スキャナー・ダークリー (ハヤカワ文庫 SF テ 1-17)

  • 早川書房
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感想 : 37
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  • Amazon.co.jp ・本 (478ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150115388

感想・レビュー・書評

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  • 潜入麻薬捜査の胸糞さも良いが、ヤク中のとりとめのない会話や更生施設の様子が良かった。
    ドナがコカコーラのトラック撃つところがサイコーだけどマイクと打ち合わせしてるときは普通にドナがコーラ飲んでて、掴み所ないなと思った。

    ディック自身の経験が多いに生かされているので巻末に軽く触れてくれているのがありがたかった。
    映画は未視聴。どうなんだろう…。

  • ディックの中で一番好きな話です。今回新装版になっていたので再購入。

    これはディックが友達への思いを込めて書いているのだと思います。
    悲劇的、アンハッピーエンドとされることが多いようですが
    あくまで私個人としては、ディック作品の中でも特に切なくも優しい話だと思います。

    しかし、スクランブルスーツが象徴するように世の中が、自分自身が、どんどん
    不確かで根拠のないものになる過程は自分の感じることと重なる部分があって
    全体には優しさを感じつつ、その部分がドットとして浮き上がってきます。

    訳は山形さんの方がヤレ感(すみません、うまく言えないです)があって好きです。

  • 自身やその仲間がドラッグ中毒だったことの思いも込めてるだけあって、重い。
    あとがきを読むにつけて思うのは、一度内臓がボコボコになったらダメなのかなーという感想。
    最初のほうはちょっと読みすすめ辛かったかも。

    「死者はわれわれのカメラなんだ」

  • 遂に登場、PKD「暗闇のスキャナー」・・・イメージ的には
    「おぼろげな監視カメラ映像」といったニュアンスがある

    PKDの最高傑作、と高々に宣言するほどのSF作品ではなく、
    むしろPKD本人の麻薬に溺れた暗闇の時代の記憶を自ら綴った物語である
    だからといってそこまでドキュメント的ではないが、
    麻薬に徐々に蝕まれて現実が歪んでいく感じが、スクランブルスーツ
    というSF的要素と相俟って、ますます異常に交錯していく様が
    異常に面白くもあり、異常に切なくもある 
    テーマの重い小説である 意外なラストも良い感じ
    映画化もされ、DVDも出てます こちらも奇抜で面白い
    http://youtu.be/TXpGaOqb2Z8


    内容(「BOOK」データベースより)
    カリフォルニアのオレンジ郡保安官事務所麻薬課のおとり捜査官フィレッドことボブ・アークターは、上司にも自分の仮の姿は教えず、秘密捜査を進めている。麻薬中毒者アークターとして、最近流通しはじめた物質Dはもちろん、ヘロイン、コカインなどの麻薬にふけりつつ、ヤク中仲間ふたりと同居していたのだ。だが、ある日、上司から麻薬密売人アークターの監視を命じられてしまうが…P.K.ディック後期の傑作、新訳版。

  • かりそめの、だが確かに存在したわずかばかりの幸福と、ひとりの人間が背負うには重すぎる不幸、その両方を懐かしんで、いとおしんで、書き残して、ぼろぼろになって、貧乏なまんま死んでしまったディックへ。おっさんが伝えたくって仕方なかった思いはたくさんの人に届いてる。クスリなんて肉眼で拝んだこともない私たちが読んでる。でも多分、あんたがこの本を読ませたかった人間はSFなんか読まない。あたしは何より、そのことが悲しい。

  • -

  • SFの巨匠Philip K. Dick最期の作品。。。

    彼らしく灰色が似合うフィルムノワール的世界が漂う。


    スクランブル・スーツを纏ったあの麻薬おとり捜査官は、

    彼らの冷笑によって殺されてしまったんだ。

    腐敗、欺瞞、猜疑心、頽廃、堕落、

    そしてわずかに残された使い捨ての希望と未来。


    ニヒルも効いてるけれど、 きっと愛も在る。

    その「きっと」感がとても切なく苦しかった。


    いちばん危険な種類の人間は、自分の影にも怯える人間だぜ
                      〜アークター〜


    自分が誰だか分からなくなってしまって、

    それでも、、彼は抜け殻になった今も、

    ドナを求めてる。。。

    その「きっと」感..。

    それがPhilipなりのハッピーエンド!

  • 薬物依存症を実際に体験したF・K・ディックの著書。
    本書は彼が薬を使わずにして書き上げた初めての作品です。
    自分の体験から物質Dという架空の薬物に呑まれた
    囮捜査官のロバートとその周りを取り巻く人々の物語を描きました。
    SFに分類されるのでしょうが、現代的でもあります。
    薬物を責める内容ではありませんが、薬物を使用した者たちの
    生涯を見て恐怖と哀愁を感じずにはいられません。
    どんな薬物防止ポスターよりも効きます。
    映画にもなっていますので、
    厚い本が苦手な方はそちらから入るのもオススメです。

  • 積読中。未読のため、★5つ。

  • 創元SF文庫から山形浩生さんの訳、「暗闇のスキャナー」の邦題で出ていた"The Scanner Darkly"を、浅倉久志さんが新訳したのがこのスキャナー・ダークリー。

    内容に関しては、ディック後期の傑作ということもあり、色々なところに書かれているので、僕は翻訳の違いに関して感じた事を。

    ハヤカワやサンリオの浅倉久志訳でディックの作品に親しんでいた僕は、山形訳の暗闇のスキャナーの翻訳は言葉が少しシャープ過ぎる感じもしていたけれど、今回浅倉訳が出て、改めて読み比べてみると、登場人物のボブ・アークターが壊れてしまった後なんかは、山形さんの訳の方がしっくり来て、アークターが人とは違う何かになってしまった感じがよく伝わってくるように思う。細かな感情表現など、僕らがリアルに感じる言葉で訳している分、感情移入も誘われる。この山形さんの訳に対しては好き嫌いがはっきりでそうな気がするけど、若い子は多分こちらに惹かれると思う。

    一方、浅倉訳の方は、文の調子に慣れているせいもあってか、文章が読みやすく、文の繋がり、運びが上手くよどみない感じがした。あまりにもすぐなくなるような現代的で過激な表現は使われてないし、それだけ文が柔らかいので、ディックをはじめて読む人とかには、浅倉さんの訳がお勧めだと思う。

    読み比べても楽しめるので、ディック好きなかたは、躊躇せず、両方、出来れば原書も買いましょう。

    何度読んでも、アークターが分裂して行くところの描写や、最後の農場での独白は心に迫るものがある。

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