かぜの科学:もっとも身近な病の生態 (ハヤカワ文庫 NF 421)
- 早川書房 (2014年12月19日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150504212
感想・レビュー・書評
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「かぜ読本」という売り文句だけれどもまさしく読本。研究者が書いた小難しい専門書ではなく、さまざまな研究者に取材してその知見や研究結果を紹介するコラムという感じ。統計は米国のものなので若干日本とは事情が異なるところもある。ウィットというかユーモアというか、えせ科学に翻弄されがちな自分たちの姿を笑いとばしている。普通感冒については結局いまだよくわかっていないことが多く、市販の風邪薬の効果は疑わしいけれども有効成分よりプラシーボ効果のほうが大きい、ということだけはとりあえずわかった。ついでにいうと後半は「かぜを絶滅させても社会はたぶんよくならないし、いっそかぜをひいたら布団に籠もって読書でも楽しもうぜ!」みたいなノリだった(嫌いじゃない)。
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かぜはどれほど移りやすいか。マスクをせずに風邪でごほごほしている人の隣に座ってしまったら殺意を覚える人は多いと思うが、一方で家人が風邪を引いたからといって一家全滅するとは必ずしも限らない。少し空間を共有しただけの他人のウィルスに恐怖心を感じるのは余計な心配なのだろうか、いったい日常生活でどのように私たちは風邪をひくのだろうか。
想像通り、大事なのは、粘膜を保護すること(免疫向上)、手をよく洗うこと(接触感染防止)、手で目や鼻をこすらない。禁煙や適度な運動、十分な休養は当然のこと。
ビタミン剤などのサプリは風邪の予防(免疫力の向上)に効果はない。
マスクはほとんど効果がない!(限定意見付きの日本の研究)マスクが目と鼻を覆い、3か月間24時間かけていられるなら、新型インフルエンザ予防には効果がある。
インターネットに様々な風邪予防に関する矛盾する情報が流布しているように、本著も様々な学説を紹介するも、結論としては「さらなる調査が必要」もしくは「諸説あり」。 -
風邪の研究のために、治験に応募してわざと風邪をひくとは。風邪になぜかかるのか、予防法などという基本的なところから、各国にある民間療法、風邪のときに飲むカクテル、本、音楽まで。多方面について論じていておもしろい。風邪ではないが、花粉症の季節に、鼻をずるずるさせながら読了。
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風邪についてひたすら書かれている本。
風邪はどのように感染するのか。予防するにはどうしたらいいのかなどなど。様々な実験や研究をもとに紹介されてる。
風邪について深くかんがえたことなどなかったからとても興味深かった。
内容的には難しい部分が多く、5割程度しか理解ができなかった感じがある。
また時間を空けて、読みなおしたいと思った。 -
知っていることが多かった印象。
例えば、総合感冒薬はアスピリン等より効くという証拠がなく、金の無駄遣いだとか、咳止めシロップは効かないから止めた方がよいとか。まあこれらはまだ市販されているから、知らない人が多いのだろう。高い倫理観と強い使命感とか、健康でより豊かな暮らしの実現に貢献なんて歌っておきながら、知らん顔して知識不足の人に総合感冒薬を売り続ける製薬会社の高い倫理観には敬服するが、商売ってそんなもんだよねとも思う。自衛のためには知識が必要。
新しく知ることができたのは、1)ビタミンCをたくさん摂っても風邪の予防にはならない(プラシーボ効果は別として)。2)風邪をひいたときに運動してもよくもならないが悪くもならない。3)マスクは、新型インフルエンザは別にして、風邪の予防にはほとんど効力がない等。こうして書き出していくと、知らなかったことも多かったと(笑)。 -
たいしたことないようでいてわずらわしい例の病気の話。
興味深かったんだけど気分が乗らず半分ほどでギブアップ。
一般向けアメリカンサイエンスのノリはあんまり好きじゃない。
科学なんて知ること自体がおもしろいんだから、文章でおもしろくしようとしなくていいのに。
でもタイミングがあえば最後まで読んでみたいかな。
風邪にまつわる常識と、科学的知見のあいだをうめる驚きを楽しもうというような部分が多いんだけど、その「常識」はアメリカの常識だから、「科学と常識」よりも「私と著者」の常識の違いに目がいった。
風邪をひいたときにミルクをのむと鼻水が出る(?)とか。
それはそれで興味深い。
科学の危うさっつうか、一歩まちがえるとおそろしいことになりそうな部分が多々ある。
有償ボランティアに風邪をひかせる実験は貧乏人の体を買う人身売買にみえた。
風邪をひきやすい(症状がでやすい)体質と遺伝の話は、「虚弱→体調管理ができていない→社会人失格」みたいな人格否定をやめさせる根拠にできそうだけど、風邪をひきやすい人を雇うと年間何日の損失とかって差別を生みそうだとも思った。
知識を得るのが手放しにいいことだと思えなくなってきてる。
・風邪をひくとポジティブな気分が低下する。
ネガティブ度があがるわけじゃないけど、ポジティブに相殺される部分が減るから結果的にネガティブになる。
「酸味が抜けたみかんは糖度が同じでも甘く感じる」みたいな話だ。 -
途中で中止。でも、面白い。
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15/3/1読了
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4〜5
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原題:Ah-choo!: The Uncommon Life of Your Common Cold (2010)
著者:Jennifer Ackerman(サイエンス・ライター)
翻訳:鍛原多惠子
2011年に出版された『かぜの科学―もっとも身近な病の生態』が同名のまま文庫化。
【メモ】
(書誌情報)
ISBN:9784150504212
刊行日:20141218
【目次】
献辞 [003]
題辞 [004]
目次 [005-007]
序 風邪〔コールド〕の赤裸々〔コールド〕な真実 011
第1章 風邪をもとめて 018
第2章 風邪はどれほどうつりやすいか 036
病院/(ジャングル)ジム/エレベーターその他の公共輸送機関/銀行あるい
は現金を扱う場所すべて/職場/保育施設と学校/家庭/ホテル/飛行機
第3章 黴菌〔ばいきん〕 071
第4章 大荒れ 092
くしゃみ、「自然のトランペット」/鼻づまりと鼻水/咳/耳管狭窄〔じかんきょうさく〕/悪の枢軸――頭痛、倦怠感、能率低下
第5章 土壌 121
十分な睡眠をとる/禁煙する/運動する(ほどほどに) /ワインを一杯飲む、
あるいは飲酒しない/休暇をとる、あるいはとらない/人間関係の輪を広げる/ビタミンやハーブなどのサプリメントで免疫を「強化」しようと考えない
第6章 殺人風邪 144
第7章 風邪を殺すには 160
第8章 ひかぬが勝ち〔ドント・キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン〕 199
自分の体調に留意する/風邪をひいた人や子どもを避ける/手を頻繁かつ入念に洗う/顔に手をやらない/子ども(と自分) に自己接種しないよう教える
/家族の誰かが風邪をひいたら、場所を絞り込んで物体表面をきれいにする
/外出時は気をつける/咳やくしゃみはティッシュの中(にして捨てる)か、袖に当ててする/良き市民になる/リラックスする
第9章 風邪を擁護する 226
付録 風邪の慰みに〔コールド・コンフォート〕 236
専門家のすすめ/風邪の諸症状の対処法/母親の対応/人びとが風邪薬に求めるもの/普通またはあまり普通でない普通感冒薬の手引き/これを入手しよう/真の療法――レシピと推薦図書
謝辞 [301-304]
訳者あとがき(二〇一四年一二月 鍛原多惠子) [305-310]
参考文献 [311-312]
原注 [313-339]