考える教室 大人のための哲学入門 (NHK出版 学びのきほん)

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  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (112ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784144072413

作品紹介・あらすじ

あの哲学者たちが遺した言葉を読み解く秘義とは。「対話する」「考える」「働く」「信じる」という身近なテーマから、あなたの中にある「私の哲学」を見つけていく。人生にとって一番重要な「問い」とは何か。いま最も注目される批評家が贈る、生きるために本当に必要な哲学の教室。

感想・レビュー・書評

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  • 若松英輔さんの本の二冊目。
    「本を読めなくなった人のための読書論」が大変心に響く一冊だったので、探し求めて読んでみた。
    東京・荻窪にある書店で、10代・20代の20名の人たちと4回に渡り開かれた講座の書籍化。
    こちらもまた4章に分かれている。
    書名の後のポイントは私の抜粋で、本書ではもっとたくさんある。

    第1章 「対話することについて」
       プラトン「ソクラテスの弁明」
       生きるとは何か、学びは畏れから始まる、魂とは何か。。。
    第2章 「考えることについて」 
       ルネ・デカルト「方法序説」
       肌で感じる読書、考えるとは何か、良識とは何か、真の学びを生きる。。。
    第3章 「働くことについて」
       ハンナ・アレント「人間の条件」
       哲学は身近にある、人間の条件を再検討する、生きがいと出会う。。。
    第4賞「信じることについて」
       吉本隆明「共同幻想論」
       幻想とは何か、手応えにふれる、哲学する態度。。

    机にかじりついていたわけではなく、行動をおこして世間と深く交わりあいながら、時には批判を受けながらも人生を生きぬいた哲学者・思想家を選んでいる。
    ただ、この本はそれぞれの紹介だけでは終わらない。
    自分ならどう読むか、この本との対話で、自分にとって最も重要な問いは何かを、見つけるために読むことになる。
    学校の授業では教師がどう理解したかを教えられることが多いが、ここでは登場する哲学と向き合い、自分の考えを深めていくことが求められている。
    そんなわけで、薄いぺージ数ながら何度も繰り返し読んだ。
    行きつ戻りつしながら、その都度自分に問いかけながら。
    そしてその時間の、なんと幸せなことだろう。

    哲学書を難解だと思う人は多い。
    それは、解説する人の文章が難解なだけで、分かり易く丁寧に解説されれば、しごく頭に入りやすいものになる。
    決して記述そのものが難しいわけではない。
    それを難しく読んだのちの人たちが、ハードルを上げてしまったのだ。
    この本のように、日ごろ使う言葉で語りかけるように書かれると、まるで違うものになる。

    すでに哲学に慣れ親しんだ人にとっては、あまりに初心者向けかもしれない。
    でも、もしも、「理解したかった本」「いつか読んでみたかった本」が上記の中にあるのなら、ぜひとも読まれることをおすすめする。
    「時間がかかるものほど早く始めた方が良い」と、著者も言われる。
    「そして、ゆっくりゆっくり続けていくことだ」と。
    「途中で終わってしまっても構わない。
     それでもやらないよりはずっと良い。
     考えることには終わりがないのだから。
     哲学には答えなどない。
     だからこそ、早く出発して自分の人生を深めた方が良い」

    「おわりに」の中で、読後ネットに書きこむだけでなくノートにも心に響いたコトバを書き写すことをすすめている。
    すでに実行してることだったが、更に綿密に記録していこうと思う。
    読書ノートを読み返すことで「叡智の部屋」がいつか私の中にも出来上がることを願って。

    • 地球っこさん
      nejidonさん、おはようございます。
      ノートに心に響いたコトバを書き写す、やってみたいと思います。
      「叡知の部屋」が自分の中にでき上...
      nejidonさん、おはようございます。
      ノートに心に響いたコトバを書き写す、やってみたいと思います。
      「叡知の部屋」が自分の中にでき上がっていくって、素敵だなぁと思いました。
      2019/11/15
    • nejidonさん
      地球っこさん、こんにちは(^^♪
      コメントありがとうございます。
      こんな拙いレビューに共感してくださって、恥ずかしいやら嬉しいやらです(...
      地球っこさん、こんにちは(^^♪
      コメントありがとうございます。
      こんな拙いレビューに共感してくださって、恥ずかしいやら嬉しいやらです(;´・ω・)
      「読書ノート」は、毎晩3行ノートを記録した後に読み返しています。
      誰に見せるわけでもない「心の旅ノート」です。
      心に響いたコトバを書き写すと共に、一行でも良いのでその時自分の感じたことを書き添えておきます。
      自分のためだけに書き残す作業。
      今はそれが大事な時間になっています。
      「叡智の部屋」は傷みっぱなしですが、完成目指して一生涯かかりそうです・笑
      2019/11/15
    • 地球っこさん
      nejidonさん、こんばんは。
      お返事ありがとうございます。
      日記はいつも3日ボウズになるのですが、読書ノートは、お気に入りのノートと...
      nejidonさん、こんばんは。
      お返事ありがとうございます。
      日記はいつも3日ボウズになるのですが、読書ノートは、お気に入りのノートとペンを見つけてやってみますね。
      10代の頃に、お気に入りの歌詞や詩をノートに綴っていたことを思い出しました。
      そのノート、青春時代の恥ずかしい思い出とともに当然処分してしまったのですが、そうですね、ノートに書いているときの時間、とても大切な時間だったことだけは覚えています。
      自分のためだけのノート。
      今度はずっと残しておこうと思います。
      2019/11/15
  • 私なんかに想像もつかないほどたくさん勉強した人なら、答えをくれるだろうと。
    偉い人たちの知恵をお借りして、少し賢くなろうと。
    さぁ教えてよどんなふうに生きればいい?と開いてみたら。

