華氏451度〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫SF)

制作 : 伊藤典夫 
  • 早川書房
3.75
  • (68)
  • (131)
  • (99)
  • (18)
  • (4)
本棚登録 : 1311
レビュー : 137
  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150119553

作品紹介・あらすじ

SFの抒情詩人が豊かな感性と叡智をこめて現代文明を痛烈に諷刺! 名作待望の新訳版華氏

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 1953年の作品を新訳して2014年に発行された不朽の名作と言われる小説、今読んでも十分に面白いし示唆に富んでいますね♪
    紙が燃える温度 華氏451度 がタイトルの名作、百害あって一利無しとされて書物が燃やし尽くされた時代が舞台で花形職がファイアマン、消防士 ではなくて昇火士と和訳されているのでイメージしやすい。その昇火士モンターグが主人公で、仕事に最大限の誇りを持っていた彼がとある少女との語らいに由り ふと感じ始めた違和感から劇的変化の道を歩むことになる。良い本に出逢えました(^^)

  • 本の所持を取り締まるようになった世界、不当に本を所持した者が見つかった場合、その本はファイアーマンによって焼き払われる。人々がバーチャルにひたり物事を考えなくなった未来を描いた、近未来小説。
    「ファイアーマン」が消防士ではなく、本を燃やす人という設定が面白かった。随分前に描かれたものだけれど、デジタルが生活の中に大きく入りこんでいる現代にしてみれば、どこか起こりうる風刺の利いた作品だった。図書館戦争にリンクしているかも。

  • 本を読むことで得られる感覚、覚醒、異端になること、恐れぬこと、救われることを、皮肉とロマンチシズムとともに、本が失われた世界の中で、全力で肯定してくれる。
    この本が書かれた時より、既にこの本が描いた年代の方が近い今、預言書としてここまで現在の空気を批評してくれるなんて。

    ”ただ芝を刈るだけの人間と、庭師とのちがいは、ものにどうふれるかのちがいだ”

    ”いまは、なんでも見てみたい。見たものがおれのなかにはいるときには、そいつはまるでおれじゃないが、しばらくたって、はいったものがおれのなかでひとつにまとまると、それはおれになる。”

  • 時計じかけのオレンジや未来世紀ブラジルのように有名なものしか知らないけれど、昔の人が描く未来というのは面白い。
    科学技術がへんてこな方向に進化していて全然スマートじゃなかったり、政治が極端な絶対主義や管理社会になっていたり、人々が浅はかで考えなしで訳のわからない社会を喜んで受け入れていたり。その違和感が面白いんだと思う。

    この作品もそう。あらゆる少数派を考慮した結果本の存在が抹殺された社会という設定にもかかわらず、一方で人々はスリル満点のデスゲームに興じ平気で命を落としていく。戦争がはじまるのにまるで危機感がない。
    どうなってるんだ、昔の人はなんでこんな未来を想像してしまうんだ?と思うけれど、よくよく考えるとまさに今の社会は自然とそういう方向にすすんでいるんだと気づかされる。

    いい歳こいて電車で漫画ばっかり読んでるおじさん。バブルランやらハロウィンやらのバカ騒ぎとツイッターでのアピール。大衆的で、享楽的で、自分の世界しか見ていないカラッポなリア充。
    中東かどこかで戦争が起きようがそんなこと知らない。これは本に描かれた極端な未来に結構近い。

    そういう意味では、単に面白いSFというだけだなく、この小説はメッセージ性が強く、まさに燃やさず記憶していくべきなんだろうと思った。

  • 怖いのは誰かに本を燃やされることではない。知らず知らずのうちに自ら燃やしてしまっていることだ。
    本書で描かれる世界では、「本」を知る人がまだ残っているが、「本」を知る人が残っていない世界はどんな世界となるのか。

    現状に疑問を抱くことは重要だが、その先で同士に出会うことで陥る新たな思考停止もまた怖ろしい。

  • 新訳を読むのをずっと先延ばしにしていたのだけど、ファイアマンに昇火士の字があてられているのにまずびっくり。センスが素晴らしい。
    動物園の動物は幸せなのかなって考えてしまう人は面白く読める本。
    動物園の動物は楽でいいよなーって思える人は理解できない本。
    だとずっと思ってるのだけど、どうでしょう?

