アイアン・ハウス (ハヤカワ・ミステリ 1855)

  • 早川書房
3.73
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感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (555ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150018559

作品紹介・あらすじ

凄腕の殺し屋マイケルは、ガールフレンドのエレナの妊娠を機に、組織を抜けようと誓った。育ての親であるボスの了承は得たが、その手下のギャングたちは足抜けする彼への殺意を隠さない。ボスの死期は近く、その影響力は消えつつあったのだ。エレナの周辺に刺客が迫り、さらには、かつて孤児院で共に育ち、その後生き別れとなっていた弟ジュリアンまでが敵のターゲットに!マイケルは技量の限りを尽くし、愛する者を守ろうと奮闘する-ミステリ界の新帝王がかつてないスケールで繰り広げる、緊迫のスリラー。

感想・レビュー・書評

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  • 凄腕の殺し屋マイケル。彼女が妊娠したことをきっかけに、組織を抜けることを決心した。組織のボスが死に、マイケルを抜けさせないように、組織はマイケルを追いかける。マイケルの彼女を拉致し、マイケルの弟にも被害を加えようとしていた。
    マイケルには孤児院で共に育った弟がいたのだ。弟は上院議員の家庭に養子として迎えられ、金に不自由なく暮らしていたが、心を病んでいた。
    話は単純ではなく、マイケルの過去であったり、弟が養子に行った先の母親との関係も興味深い。
    マイケルの強さ、彼女への愛、弟への愛情。単にドンパチな物語ではなく、ミステリーとしての面白さも十分だ。

  • 恋人の妊娠をきっかけに組織を抜けようとした主人公マイケルと、それを許さない組織の構成員。「抜ける」→「許さん」→「ほっとけ」→「恋人の命を狙う」というおきまりの構図の中で、どんぱちしながらの単純な追いかけっこかと思いきや、生き別れになっていた弟の命を脅迫材料に使われるところから、不可解な死体の発見と弟の心神喪失と共に暗い過去との対峙に。

    組織を「抜ける・許さん」の構図と、弟の窮地を救うという話を無理やり同時発生させて交錯させてしまっていて、不自然な印象を受けた。読み終わってみれば全体として収まっている(収めるために必要な設定だったという見方もできる)のだが、ちょっと分離した感が否めない。

    ただ、さすがハート、読ませる力はある。
    過去の過ちや、他のものと二者択一せざる得ない状況など、数々の複雑な葛藤がある中、それでも強く絶対的な家族の絆を描く業はお見事。

    本筋の感想とは関係ないが、マイケルが弟の書く暗すぎる物語を、「背景を真っ暗にするのは、そうしないとそこにある淡い光が伝えられないから。あれは希望の物語。」(正確な引用ではない)と評したところがぐっときた。

  • 『ラスト・チャイルド』のジョン・ハート

    あと味のいいラストで、面白く読み終えました。
    (骨折とか流血とか、中途はかなり「いててっ」と思いながら読みましたが)
    これまでの作品と同じように、主人公が求めてやまないのは『家族』。はじめから失われたものであり、いま失われようとしているものであり……だから、マイケルは闘うことになるわけですが。
    養母のアビゲイルにとっても、マイケルにとっても、要のはずのジュリアンが終始遠景にあるのがちょっと不満だったかな。
    大事件だったのに物証とかいろいろ、かなり有耶無耶に解決しちゃったみたいで、(検視とか鑑識とか、きちんとしてたらバレバレなんじゃねえ?)しっかりしろよ、捜査官。とも思いましたが、まあ、刑事が主人公じゃないんだから、いいことにしときます。
    一気読みするほどおもしろかったのでね。

    文脈から推測するだけですが、ふたつ三つ校正ミスがあったみたい。マイケルがジュリアンの弟になってるとことかは、直して欲しい。

  • 2017.4

  • 殺し屋が主人公というところ、家族がテーマではあるもののその主軸が兄弟と言うところが今までとは違う。相変わらず濃厚な文章で緻密に作品世界が構築されていて、組織から逃げる殺し屋と追撃する仲間、などという単純な図式ではなく、後半は連続殺人が絡むちょっとミステリータッチの展開も描かれていて盛りだくさん。そして男と女、母親と息子、娘、兄弟…等々切ない人間関係がじっくりと描かれるが読後感は意外と爽やか。
    ただ、中盤がだれるのが残念だし、あそこまで視点を変える必要があるのかな?