    自分で考えなさい、と記してあった。
    それしか私は読み取れなかった。

    人が20年かけて生み出したものはたった2、3時間では受け取れない。それなりに、やはり20年かけて自分で体験しないと得られない。
    自分に問うこと、考え続けることを勧める。

    答えは他人は用意してくれない。
    自分で生み出すしかない。


    この本に自分の欲しい答えは書いてなかった。
    じゃあ自分の欲しい答えって何だ?
    それは幸せとはこういうものだ、って生き方の提示。
    私が幸せに生きるためにはこういう考え方をすればいい、って言ってほしい。行動ではなくて考え方を示してほしいのは、動く気が無いから。

    どうしても今の私には70まで働き続ける人生を受け入れられない。アルバイトも含めると十以上の仕事に就いてきたけど、どれひとつ続けられると思わない。

    働かなくて良い、または働くことを受け入れられるように自分が変わる方法を探して今日も本を読む。

    私が望むようにするのに必要なことは読書ではないって答えも薄々感じつつ。

    "おわりに"より
    「星の王子さま」途中までしか読んだことないですが、ちゃんと全部読もうと思いました。

    • ご隠居さん
      初めまして。「アルバイトも含めると十以上の仕事に就いてきた」……という点では似たような人生を辿って来てしまいました。

      それぞれの人生は各々...
      初めまして。「アルバイトも含めると十以上の仕事に就いてきた」……という点では似たような人生を辿って来てしまいました。

      それぞれの人生は各々に異なっていて、それぞれの考え方に似ているところがあったとしても、歩んでいる人生は同じではありませんよね。でも、考え方に似ている人とは、共感しあえるところが少なからずあったりするものです。

      その共感しあえる人やシンパシーを感じる人に、「幸せに生きるためにはこういう考え方をすればいい」とか「こういうものだ、って生き方」を提示されたとしても、その考え方に従うことはできずに参考意見として受け取ることしか出来ないんじゃないでしょうか。

      私自身、やりがいを感じる仕事に出逢ったことが何度かありましたが、人間関係や職場環境に馴染めなかったりして転職を繰り返した過去がありす。人間関係や職場環境に馴染めなかった一因として、自身のパーソナリティーもあったと思うのです。

      現在は自営業・個人事業主として暮らしていますが、思い返せば「人間関係や職場環境に馴染む」方法もあったなと、客観的に捉えられるようになりました。

      生き方は人それぞれで、そこで培われてきた考え方や価値観も人それぞれです。ですが、人それぞれであるからこそ、語り合い対話し合うことに意味が生まれると考えるようになりました。

      語り合うことや対話し合うことは人対人だけでなく、書き手と読み手とのものでもあると思うのです。いろんな人の著作を手に取り、脳内で対話することで、気付きを得たりインスパイアされたりすることも❝セレンディピティ❞だと思っています。

      分かったようなコメントを書いていますが、今でも転がり続けております。
      2022/01/19
  • 「悩む」と「考える」のは、違う。そんなことは、分かっている。
    多くの人は、そう思っているだろう。
    私自身も、「悩む」と「考える」のは違うと思っている。
    違うと思っていても、悩むことを辞めるのは難しい。
    悩むのではなく、考えるへ切り替えるのも難しい。

    若松英輔さんの「考える教室 大人のための哲学入門」は、
    自分の考えを深めていくためのヒントが詰まっている。

    本書の中に、次の指摘がある。

    『人は誰も、迷っているとき、早急に答えを得たくなるものです。すると人は、その答えに多少の毒があっても、それを飲み込んでしまう。哲学の力をつけるには、喉が渇いたからといって毒を飲むのではなく、その渇きに耐えることを学ばなければなりません。
    心の渇きを真に癒すのは、世に流布する「甘い」言葉ではありません。
    自分の手で掘り出したコトバです』

    著名な学者や作家の言葉
    SNSなどで多くのフォロワーがいる人の言葉
    それらの言葉を見聞きして、腑に落ちたり、賛同したりすることがある。
    そのことが悪いわけではない。

    ただ、上記の指摘を読んだ後で、
    自分が答えだと思ったことや、腑に落ちたこと、共感したことについて、
    それらが、本当に自分自身のものなのか。疑ってみる必要がある気がした。