  • 近未来の本を読むことが禁止された世界を描いたSF小説です。

    この本の世界では、本を所持していると昇火士(ファイアマン)によって焚書されてしまいます。
    ですが、本を読んでいると、わざわざ焼かずとも、この世界の住民はそもそも本を手に取る習慣がないことに気づかされます。
    そして、住民から失われているのは、本を読むことではなく、実は「物事を深く考えること」であることがわかります。

    その背景にあるのは社会のスピード化でした。
    ものが簡単に手に入り、人とのコミュニケーションすらもモニタ越しの疑似家族を通して行うようになった世界では、物事をじっくりと深く考える暇はなくなりました。
    むしろ考えないことのほうが、住民にとっても(そして中央政府にとっても)そのほうが都合がよかったのです。

    本書の中では、反抗勢力たちは、本を所持せず記憶して語り継ぐことで、摘発を逃れ、本当に人々が物事を深く考えることが必要になったときに備えています。
    登場人物の一人が語っているように、本の価値は、本が存在することそのものではなく、そこに書かれている情報なのです。
    その情報を、性急にではなく、じっくり本に対峙して自身のものとすることが、本を読むことの意義であるとされています。

    この本が書かれたのは1953年です。
    60年たった現代、私たちは同じような道を歩んでいるかもしれません。
    SNSやLineで「かんたんに」コミュニケーションがとれて、情報が容易に手に入るようになった現代は、まさ本書の前日譚です。
    現代を顧みながら、物事を深く考えることの必要性を考えさせる一冊です。

  • 文学愛好家たちとのとあるお茶会の席でこの本のタイトルが上がったのをきっかけに、古書店で買い求めて読んだ。年末にとんでもない傑作を読んでしまったなというのが率直な感想だ。心に響く言葉がいくつもちりばめられていて、私が特に惹かれたのはグレンジャーの亡き祖父の話と、フェーバーの本の本質に迫る長台詞のくだりだ。特に後者はこの本を流れる命そのものだと思う。そして最後に記されたモンターグの黙示録の引用は、著者が未来に託した祈りだと感じた。

  • 記録を調べたら、違う装丁の本書を2年半ほど前に読んでいた。

    自民党総裁選が終わったこの時期に、また読むべきだと思ったのはなぜなんだろう?

    日本人が白痴化して、マスメディアや時の為政者に蹂躙されることを避けようとして、抵抗の証として本書をまた読んだのかもしれない。

  • ブラッドベリは「私の墓石に落書きを書くのならば(この人は物語り書いた人)と書いて欲しい」と答えたインタビューを読んだ記憶がある。まさにこの本は物語りの本です。高校生以来の再読です。

全137件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1920年、アメリカ、イリノイ州生まれ。少年時代から魔術や芝居、コミックの世界に夢中になる。のちに、SFや幻想的手法をつかった短篇を次々に発表し、世界中の読者を魅了する。米国ナショナルブックアウォード(2000年)ほか多くの栄誉ある文芸賞を受賞。2012年他界。主な作品に『火星年代記』『華氏451度』『たんぽぽのお酒』『何かが道をやってくる』など。

「2015年 『たんぽぽのお酒 戯曲版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

華氏451度〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫SF)のその他の作品

華氏451度〔新訳版〕 Kindle版 華氏451度〔新訳版〕 レイ・ブラッドベリ

レイ・ブラッドベリの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ピエール ルメー...
アゴタ クリスト...
ジェイムズ・P・...
伊坂 幸太郎
三浦 しをん
有効な右矢印 無効な右矢印

華氏451度〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫SF)を本棚に登録しているひと

ツイートする