順列都市 (上) (ハヤカワ文庫 SF イ 2-1)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150112899

感想・レビュー・書評

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  • 塵理論が理解できるかどうかでこの本の価値は変わる。

  • この本をきっかけとして、僕の思考はだんだんと変な方向へ逸れてゆくことになる。

  • 一度読んだけれどもう一度再読しようと心に誓っている。
    グレッグ・イーガンの作品は、
    初めて本格的にSFに挑戦しようと「ディアスポラ」を一番最初に読んで意識が飛びかかった思い出がある。
    この作品を読んでコンピュータ上に人格を移すというアイディアがやっとつながった。
    「ディアスポラ」を読む前に読みたかった。

  • 本作は1994年刊行。イーガンは現代電脳SFの最右翼とされている。
     「人格を電脳空間にダウンロードして不死を得」という設定は、先日読んだ同じ作者の 「ディアスポラ」1997と共通している。
     「ディアスポラ」は、宇宙の真実を解明するために旅するというようなテーマだったのに対して、「順列都市」は自分達専用の異次元空間を作り出して、宇宙の終りが来ようとも不死である。という物凄い話。
     出発点の世界は、電脳空間で「大富豪」は自分専用のプロセッサでのびのび暮らせるけれど、大多数の電脳人間は公共ネットワークの余った計算資源で細々と計算されている存在という世界。なにしろ生前の「投資の利息」で細々とCPU時間を買っているのだから、社会情勢のわずかな変化にも敏感にならざるを得ない生活。原理的には不死なのに。
     そこで、わずかなコストで現実世界がどうひっくり返ろうと無限に生きられる環境を提供しようと言う男「ダラム」が登場する。
     「ダラム」の提供する環境を「TVC宇宙」という。
     それはチューリングとフォンノイマンの弟子が開発した物理的に自己複製可能な「二次元チューリングマシン」装置をチャンという人物がN次元に拡張したというもの。このバージョンでは 「6次元万能チューリングマシン」が稼動する。
     最も基本的な「チューリングマシン」は、一本(1次元)の磁気テープ(データと命令を格納する) と読み書きヘッドを持った記憶装置を有したコンピュータのモデルで、無限に長いテープを使えば万能コンピュータが出来るという概念。
     現代のコンピュータは、ランダムアクセス可能なシリコンのメモリや、HDD、光ディスクを使うけれど、チューリングマシンの概念は生きている。
     チューリングマシンの論理的限界は、無限に長いテープには無限に長いアクセス時間がかかるということ。それがシリコンに置き換わって2次元や3次元になっても物理的なアクセス限界が存在することは避けられない。
     ところが、「N次元空間にコンピュータを組み立てる、Nはいくら大きくても良い」なんて言うと、高次元な空間にメモリとCPUを折りたたむように組み立てることで無限に複雑なコンピュータを無限に小さなN次元空間に組み立てる事が出来る。
     つまり、複雑さの限界を無視できる。
     コンピュータ・サイエンスに興味がある人には刺激的な設定だ。
     しかしここには、とてつもない論理の飛躍がある。
     N次元空間の実在について何も説明が無いし、「自己複製的コンピュータ」が有ると仮定しても、材料やエネルギーが無から生じるわけではないし、現実の 3次元宇宙が滅びた後も、N次元のコンピュータのシミュレートされた世界は永遠に生き延びる とか、そのへんの話は 100%ファンタジーである。少なくともSF世界を構築する為に必要なだけの説明が無い。
     ナノマシン好きのイーガン的には、N次元コンピュータを構成する「セル・コンピュータ」の一つ一つがナノマシン的に自己複製を繰り返して無限に増殖するイメージを書いているらしいが、やっぱり、イーガンのナノマシンは魔法領域のガジェットで、これが出てくるとSFというより ハード・ファンタジーになってしまう。
     とはいうものの、その世界の上で動くシミュレーション世界は興味深い。
     この世界の人間が住む仮想空間は、精神活動をシミュレートするもので、物理法則とは直接関係していない。
     これは「ディアスポラ」で書いていた世界が原子一つ一つをまるごとシミュレートすることで成り立っているのと比べると、今のコンピュータの世界に近い。
     ところが、人間たちが動くコンピュータ世界のほかに「実世界を簡略化した物理法則」を用いることによって、原子レベルまでシミュレートした世界を、作るところがこの「順列都市」の特徴だ。
     原子レベルを扱う「ミニチュア宇宙」と、物理法則とは無縁の「シミュレート宇宙」の二つが「TVC宇宙」というハードウェアの上で走る。
     シミュレート宇宙の住人たちは「永遠に生きる」ことを目指しているが、永遠とは「不変」に繋がる。永遠不変は「死」に近いという哲学的な思考も生まれる。
     だから、不死の住人たちは「ミニチュア宇宙」に生命の種をまき、その宇宙の物理法則の中で進化していく命を見守ることで永遠不変の人生に変化を見出そうとする、これは壮大な娯楽装置として企画された宇宙だったわけだ。
     ところが、ミニチュア宇宙で発生した生命が知性を持って「素粒子論」とか「宇宙論」を考えるようになると、様子が変わってくる。
     ミニチュア宇宙は、シミュレート宇宙の住人が初期設定したものだから、彼らが「宇宙の始まり」について考えると、それ以上遡れない、説明不能の状態に陥るはず。
     つまり、正解は「この宇宙は神様が創造したのだ」ということ。
     でも、科学者は「神」を否定して、観測可能な事実から合理的な宇宙論を構築しようと取り組む。
     このへんの成り行きを我々の宇宙の成り立ちと神様に当てはめて考えてみるのは面白い。現実の物理学者の中にも「宇宙の始まりに神の存在を信じる」という人が最近は結構居るらしい。
     しかしイーガンは「本当に神様が作った世界」の住人たちが、それを信じないで世界の内側の論理を組み立てて何とか「整合性の有る宇宙論」を作り上げる。
     ここからがまた「イーガンの世界」で、住人が宇宙論を完成すると、「TVC宇宙」が壊れる。
     これってイーガンが書いた「万物理論」と同じネタですね。
     要するに頭で考えたことが本当になる。これも科学というより「ファンタジー」。
     面白かったけれど、サイエンスとファンタジーの混在が「座りの悪い」感じがする作品だ。

