火星のタイム・スリップ (ハヤカワ文庫 SF 396)

  • 早川書房
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感想 : 23
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  • Amazon.co.jp ・本 (343ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150103965

感想・レビュー・書評

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  • ディック祭り4冊目。
    「火星」「タイムスリップ」とSFなガジェット二つを組み合わせたタイトルながら、どっちもあまり関係なく、非常にサイケデリックでディープな話。
    未来ってつまりは「物は壊れ、人は死ぬ」ということだよなー、
    それが見えたら虚無と絶望でしかない、というなんとも恐ろしくバッドトリップな話。
    これって、「アンドロイド・・・」でいうところのキップル理論と一緒?
    さらに、恐怖なのは、死なせてくれないこと・・・・。

    ただ、その絶望を克服するのは「愛」!
    ディックって素直に「愛」の力を信じているんじゃないかなー。

    ガブル!ガブル!

  • この作品がこのタイトルではもったいない!

    タイトルでは表しきれない深い何かが、人間の心のあり様というか、善悪と心の病と人間の背負い続ける業とでもいうか、そういうものがある。

    同じ時間の同じような場面が少しずつ違ってきたりするあたりが興味深かった。

    しかし、正直なところラストが突然すぎて驚いた。どうしてああなったのかが分からない。

    他のディック作品を読み、また時間をおいて再読したい。

    追記:
    くらくらするアタマでぼんやり考えていたらなんとなくあのラストが理解できた気がした。
    マンフレッドは救われたんだね。

  • これまで読んだディックの他作品に比べて、死と性の気配が色濃い作品だと感じた。
    様々な立場・考えを持った登場人物たちが登場し、彼らの人生が交錯していく様子を追いかける形で物語が展開する。途中途中で挿入される、精神病(とされている)の少年の見ている世界が、なんとも気味が悪く、文章だけでその恐ろしさが伝わってきて良かった。

  • 精神分裂病が引き起こす、時間感覚の崩壊。ディック作品おなじみ現実崩壊感の別バージョンな感じ。序盤では描写される火星開拓の行き詰まりがリアルに感じられて面白い。中盤は火星の住民たちと分裂病患者をとりまく人間ドラマが印象的。終盤でタイムスリップがキーとなって物語を飛躍させ、SFらしい驚きの感動を与えてくれる。ディックで一番好きという声が多いようで、確かに他の長編に比べて読みやすかったと思う。ギミックが難しくなく、人物の感情の流れもわかりやすいからだろうか。個人的に自閉症や神経症に縁があるので、そのあたりの著述も興味深かった。

  • 何でこのタイトルにしたんだろう?
    確かに火星だし、目的はタイムスリップなのだが、あくまでも副次的な要素でしかないように思う。

    まず第一に、全然火星らしくないw
    火星的な火星ではなく、完全にもう一つのアメリカ(西部開拓時代の)。
    地球からの移民だから当たり前と言えば当たり前かもしれないが、
    彼らの関心・心配事はごく普通の(地球上と何ら変わらない)ことばかり。
    原住民である火星人も、完全にネイティブアメリカンである。
    とにかく、SF小説的な火星では全く無い世界観が描かれている。

    そしてメインテーマは自閉症の子の内世界と他者の現実の混濁。
    現実の現実性を否定するディックの世界観はやはり秀逸である。

    クライマックスの捉え方を色々考えてみるのもまた一興だと思う。

  • 02年再版版。

    本作はPKDの長編では初期作品であるにもかかわらず、
    そのドープさ加減は手加減を知らない。

    至って面白みもないタイトルから安易に内容を予想するのは間違いで、
    やはり一筋縄ではいかないストーリー。現実世界を歪んでいき、
    最後のほうではやはり混沌に突入していきます。
    PKDの著作の中でも、ベストに挙げる人が少なくない名作。
     

    -ハヤカワオンライン「書籍詳細」より-

    火星植民地の大立者アーニイ・コットは、宇宙飛行の影響で生じた分裂病の少年をおのれの野心のために利用しようとした。その少年の時間に対する特殊能力を使って、過去を変えようというのだ。だがコットが試みたタイム・トリップには怖るべき陥穽が隠されていた……P・K・ディックが描く悪夢と現実の混沌世界

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