  • 「ラスト・チャイルド」と並んで好きな作品になりました!

    何しろ設定がイイ。
    孤児院で育った兄弟マイケルとジュリアン。
    気弱な弟ジュリアンはある裕福な夫婦に引き取られ、
    兄マイケルはマフィアに拾われ、やがて殺し屋となる。

    恋人と新しい家庭を築くために、組織を抜けようとするマイケルだけど、
    結局組織はそれを裏切りと見て、彼の命を狙おうとする。
    そして今は離れて暮らしている弟ジュリアンにも身の危険が……

    殺し屋なんて兄さん怖いっ!となりそうだけど、
    このマイケル兄さんがとにかく素敵~。
    弟を守るためならどんな事でもしちゃう、
    身体的にも精神的にもかなりタフな男なんです。

    兄弟の十数年ぶりの再会は、
    孤児院アイアン・ハウスの壮絶な過去を甦らせる結果に…

    最後の最後に驚くようなどんでん返しも用意されており、
    人がバンバン殺されているわりには読後感も悪くなく(笑)
    とても楽しめました。未来を予感させる最終章が好きです。

  • ジョン・ハート、あなたについていくと決めたのに…。
    これまでと同じ味わいの物語を求めるのは、読者の身勝手なのか。
    前作まで家族崩壊を静かな筆致で描いてきたが、今回は「女ができた、組織を抜ける」「…そんな甘いことが許されると思ってるのか」…の図式から大掛かりなドンパチが満載。まるで映画を観ているかのような。
    要するに、私がマフィアものが苦手なんです。☆2つはそれゆえ。ほかの方のレビューはわりと好意的ですものね。
    でも私は悲しかった…。

  • 主人公が置かれている状況にいきなり放り出される書き出しから、徐々に状況そのもの、そして背景が明らかになっていく展開は、読んでいてとてもスリリング。主人公の設定がややスーパーマン的で、状況が転がりだしたらすぐに決着が付いてしまうのがやや拍子抜けという感はぬぐえないが、わかりやすく面白いことは間違いない。主人公に追われる切迫感がもう少し見える形にしたら更にスリリングになったかもしれない。ご都合主義が目に付いてしまった分だけ星ひとつマイナス。

  • ジョン・ハートの本を2冊ほど読んで良かったのでこれを読んだが、最後への展開は良いとしても、長すぎないか?
    それと主人公の恋人は本当に必要なキャラか?話を長く持たせるためのキャラにしか見えない。ちょっと不満の残る出来。

  • 棄てられ、孤児院で育ったマイケル、ジュリアンの兄弟と、ジュリアンの養母となったアビゲイルの物語。
    そのほか、マイケルの恋人エレナ、アビゲイルのボディガード、ジェサップ。

    強くて冷静な主人公が活躍する。とてもおもしろい。どんどんと読んでいった。危うく一駅乗り過ごしそうになった。これは映画化してもおもしろいだろう。

    ジョン・ハートの本は他にも「川は静かに流れ」と「ラスト・チャイルド」があるとのことで、読んでみたくなった。

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著者プロフィール

1965年、ノース・カロライナ州生まれ。ミステリ界の「新帝王」と呼ばれる。2006年に北米最高のミステリ賞であるアメリカ探偵作家クラブ(エドガー)賞最優秀新人賞候補作『キングの死』で華々しくデビュー。その後、2007年発表の第二長篇『川は静かに流れ』で、同賞の最優秀長篇賞に輝いた。2009年の第三長篇『ラスト・チャイルド』は、エドガー賞最優秀長篇賞および英国推理作家協会(CWA)賞最優秀スリラー賞をダブル受賞。エドガー賞最優秀長篇賞を二年連続で受賞した唯一の作家となる
『終わりなき道 下 ハヤカワ・ミステリ文庫』より

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