俯瞰した上で、筆者なりの感想を添えている構成。どう言う論者がどう言う考え方をしているのかを概観するにはいい本。
    ただ、筆者が特にそれらに優劣をつけたり、批判を展開したり独自の議論を発展させてるわけではなく、感想めいた思索ノートみたいな感じ。
    ゼミでの議論みたいな感じ。
    正義を功利主義的に考えるか、権利論として考えるかや、動物の人格、権利、人新世での実在論など、本書で取り扱われている論点に通底するものは、従来の人間の観念や価値観の相対化なきがした。
    かつて「オリエンタリズム」に代表される西洋批判が人類になった様な感じ。非西洋に位置するのが動物やAIやモノたちってことになのかなも。
    個人的にはやっぱ科学論を扱った7章が面白かった。

  • わかりやすい

  • ”最新の話題”と「哲学」を結び付ける事には慎重であるべきとしつつも、両者が生産的に絡み合っているテーマを8個抽出して論じたもの。まえがきにもあるように、8つのテーマはいずれも、認識や行為の「主体」としての「人間」に関する近代哲学の常識が揺らぎ、新しい思考の軸を求める動きとしているが、章によって概説だけだったり著者の主張や関心が強く出ていたりと少々バラつきがある。
    当然のことながら「近代哲学の常識が揺らぎ、新しい思考の軸を求める動き」の背景には科学の進展がある。よって、全体的には科学哲学や生命倫理・環境倫理がテーマとなっているものの、著者の専門が政治・社会哲学にあるせいかその方向に引き付けた論考がなされているのが特徴的で、トランスサイエンス(+アルファ)的な興味深い議論が展開されている(特に、自由主義と民主主義を両立させるための理論的枠組みを求め、討議を経ての合意・熟議を重視したというハーバーマスとロールズの共通性については今後考察してみたい)。著者の本をそんなに読んでいるわけではないが「こういう話もできるんだ」という意外感も少々ある。
    学問が「科学化」する流れの中で、今後の人文・社会系の学問が果たすべき役割は、科学とは何かを問いつつ、科学が「人間」に与える影響を考慮し、その結果政治や社会がどのように変化していくのかを見極めていくことが重要になってくると言えるのではないだろうか。

  • 104A/N35g//K:東2法経図・6F開架

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著者プロフィール

哲学者、金沢大学法学類教授。
1963年、広島県呉市に生まれる。東京大学大学院総合文化研究科地域文化専攻研究博士課程修了(学術博士)。専門は、法哲学、政治思想史、ドイツ文学。難解な哲学害を分かりやすく読み解くことに定評がある。
著書に、『危機の詩学─へルダリン、存在と言語』(作品社)、『歴史と正義』(御 茶の水書房)、『今こそア ーレントを読み直す』(講談社現代新書)、『集中講義! 日本の現代思想』(N‌H‌K出版)、『ヘーゲルを越えるヘーゲル』(講談社現代新書)など多数。
訳書に、ハンナ・アーレント『完訳 カント政治哲学講義録』(明月堂書店)など多数。

「2021年 『哲学JAM[白版]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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