10月1日では遅すぎる (ハヤカワ文庫 SF 194)

  • 早川書房
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (257ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150101947

感想・レビュー・書評

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  • 魅力的なタイトル。思わず口ずさみたくなるタイトルでもあります。

    本書では、はじまりから著者のストーリーテリングの高さを感じました。なにが起こっているのかよくわからないけれども、とにかく不可思議ななにかが忍び寄っている感じ。どことなくスリルを感じる辺りは、むしろホラー小説に近いような印象を抱きましたが、本書の中盤以降はしっかりとしたSF小説となっています。ここで題材とされるテーマは時間。突如として、地球上のあらゆるところで異なる時が流れ始めた世界。英国では1966年の時が流れる一方で、北米大陸では開拓以前、独仏では第一次世界大戦の時が流れる…そんな世界を、本書では、著名な物理科学者の友人である音楽家の視点から描かれます。

    が、正直、中盤以降のギリシャでの出来事は蛇足に感じましたし、序盤に起こったジョンの一時的な失踪や太陽からの意図的な照射と中盤以降の時間の断裂との関係性がよくわからず。なんとなく繋がっていることは解るのですが、曖昧になっているところが気になってしまいました。

  • 再読だが、内容は全然憶えていなかった。フレッド・ホイルは、サイモン・シンの「ビッグバン宇宙論」の中で、定常宇宙論の提唱者として紹介されていた。この本の「訳者あとがき」でも、「定常宇宙論の提唱者のひとりとして知られるイギリスの天文学者」と紹介されている。「読者諸兄へ」と題した前書きで、「本書における『科学』は、物語…のための、足場材料である。しかし、時間の重要性と意識の意味を論じた部分は、第十四章の内容とともに、きわめてまじめなつもりである。」とわざわざ断っているくらいだから、第7章で、登場人物の一人、物理学者ジョン・シンクレアが説明している時間と意識についての考えは、天文学者としての作者自身のものなのだろう。時間についての考えを要約すると、101ページでシンクレアが言っているように、時間は因果関係を作り出す絶え間ない流れではない、全ての時間は等しい現実性をもって存在している、ということになる。その後で、シンクレアは、書類整理用の仕切りを使った例え話を使って、意識についての考えを説明しているが、そこを読んで思い浮かんだのは、谷山流の「涼宮ハルヒの憂鬱」の中で、朝比奈みくるがした時間についての説明だった。肝心の物語はというと、最初の方に出てきた、太陽からの輻射に含まれる赤外線が変調されているという謎はどうなったのかとか、いくつか不満も残るが、読んでいる間は話の展開に引き込まれた。それにしても、この魅力的な題名が関係するのは、第10章の「九月三十日、私たちを乗せた船は、ポルトガルの沖を南への進みながら、障壁(バリアー)を通過した。翌日、十月一日では、遅すぎたかもしれない。」という一文だけのように見える。本当にそれだけなのだろうか。

  • 父が蔵書として持っていた一冊。その印象的なタイトルですぐにも記憶には刻まれたが、幼かった当時の私には実際に読むまでには至らなかった。ふと読みたくなったものの、今は亡き父の蔵書から探し出すのは困難とみて、オークションサイトで購入。本書との出会いから約20余年越しの実読となった。

    著者は、天文学者として著名なフレッド・ホイル。1966年のイギリス、1917年のヨーロッパ大陸、紀元前のギリシャ(...etc)、地上に様々な時代が同居した世界を描いたSF作品。これは、「時間とは、過去から未来へ絶え間なく流れるものではなく、同時・同等に存在する無数のシーンである。過去から未来への一方通行と捉えてしまうのは、観測者である人間の主観では高次元を観測できないためである。」という、著者の"時間"に関する理論をベースにしたものとなっている。

    上記理論・世界観設定のハードSF要素、古代人とのコンタクトを描くタイムトラベル・エンターテイメント要素が楽しめる作品。(後者のエピソードは、若干ながら本筋から離れてしまうため、蛇足感は否めないが。)また、真相はどことなくクラークの『幼年期の終わり』を想起させられる。

    総じて悪くない作品ではあったが、この印象的なタイトルの作中での回収の仕方がなぁ・・・「え?それだけ?」と、期待していただけに落胆が大きかった。

  • 地球上に複数の時代が混在しているというSF。

  • こぎれいにタイムマシン物をまとめている   
    表紙   6点浜田 康介(絵所有 名取達夫)
    展開   6点1966年著作
    文章   6点
    内容 630点
    合計 648点

  •  世界の各地で「時間のズレ」が生じ、欧州は第二次世界大戦中、北米はコロンブス前、東欧はよくわからん未来…といったような継ぎ接ぎマッピングされる世界が面白い。
    ただ、これだけ面白い世界なのに基本欧州の中だけで話が終わってしまうのが残念。
    恐竜の一つぐらい出しても罰は当たらないと思う。(全然違う話になるけどね)

  • 時間SF。スケールは大きい(人類の未来の行く末とか)が、タイムパラドックスを扱ったアクロバティックなストーリーを期待していたが...(手に入れるの苦労したんだけどな、この本)。

  •  豊中から取り寄せてくれた吹田図書館に感謝。

     さすが名作といわれるだけあって、アイデアは着地は斬新だ。科学者と音楽家という主人公の時代を中心に描くが、テーマとする時代は未来である。いやぁ、だまされた。すばらしい逆転発想だ。

     古い本だけに紙質は悪く、文字も小さいから読むのに苦労したが、その甲斐あった感じ。

     太陽からのメッセージや時代がつぎはぎだらけになった世界などの背景は、時の眼を凌ぐと思う。クラーク&バクスター裸足の名作だった。

  • タイムマシン等は出てこないものの、時間をテーマの一つにした作品。音楽家が主人公というのも希有。ラストは真逆ながら、『幼年期の終わり』を連想させる。

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