  • 人間の精神をスキャンしてデジタルの世界に送り込むことが可能になった世界。ある画期的な理論を考案した主人公(?)がデジタルに住まう「コピー」たちに、文字通りの永遠の存在を約束する話が前半のメイン。
    コピーたちはハードウェアの制約で現実の17分の1の速さでしか活動できなかったりするのが面白いですが、コピーの人権を認めない法律が成立しようとしていたりで、存在としての基盤が揺らいでいるのを背景に話が展開していきます。
    後半は、ある理由があって「…そして7000年後」

    アイディアの核はなんとも説明しがたい「塵理論」とセル・オートマトンモデル生命なんですが、この二つが結びついたとき主観的宇宙論の本作におけるアプローチが理解できると言う構図。なんと言っても塵理論の片鱗でも分かったつもりにならないと面白くないわけですが、話が綺麗にできているから、SFの素養がある人で、あんまり突き詰めて考えない人はイーガンの長編だったらこれがとっつきやすいような気がします。
    ベースの世界観(というか基本設定)はディアスポラや他の短編とも一緒のように見えるので、ディアスポラを読む前に世界をイメージするのにはよいかも。

  • 被検体の時間をスライスしてシャッフルしてシミュレートするってことは未来を予測する処理が必要だと思うけど、その結果が対照標準と一致することはありえない気がする。

  • 最近、グレッグ・イーガンという作家を勧められたので読んでいます。
    ボキャブラリーの少ない私がこの順列都市の話を大雑把に言うと、クゼの描いている世界で起こりうることとしか(また、攻殻とかは言わないで・・)

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著者プロフィール

1961年、オーストラリア西海岸パース生まれ。SF作家。西オーストラリア大学で数学理学士号を取得。「祈りの海」でヒューゴー賞受賞。著書に、『宇宙消失』『順列都市』『万物理論』『ディアスポラ』他。「現役最高のSF作家」と評価されている。

「2016年 『TAP』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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