    「悩む」と「考える」のは違う、と言う時、
    「考える」ことは、目的がハッキリしていて、
    答えを出すというゴールに向かって、進んでいくことであるように思う。

    答えを出せない状態は、「悩んでいる」ように思い、
    答えを出せない状態が続くと、「考える」のではなく、「悩む」に陥ってしまいそうで、不安になる。
    しかし、答えを出せない状態は、「考えている」時にも存在することを忘れてはいけないだろう。

  • 【所感】
    「考える」「信じる」って何だろう…、本を読みながら自分の思考がぐるぐるになって、ページが進まない。そこで途中の一説にハッとする「他人が20年かけて考えた事は私たちも20年かけて考える必要がある。せめてその準備をしなくてはならない」。大切なのは「早くわかること」ではなく「長く考えること」の大切さを教えてくれました。

    【あらすじ】
    4つの章立てで、偉人たちの問いと解釈について著者の言葉で解説してくれる。ここで大切なのは偉人の問いに対する解釈は、一つの見方に過ぎずあくまで自分自身が問うことを求められる。

    第一章:「対話する」ことについてプラトン『ソクラテスの弁明』第二章:「考える」ことについてルネ・デカルト『方法序説』第三章:「働く」ことについてハンナ・アレント『人間の条件』第四章:「信じる」ことについて吉本隆明『共同幻想論』

    【心に残ったもの】
    ・無知の知を実践するにはとても勇気がいる。
    ・嫌いな人が大切なことを教えてくれることは少なくない。でもそれを認めるには勇気がいる。
    ・「眼光紙背に徹す」とは書物を読み、その中にある非言語なものを認識すること
    ・世界を変えることではなく自分を変えることを意識する。他人を変えようとするときそこには愚かな何かが潜んでいる。

  • 哲学って、硬いイメージが強い。20代までそれに触れることを無意識に避けてきたと思う。
    いろんな人と話をしたり、テレビや映画を見たり、音楽を聞いたり、本を読んだり・・・その中で感じたことや考えたことと、いわるゆ哲学はそんなにかけ離れたものではないと、30代になってようやく気づいた。
    初めて哲学に触れるとき、難解すぎる本では挫折してしまうだろう。だとするならば、この本はちょうどいい塩梅だ。この本から気になったキーワードや人物について、他の本にステップアップするように深めていったらいい。
    個人的には”考えること”と”働くこと”について深めていきたい。
    「旅とは、どこかに行く行為ではなく、ここに帰ってくるために出かけるための行為だ。」

  • 哲学ということで理解に難しい分野ではあるのだが、ソクラテスを始め各哲学者の言葉を若松さんがわかりやすく解説してくれて、哲学入門書としてよいと思いました。
    人は誰もが不完全です。ですから、自分が絶対に正しいと思うとき、その人は絶対的に誤っている。

  • 凡百の「哲学入門」とか「読んだ気になる」的な本よりも信頼感のある内容に感じた。
    その根拠は4冊の哲学史上の名著の肝を単に抜き出すのではなく、原典に触れてみたくなるように働きかけ、読者に思考してみるように、"対話"してみるように促す文章の誠実さがあるため。
    『方法序説』を、『共同幻想論』を、「読まねば」でなく「読んでみたい」となった。必読リストに加わった。

  • 普段、何気なく使ってる言葉や概念の本質を探る思索が面白い。個人的にはアレントの労働と仕事の話が好き。
    労働→ヒトの自然、生理的な営み(分娩、闘病も含む)
    仕事→人工的な営み、制作活動。(芸術や工作)
    この二つを包括するのが活動。

  • めんどくさがりの私でも読み切れる安心感のある「学びのきほん」シリーズ。哲学書って興味はあるけど敬遠してたので、飛びつきました。色んな本のしおりがいっぱい挟まってる感じで、カッコつけたいだけのおナカマにも本気の10代にもお薦め。

  • 哲学に興味があったから読んでみたんだけど、正直ちょっと難しい。
    でも哲学って楽しいなと純粋に思えた。

    思考すること、人と対話すること。
    それを諦めちゃいけないなと感じた。

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著者プロフィール

1968年新潟県生まれ。批評家、随筆家。 慶應義塾大学文学部仏文科卒業。2007年「越知保夫とその時代 求道の文学」にて第14回三田文学新人賞評論部門当選、2016年『叡知の詩学 小林秀雄と井筒俊彦』(慶應義塾大学出版会)にて第2回西脇順三郎学術賞受賞、2018年『詩集 見えない涙』(亜紀書房)にて第33回詩歌文学館賞詩部門受賞、『小林秀雄 美しい花』(文藝春秋)にて第16回角川財団学芸賞、2019年に第16回蓮如賞受賞。
近著に、『ひとりだと感じたときあなたは探していた言葉に出会う』(亜紀書房)、『霧の彼方 須賀敦子』(集英社)、『光であることば』(小学館)、『藍色の福音』(講談社)、『読み終わらない本』(KADOKAWA)など。

「2023年 『詩集 ことばのきせき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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