特捜部Q ―キジ殺し―― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1853) (ハヤカワ・ミステリ 1853)
- 早川書房 (2011年11月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (492ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150018535
作品紹介・あらすじ
「特捜部Q」-未解決の重大事件を専門に扱うコペンハーゲン警察の新部署である。見事に初の事件を解決したカール・マーク警部補と奇人アサドの珍コンビ。二人が次に挑むのは、二十年前に無残に殺害された十代の兄妹の事件だ。犯人はすでに収監されているが、彼一人の犯行のはずがない。事件の背後には政治経済を牛耳るあるエリートたちの影がちらつく。警察上層部や官僚の圧力にさらされながらも、カールは捜査の手を休めない-口うるさい新人も加入して勢いづく「特捜部Q」の大活躍を描く、シリーズ第二弾。
感想・レビュー・書評
-
耳慣れないデンマークの人名や、女子供にも容赦ない凄惨な事件に慣れてきて、前作より楽しんで読めた。
傲慢な富豪や、女性蔑視にフラストレーションが募り、わずかな救いがもたらされて事件は終焉する。
暴力や性への衝動には抗えぬものの、優しさや母性を残した複雑なキャラクターのキミーが魅力的だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
シリーズ第2弾。
400ページを超え、しかも二段書きと言うのもあって、またしても読み終えるまでに1週間近くかかってしまった。
前回の事件を解決したことにより、一躍有名になったカール。そんな彼の元には新しいアシスタント・ローセがやって来たり、外部から視察に来たり、大忙し。
ある日、特捜部Qの部署に置かれた謎の資料から20年前に殺害された兄妹の事件の再捜査に乗り出す。
すでに被疑者も逮捕され、収監されているが、該当する事件の他にも類似事件が多発しており、どう考えても、被疑者一人の犯罪ではないことは明らか。
しかし、そのバックにはデンマークの著名人が潜んでおり、カールは悉く捜査の邪魔をされる。
今作はカールやアサドの活躍より、犯人グループから抜け、身を隠し、復讐の機会を狙っている路上生活者・キミーと残った犯人グループ3人のやり取りに息を飲む。
最初はただの凶暴な男たらしの女性だったキミーだが、物語が進みに連れ、キミーの悲しみや苦しみが明らかになり、段々キミーに感情移入をしていってしまった。
前作もかなりグロいトリックだったが、今作も負けてはいない。なかなか日本作品にはないタイプなので、時間がかかるのは承知で、次の作品に突入! -
特捜部Qシリーズ2作目。
デンマークの警察ミステリです。
未解決の事件を扱う特捜部Q。
所属するのは、カール・マルク警部補と助手のアサドの二人だけ。
中東系のアサドは実は有能だが、警官ですらないので、時々とっぴな発想をする。
特捜部は、協調性に欠けるカールがある事件の後に、ていよく左遷された部署だったが、前作で手柄を上げた。
今回からローセという若い女性が加わる。警察学校では優秀な成績だったが運転免許が取れず、秘書として警察に入ったという変わり種。
新人なのに態度は横柄で、カールを悩ませるが、これもそれなりに有能とわかってきます。
さて、今回の事件は20年前のもの。十代の兄妹が殴り殺され、既に犯人は自首して服役中。
調べていくと、単独ではなく、寄宿学校にいた数人のグループが似たような暴力事件を重ねていた疑いが浮かび上がる。
もともと立派な家柄の子ばかりで、父親と教師を憎んでいた。
今は親の跡を継いだ身で、狩りをするために集まったりとセレブで退廃的な暮らしぶり。
社会的には成功して権力と繋がっているため、たちまち特捜部には捜査妨害の圧力がかかってくる。
ところがカールは反抗的な性格で、止められるとどうしてもやり遂げたくなるという。
寄宿舎の仲間で紅一点のキミーだけが行方知れず、実はホームレスになっていた。
キミーの存在感が強烈。
隠れ処を持ち、40歳ほどになっても個性と美しさは残っているのだが。
父親と義母に冷たくされ、寄宿学校で悪い同級生に出会い、悲惨な連鎖が起きた…
今はかっての仲間を憎んでいるキミー。
真相を追う特捜部と、復讐を恐れてキミーを探す男達。
哀しみを秘めたキミーを思わず応援したくなるのですが…
暗い部分も力強くスリリングに、テンポ良く描き上げています。
カールの同僚で入院したきりのハーディとのやりとりに、現実の重みも。
ハーディが撃たれた事件では、カールも心の傷を負っています。
美人カウンセラーにもまともに話をしようとしないカールでしたが、ほんの少し進展するかも?
