〈脳と文明〉の暗号: 言語と音楽、驚異の起源 (ハヤカワ文庫NF)
- 早川書房 (2020年12月3日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150505660
作品紹介・あらすじ
話し言葉や音楽は、自然界の痕跡に満ちている!? 大ヒット『ヒトの目、驚異の進化』の理論神経科学者が、聴覚系と進化の謎に挑む
感想・レビュー・書評
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言葉を理解するということは脳の進化によるもの。基本的には生活音を聞き取る能力が発達したもの。それは音楽を聴くことも同じで、元を正せば生活音のリズムを聴いていること。言葉を聞いて理解できることを何も不思議に思わずに生活してきていたので、脳の神秘さを理解するとともに、まだ脳は進化の過程なんだろうなと思う。
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言語は自然界の物理現象の音を模倣しており,音楽は人間の動作音を模倣しているというユニークな説を提唱している.実際の言語と自然界のデータをもとに議論しているが,提唱している説が奇抜なために,使用されているデータも偏りがあるようなときもあるように感じた.しかし,言語の発音には一定の法則が感じられるようになった.
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仮説としての言語(話し言葉)と音楽の起源。
とくに音楽の起源については説得力がある。
「聴覚がどれほど環境音に敏感で正確か」といったあたりから話が始まるのだけど、これのあたりが際立っておもしろい
。
ただし音楽に対する感覚は「生得的か、学習するものなのか」というあたりはかなりあやふや。
マイナースケールから感じる物悲しさに「まったく生得的なところはなく社会的に構成されている」とはあまり思えない。
ただスケールは明らかに各文化によって構成されているのは明らかなので、ちょっとこのあたりも突っ込んで読みたかった。
『ヒトの目、驚異の進化』 -
2021-01-15
おそらく主張していること-言語は物体の発する音の、音楽は人間の発する音の、特徴を真似るように進化した-は間違っていない。
しかし、どうも論の進め方に違和感がある。
自説を補強する証拠だけを選んで書いているように見えるんだよなあ。いや、当たり前なんだけど。
なんだか、トンデモの論の進め方の匂いがするのです。 -
・文字は本能ではなく、脳のシステムに合うように文化によって淘汰され形成されてきた。それと同様に言語や音楽も本能ではなく脳のメカニズムに合うように作られたのではないか。
・言語や音楽は人間の脳に合わせて作られた。それは、猿人類とヒトとがあまり変わらないことから言える。
・言語や音楽は自然を真似て作られた。人間にはそれを認識できないがそれは感覚器官の下位レベルに現れるものだから。自然を真似ているため世界の至る所で共通点が見られる。つまり、自然には文法のような構造が存在する。
・聴覚は何が起こったのかを教えてくれる。
・ぶつかる、すべる音は連続変化しにくいが鳴る音は連続変化しやすい。
ぶつかる音は文頭にきやすく、滑る音はあいだ、共鳴も間にある。共鳴からぶつかるという音は自然界にはなく、逆再生で聞くことができるので違和感を覚える。
・言語は自然を真似ている。例えば音高。何かが近づくとき音は高くなる。それと同様に疑問文のイントネーションも語尾は上がる。 -
2.9
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言語と音楽の起源についての仮説と検証。おそらく言語も音楽も持っていない現生人類と現在の人類は機構的にはなんら変わりはないのに、なぜ現在のヒトは言語や音楽を理解できるのか。
自然を利用して生まれ、自然と別の実体となって進化を続けている”文化”というものに実感を持った。面白い。 -
音楽は動作音(人や動物が近づいたり遠のいたりするときに建てる足音)をもとにしているという仮説をもとに人間が話す言葉や音楽のメロディ・テンポやハーモニーとの関係を説きあかし、考察していく。
著者は長い間にわたって価値を認められ続けたクラシック曲の楽譜をもとに上記の仮説を検証していったけれど、自然の物理法則を無視したダブなどの録音芸術を検証の領域にいれたらどうなるだろうか?
ダブやアシッドハウスの酩酊感・トリップ感は動物や人間、草や花がたてる物理法則を無視した音を響かせる。ディレイの残響音が突然深くなったり消えたりするのは、あたかも瞬間移動したかのような聴力体験をもたらず。
トリップ感覚を覚える。これも音楽の元々は動作音にあるということの裏返しの証拠なのかもしれない。