まだ人間じゃない (ハヤカワ文庫 SF テ 1-12 ディック傑作集 4)
- 早川書房 (1992年4月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150109691
作品紹介・あらすじ
12歳以下の子どもたちが"生後堕胎"の名のもとに殺戮される戦慄の未来を描いた問題作「まだ人間じゃない」、異星人による奇妙な侵略をうけた地球の物語「フヌールとの戦い」、広告戦争が極限まで達した騒々して未来社会を描いた「CM地獄」などの秀作中短篇8篇をおさめたほか、詳細な自作解説や、孤高の天才ディックが心情を赤裸々につづり、作品世界への鍵となる貴重なエッセイも併録した決定版ディック傑作集第四巻。
感想・レビュー・書評
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夏のディック祭。短編集で、こういうのはちょっと後においておきたかったなというのが読んでからの感想。
身長がたった2フィート(60cm)しかなく、地球での侵略時には、仲間がみんな同じ形になってしまう宇宙人「フヌール」。60cmだからすぐ見分けがつくと思っていたら、タバコを吸うことで背が伸び、更にアルコールを飲むことで6フィート(180cm)まで伸びてしまった。これで地球人に混じれば全く見分けがつかない…。
冒頭の「フヌールとの戦い」から、ちょっといつものディックと異なり、コメディーやブラックユーモアというたぐいの短編が多い。その中でも引っかかりそうなのが「干渉する者(Meddler)」であろう。タイムマシンを用いた話(深くは書かない)であるが、どう読んでも、映画「地球が静止する日」のキアヌ・リーブス版のアイデアの元である。
全体に、ショートショートっぽいというか、オチがブラックなものが多く、表題作(最近は改題されているようだ)を含め、ニヒルで冷たい印象の作品が多い。ただディック自身のあとがき解説にあるように、「批判が多かったので、オチを変えればよかったかな」ってのはどうなんだろう。変にいじらないこのままで良いと思う。
まあ、時代のものかもしれないが。 -
ディック傑作集〈4〉まだ人間じゃない (ハヤカワ文庫SF)
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暗い話が多く読むのがしんどい
表紙 6点野中 昇
展開 6点1980年著作
文章 7点
内容 650点
合計 669点 -
ディックは有名だ。SF小説好きなら誰でも知っている。
その世界観を好きな人も多い。
だけど、やっぱり外国の人だからかな?僕にはちょっとその皮肉だったり小話的なところとかが、わかりにくい。と思ってしまう。
むしろ、これを読んでいて、あれ?これって眉村卓じゃないの?と思うような世界観だったり展開だったりがとても多い。と感じた。
二人の作品はとても似ている。と思う。
みなさん、眉村卓をもっと再評価してみませんか? -
「フヌールとの戦い」
「最後の支配者」
「干渉する者」
「運のないゲーム」
「CM地獄」
「かけがえのない人造物」
「小さな町」
「まだ人間じゃない」
「フヌールとの戦い」
太陽系を征服しようとしている宇宙人フヌールとの戦いを描いた一遍。ただこのフヌールというのが、間抜けで(地球人から見たら)とぼけた存在となっている。様々な人間の姿になれるのだけど、なぜか身長2フィートで、「チビのセールスマン」だったりする。
各国の対応や、結末が皮肉。
「最後の支配者」
ディックのメモが面白い。「わたしがロボットを信用し、アンドロイドを信用しないのは、興味深い。たぶんそれはロボットがその正体を偽ろうとはしないからだろう」
「干渉する者」
時間ものとしてはよくあるタイプ。見所はどこだろう?
「運のないゲーム」
ある星の開拓村にやってきたサーカスたちに対して、他のサーカスに持っていかれた収穫物の恨みを果たそうと、やりかえす計画を立てた開拓民たち。
途中やってきた軍人の「考えるな」という言葉が痛い。彼らを取り巻く状況に閉塞感を感じた。
「CM地獄」
ファスラッドというロボットによる強制実演販売。「ファンはこの作品をくそみそにけなした」とあるが、個人的には可もなく不可もなく。
「小さな町」
タイトルの時点でオチを予測できるかもしれない。既視感はある。
「まだ人間じゃない」
12歳未満は魂を持たないとされ、親がきちんといてカードがなければ野良犬のように連れていかれ処分されてしまう社会。
作中の中絶に関する部分などでだいぶ論議を呼んだらしい。
現代の、出生前診断からの人工妊娠中絶ということに対してディックならどんなことを書いたのか?
あと、ディックによる作品メモが付されていて、それがなかなか面白い。(ただし、訳者によるとディックほど発言をまともに受け止めると馬鹿を見る作家は珍しいらしい) -
最近復刻版も出たみたいだけど、
20年くらい前に買って家にずっとあった初版を改めて読み返す。
割と初期の作品が多くて、
筋がシンプル、ディックらしいひねくれきったストーリーが無くて
良く言えば読みやすい。
まあ今となってはコレクションの中の一冊というところか。