特捜部の大忙しぶりは、コメディ的。何をやらかすかわからない3人組、どこへ行く?
次作も楽しみです。
著者は1950年、コペンハーゲン生まれ。
北欧、ドイツで絶大な人気を誇る作家です。
これは2008年の作品。次の作品で「ガラスの鍵」賞を受賞。 -
未解決の重大事件を扱う特捜部Qの今回のターゲットは20年前に殴り殺された10代の兄妹の事件。
すでに自首してきた犯人が服役しているが、そこに納得できないものを感じたカールは上層部の妨害をものともせず捜査を続けるが…。
2作目も非常に面白かった。
暴力的な事件とそれにまつわる悲惨なエピソードをQのメンバーのやり取りが巧く緩和してくれている。
テーマは重いのに、ページを捲るのが嫌にならない。
作者の力量なんだろうなあと思う。
前作もそうだったけれど、今作にも非常に魅力的な女性が登場している。
暴力に身を委ねた果てにわが身に降りかかった厄災を、なお暴力で購おうとするキミーはやるせなくも惹きつけられてしまう。
そして彼女の復讐が果たされることをいつしか願っている自分に気づく。
一片の救いがあるのも前作と同じではあるけれど、内容が内容だけにそれがまた胸に突き刺さる。
いいなあ。
ああ、早く3作目が読みたい。 -
図書館で。特捜部Q第二弾。
なんだか北欧って女性蔑視というかDV率が多いのかしら?とか思ってしまう。まあそれを言ったら女性や弱い人に暴力を振るうモノって世界中居るのか。げんなり。
キミーは結局悪い人なんだか良い人(ではないだろうけれども)なんだかわからなくなります。ある意味可哀想な人という言い方が一番しっくりくるのかも。
それにしても彼女を食い物にしていた男たちは許せない。許せないが…アレが正義かと言われるとそれもまた違うような…
という訳で有能で口うるさく人の話を聞かないローサが増えてさらにパワーアップか、特捜部。そしてカールは女の人を口説く前に奥さんときちんと別れた方が良いと思う。その辺りの倫理観のなさもミレニアムと似ているような気がしないでもないですが。続きも楽しみ。 -
特捜部Qシリーズ2作目。1作目より面白い。主人公カールと相棒アサドのやりとり、新キャラ・カールの秘書ローセの登場、そしてもちろんカールが追う事件・・・。久々にシリーズものにハマってしまいました。
-
前作「檻の中の女」が強烈だったぶん、2作目「キジ殺し」は些か期待とは違った感じだった。
20年前におきた事件の捜査を行うことになった、カール・マーク率いる特捜部Q。
これまた大変に病んだ事件。(北欧がこわくなる・・・)
この事件、実は犯人はすでに捕まって自白しているが、どうにも納得がいかない。
デンマーク経済界のエリートたちの影がちらついたり、女浮浪者キミーの過去とその行動も気になる。
そして特捜部Qには、助手のアサドに加えて、新たに赴任したローセ。
これまたひと癖もふた癖もありそうで・・・どうなることか
カール・マークは、仕事場・家庭と難問だらけなのに・・・ほんとよくやってます
しかし、ほんと、北欧ってこんなに病んでるのか??
こわい事件だった・・・
さぁ!第3部はどうなることか、楽しみ!! -
シリーズ2作目。新しいキャラも登場してますます好調。全体に陰惨なイメージに陥りがちなのを、軽妙な語り口が救ってます。アサドの過去とか、これから展開できそうな伏線もたっぷりです。