闇の王国 (ハヤカワ文庫 NV マ 6-8)

  • 早川書房
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (431ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150412388

感想・レビュー・書評

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  • 【内容】
     父親とは異なる陸軍に入ったアレックス。塹壕戦地に送り込まれた彼は、その塹壕でイギリス人のハロルドと出会う。仲良くなった彼らだったが、ハロルドの願いから、アレックスは戦地から去った後、イギリス北部にあるガトフォード(架空都市)に行くことになる。
     そこで、暮らすことになったアレックス。そこで、妖精の仕業と言われる現象に出会い、魔女と呼ばれる女性と出会うことになる。

    【登場人物】
    アレックス・ホワイト
    ハロルド
    ジョー
    マグダ
    ルターニャ
    等(登場順)

    【感想】
     普段推理小説しか読まない人間として、そして本作を読んで精神的に来るホラーは、あわないことを痛感した。有り体に言えば面白くなかったということだ。

     例えば語り手の若かりし頃の話というところから、この物語が終わった時、主人公は生存しているのはわかりきっている。つまるところ、何があっても無事生還しているのが、最初からわかっている。
     妖精とは何なのか、魔女とは何なのか、と言った点にも明確な回答を得られるわけではないので、それは承知で読んでいたものの、推理小説ばかり読んでいるとそういう不思議な出来事を解決しないのか? となってしまい、本作を読む弊害になってしまっていた。

     ホラー部分についても、綾辻行人氏の殺人鬼シリーズのような生々しいグロテスクなものはダメなのだが、本作や横溝正史氏のようなホラーともなると、あまり怖いと思うことが内容で、本作についてもそうだった。想像力にかけているだけかもしれないが……。

     また、途中、性的なシーンが多数あった箇所だが、少々うんざりしてしまった。どう思っていたのか、といった点やそれがストーリーに影響する内容についてはわかるのだが、もうこう何度もそんな描写をされても、疲れるだけだった。(これに関してもハードボイルドが好きでないというのと同じだろうが)

     なので、全体としては、私の好みと全く合致しなかったというのが、本作を面白い! と思えなかった要因だった気がする。
     なんかいろいろ自分の感性というか、想像力というか、そのあたりのものが乏しいんだなと実感するのと同時に、何が好きでないのかを自覚できる作品だった。

     全く、感想になっていないけれど……。

  • どうにも面白味を感じられなかった…。
    原書で読めたらなあ、とつくづく思う。

  • キングの源流というのがわかります。

  • 2013.1.12

  • ジョー、マグダ、ジリー、ルターニャ、そして語り手。
    誰が真実を語っているのか分からぬまま、第三章まで語り手の
    ツッコミや(翻訳では分からぬ)押韻あそびに、
    やはりこの物語は語り手の創作なのかと(創作だけど)
    読み進めていくが「とてつもない恐怖」とやらは、見当たらない。
    しかし語り手の憎しみも、ジリーの憎しみも、マグダの憎しみも
    結局消えることは無いのかね。
    第三章は『ある日どこかで』や『奇蹟の輝き』と同じ匂い。
    魅せられてか、仕方なくかは問わず、ここまで読んでこられたら
    チョッとロマンチックで切なさも味わえるはず。
    さて、最大の問題は『闇の王国』という日本語タイトル、
    『闇』は物語の内容と合わず、KISSのアルバムタイトルに
    『地獄云々』とつけたような違和感を感じる。

