- Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150303648
感想・レビュー・書評
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日本の初期サイバーパンク小説としてSFマガジン2014.11月号に紹介されていたので手に取る。サイバーパンクといえば、ニューロマンサーのイメージしかなかったので、寓話的というか、イメージ主体の本作は意外だった。
あと、手にとった理由は女性の作家だったから。偏見かもしれないが、ロボットや宇宙が多くを占めるSFは男性が多いというイメージがあってそこの女流作家というだけで、興味がわいた。
ファンタジーで包まれている割には、よく考えるとぞっとするような話もあり(惑星で一人暮らす老人のもとにある日、宇宙を漂う親子の鳥やって来る。仲良く暮らす3人だったが、最終的には老人はその親子の体内で溶けてしまう)そのあたりの情緒がほかと違う印象。
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知り合いに借りた大原まり子の短編集2冊目。
前に借りた「銀河ネットワークで歌を歌ったクジラ」よりも
俄然サイバー・パンクな作品群だった。
面白いなと思ったのはサイバー・パンクな世界観の中で
男女の人間関係などを扱う部分がウエートを占めていて
とても女性的な感覚が見えるところ。
「メンタル・フィメール」を含めていくつかの作品では
世界はコンピュータに支配されている世界観の中で
人間だけでなく異形の者やコンピュータにも心や感情があって
単純な人間だけの世界を描いた作品では見せられないような
精神の深いところまで降りていくような描写がされていて面白かった。
ただSFなので展開が突拍子もなかったり
出てきたものが何なのか分からないけど読んでいくうちに
少しずつ何なのかが分かってくるような書き方がされていたりで
ちょっと読みづらく感じるところはあったかな。
個人的には「時を待つ人」と「風の森の声」が叙情的でお気に入り。
「時を待つ人」時間を超えていける少女の話。
影のある青年とそこに惹かれる少女が時間を超えて出会う話。
自棄的な青年に共感できるところもあったし
大人の女性ではなく少女が持つ母性の感じがよかった。
「風の森の声」は惑星に広がった緑の中で一人で住む老人が
外側から侵略してきた虫としばらく一緒に住み
最終的には食べられちゃうという話。
「森は奪われるのではない、与えているのだ。
そして、自分もそうなることができるのだろうか、と首は考えていた。」
という文章が最後に出てきて
描写は残酷だけど自然の持つ本質的な包容力を描いているなと思った。