ル・ボン『群衆心理』 2021年9月 (NHK100分de名著)

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  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (97ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784142231294

作品紹介・あらすじ

善良な個人が狂暴化するとき

人びとが無個性化した「群衆」と化す過程を辿り、その特性や功罪を考察した社会心理学の名著。なぜ群衆は合理性のない極論を受け入れるのか? 指導者やメディアはいかに群衆心理を煽動するのか? 気鋭のライターが政治のあり方からネット炎上までを俎上にあげ、現代にはびこる群衆心理の問題をあぶり出す。

感想・レビュー・書評

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  • かなり偏りのある解説書。
    抽象的思考を記した書を都合よく切り取り、自身の思想の盾に利用しているようだった。
    また、原文からの論理では考えられないような思考の飛躍が各所に見られる。

    例)コミュニケーション能力は重要かというアンケートの問いに対する回答は、「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」が全体の9割を超えるそうだ。
    著者はこの結果一つを捉えて「自分の意見と他人の意見が同じかどうかを過剰に意識する社会」であると断定している。

    まさに著者自身が何かの思想を「断言、反復」によって「感染」させようとしているかのようだった。

  • 【1回目】群衆へと堕してしまう危険性と、高邁さを持つ可能性のどちらとも持っているのが人間であり、片方のみを強調するのは、フェアでないし、賢いとも言えない。この本は、そのうちの、愚かさへと堕してしまう危険性を強く訴えていて、善性を発揮しなければならないとして済ませようとしているかと思っていたが、そうではなかったのがよかった。わかりやすさに身を委ねないことが、抗う拠点になるのではないかという意見を尊重したい。

    【21/09/30】noteを書きましたので、URLを貼付します。

    https://note.com/bookforest2022/n/n105e7dc10a1e

  • 『群衆心理』では、(心理的)群衆を「特定の心理作用を起こした人々」のことを指すようです。「特定の心理作用」とは、「意識的個性の消滅」、「感情や観念の同一方向への転換」のことをいい、まとめると、「(心理的)群衆」=「同じ考えの人たち(少数でも、多数でもok)が自己の個性を殺して、共通の目標を持って流れることをいう」と考えているようです。
    このような群衆がなぜ発生するのか?を、フランス革命を参考に考察しています。

    群衆が形成される要件として、「断言・反復・感染」の3つを示しています。
    これは、SNSが世論を形成する現代において、世論を自己分析する上で非常に参考になると思います。

    『群衆心理』は、「あのヒトラーが読んだ!」などと喧伝されることが多いのですが、ヒトラーだけでなく、国民の世論形成の土台づくりの教科書として現代の色々な政治家が読んでいると思います笑。(ヒトラーのように悪用している可能性も...?)
    そのため、世論を政治家の手で操作され、僕らも知らずにその操作された世論を支持する群衆の中に入っているかもしれないと思った方がいいと感じました。

    以上のように、ル・ボンの群衆に対する評価が酷いのですが、群衆を形成することが必ずしも悪いわけではないとも言っています。
    群衆はいい方向へのエネルギーを持てば、その群衆は良いものだと評価しており、群衆が絶対悪というわけではないようです。しかし、ほとんどは暴徒化すると考えられるので、群衆=悪というイメージがル・ボンの中ではあるのかなと感じました。

    ル・ボンは「単純化」されたものが大衆を操作するといった主張もし、“あるもの”を抽象化・単純化し、わかりやすく伝えるものに危機感を感じると主張します。その点、本書にも記述がありましたが、本書のような要約本であったり、お昼のワイドショーなんかは、自分で“あるもの”について深く考察せずに、知った気になってしまう危機感を僕らも持つべきだと改めて感じました。

    また、本書では度々政権批判のような記述が多くあり、そこら辺も一歩引いて、中立的な立場から書いて欲しかったと思います。
    筆者の考えもわからなくはないけれど、筆者自身が反政権・反自民(の群衆に入って批判している時点で滑稽だが)立場で例示がされている点など、ル・ボンの『群衆心理』の要約がわかりやすかった分、余計な点が目立った本だと思います。

  • 20210916読了 ある意味ショートカットのために読んだが、講談社学術文庫の方も読まねばなるまい。

  • 1年間積んでたましたが、やっと読みました。
    武田砂鉄はやはり最高です。コロナ禍の大SNS時代の我々現代人に刺さる痛烈かつ的確な至言の数々にきっと唸らされることと思います。
    『わかりやすさの罪』と併せて、非常に強くおすすめします。

  • 原著の予習として。『100分de名著』で紹介されたことにより原著の存在を知り、このテキストや番組での武田砂鉄さんの解説を見聞きしながら、SNSやその他ぼんやりと疑問に思っていたことに対して言葉が当てられていき、原著への興味がすごく湧いた。
    原著は1895年の刊行で、手元の日本語訳版も第一刷が1993年である。このテキストを読む意義は、現代社会の構造や出来事に合わせた例えや指摘があることだと思った。

  • 冒頭の数ページを読んで終了。
    エピローグで、語り手のレベルを感じ取ったため。
    原著も読んだが、名著と言われるほど現代にも通用するとは思えない。悪い意味で古い本。群衆心理については、現代の最新の研究においてすでにアップデートされているように感じる。
    すなわち、他の本などから知り得る知見のほうがはるかに優位性を感じた。

  • NHK
    20230907 本書読了

  • なるほど。このシリーズは手軽でよいシリーズよね。

  • 「群衆心理」本編を読みたくなりました! これを読んでいる最中、授業中に黙ることができない1人の子どもによって、学級が崩壊していく様子を耳にしたのですが、「群衆心理に近いなぁ」と思ったりしました。個は消えやすく、自分も簡単に群衆の一部になる危険性を抱えていることを、胸に刻みます。

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著者プロフィール

1982年、東京都生まれ。出版社勤務を経て、2014年よりライターに。近年ではラジオパーソナリティーも務める。
『紋切型社会――言葉で固まる現代社会を解きほぐす』(朝日出版社)で第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞などを受賞。他の著書に『日本の気配』(晶文社、のちにちくま文庫)、『マチズモを削り取れ』(集英社)などがある。

「2022年 『べつに怒ってない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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