  • これは良質のフェァリーティル

  • ・リチャード・マシスン「闇の王国」(ハ ヤカワ文庫NV)は この老大家の最新作である。1926年生まれであるから御年85であらうか。ブラッドベリに負けない精力的創作活動である。しかも、今回 はそれが妖精譚で ある。魔女も出てくる。ならばお伽噺の類かといふとそれは違ふ。何と自伝的大作であるといふ。マシスンの少年期から青年期の家庭の様子が 物語に反映されて ゐるらしい。つまり、あまりにも厳格な父親とその被害者たる妻子といふ構図である。確かに具体的に書かれてゐる。妻子からすれば悲惨とし か言ひやうのない 状況である。かういふことが日常的にあつたらしい。「マシスンは、実体験に触発された内容にこだわり、それを作品に書き込む傾向の強い作 家」(425頁、 尾之上浩司「本当は怖い、おとぎ噺」)であるといふ。私はそんなことを気にしたこともないが、これまで読んだ作品中にもそんなのがあつた のであらうと思ふ と多少は気になる。本書では父親の件である。マシスンはこれについてかなり書いたらしい。それが、編集部の意向で、発表の段階で大幅に削 られてここにある 形になつた。「マシスンはそれを了承したものの納得せず、今年(二〇一一年品)の秋に本来のままの原稿を単行本化した」(427頁同前) 書を出版すると か。間もなく出るはずのその版には、Author's Preferred Textと付されてゐるらしい。これが私の書いたものだといふわけである。マシスンの作品に対する思ひ入れが分かる。しかし、これは削ら れただけあつてか なり陰惨であるらしい。物語との関はりからすれば、父親に虐げられる妻子の執拗な描写は不要であらう。ほどほどあれば良い、そんなところ である。これが父 との関はりがあつたからこそ生まれた物語であつても、そこから妖精譚が生まれる理由はない。せいぜい、父を避けて陸軍に入隊してフランス 戦線に赴くといふ 程度であらう。ところが、マシスンは厳格な父を執拗に描いた。息子には反発するしか道はなかつたにせよ、だからこそ父の存在がそれほど大 きかつたといふこ とであらう。彼はそれを確認せざるをえなかつた。さうして、それが妖精譚につながつていくのである。いささか唐突に思へるのだが、戦線を 離脱した若き兵士 はふと気がつくと魔女も妖精もゐる世界に紛れ込んでゐるのである。これがマシスンのマシスンたる所以かもしれない。私はマシスンの作品す べてが傑作だとは 思はないが、この異色の妖精譚は、異色であるがゆゑに優れてゐておもしろい。大体、闇の王国といふ作品名自体が妖精譚らしくないではない か。
    ・本書では中心の妖精譚に至るまで、語り手たる老作家の思ひ出として、家族のことと戦地での体験が語られる。そこから戦友に導かれてイン グランドに移る。 その土地の人々は魔女も妖精も信じてゐた、これが妖精譚の始まりである。マシスンはかなり古典的である。彼の息子や孫の世代の作家はさう いふ約束事を破る のが好きなやうで、これまでに見られないタイプの様々な異世界の住人を生んでゐる。しかしマシスンはさうはしない。妖精を避けるのに花々 や鉄を使つたりす るし、魔女の儀式は満月の夜に行はれる。だから、典型的な妖精譚かといふとさうはいかない。訳者尾之上浩司氏の解説は「本当は怖い、おと ぎ噺」と題されて ゐる。老作家が若き日の自分の稀有な体験を語るのである。いささか思はせぶりだとしてもおもしろい。老作家のつぶやきとも言へぬ語りのお もしろさである。 もしかしたらこれは騙りであるかもしれぬと思ふ。だからこそ父の執拗な記述が必要だつたのではないかと思ふのだが、これは作家推薦版を読 まないと判断でき ない……。

  • 戦場で知り合った兵士が目の前で戦死する。死に際に託された金塊を携えて、彼の故郷を訪れたアレックス。そこは魔女や妖精が住む世界だった。住むにつれ、不思議な体験を重ね、誰の言葉が真実なのか分からなくなっていく。魅力的な魔女や妖精に、自分の身を任せていく先に見えるものは・・・。__語り口調で続くのにも訳があり、話がよく飛んでしまうのも意図的にしたもの。ただ、語る話に自分でツッコミを入れるとか多いので、本編に集中できない面がある(原文なら韻を踏むとかの面白さが分かるのかも)。ドロドロとしたホラーというよりも、悲哀な恋愛の印象が強く残った。本当のマシスンの年齢が85歳(発行当時)。いまだに書き続けているマシスンに畏敬の念を抱く。

  • 82歳の現役老作家が、今まで心に秘めていた、少年期の信じがたく、大変に恐ろしい数々の体験を記す──。

    とてつもない恐怖の数々が、いつ描かれるのか、いつ描かれるのか、と思っているうちに、終わってしまった。
    想像していたものと違い、大変残念。

    だいたい、このストーリーで、「闇の王国」はないだろう。
    表紙の意味ありげな書物のイラストも、読者に内容をミスリードするためのものとしか思えず、久しぶりにがっかりした。

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著者プロフィール

Richard Matheson

「2006年 『不思議の森のアリス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

リチャード・マシスンの作品

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