邪悪の家 (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-75)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150700751

感想・レビュー・書評

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  • 「アガサ・クリスティ」の長篇ミステリー『邪悪の家(原題:Peril at End House)』を読みました。

    『書斎の死体』、『動く指』、『茶色の服の男』、『シタフォードの秘密』に続き「アガサ・クリスティ」作品です。

    -----story-------------
    名探偵「ポアロ」は保養地のホテルで、若き美女「ニック」と出会った。
    近くに建つエンド・ハウスの所有者である彼女は、最近三回も命の危険にさらされたと「ポアロ」に語る。
    まさにその会話の最中、一発の銃弾が…「ニック」を守るべく屋敷に赴いた「ポアロ」だが、五里霧中のまま、ついにある夜惨劇は起きてしまった。
    -----------------------

    1932年に発表された作品… 「アガサ・クリスティ」の長編12作目、「ポワロ」シリーズとしては6作目にあたる作品です、、、

    「ポワロ」シリーズは、2年前に読んだ『カーテン -ポアロ最後の事件-』以来ですね。

     1. マジェスティック・ホテル
     2. エンド・ハウス
     3. はたして事故か?
     4. くさいぞ
     5. クロフト夫妻
     6. ヴァイス氏の訪問
     7. 悲劇
     8. 運命のショール
     9. AからJまで
     10. ニックの秘密
     11. 動機
     12. エレン
     13. 手紙
     14. なくなった遺言状の謎
     15. フレデリカの奇妙な態度
     16. ホイットフィールド氏との会見
     17. チョコレートの箱
     18. 窓に出た顔
     19. ポアロの演出
     20. J
     21. K
     22. 終幕

     あとがき 田村隆一


    やられちゃいまいした… 翻訳される際の邦題タイトルの違い、、、

    途中で、どこかで読んだことあるなぁ… と思ったら、以前、読んだことのある新潮文庫の『エンド・ハウス殺人事件』と同じ作品でしたね。

    出版社が異なるのでやむを得ないとは思いますが… できれば揃えて欲しいなぁ、、、

    まぁ、前回読んだのが7年以上前だったので、忘れている部分が多く、それなりに愉しめたのは不幸中の幸いでしたけどね。


    イギリス南部コーンウォールのホテルに滞在していた「ポアロ」と「ヘイスティングズ」が、ホテルのすぐ近くの岬の突端に建つ少し古びた邸エンドハウスの若き女主人「ニック・バックリー」と出会ったことから事件に巻き込まれる… ホテルのテラスでくつろいでいた「ポアロ」と「ヘイスティングズ」だったが、ちょうどそこを「ニック」が通りかかる、、、

    直後にハチか何かが「ニック」のところに飛んできたらしく、「ニック」が追い払うしぐさをしたが… 飛んできたのはハチではなく、ピストルの弾丸だった。

    「ポアロ」たちとの話の中で「ニック」は最近3回も命拾いをしたと話したことから、心配になった「ポアロ」は「ニック」を守るべくエンドハウスに向かう… 友人たちや「ニック」自身の話によると、最近「ニック」のベッドサイドに架けてある絵が夜中に落ちてきて「ニック」の頭を直撃しそうになったり、エンドハウス専用の小道を歩いていると石が落ちてきたり、車のブレーキが壊されていたりと立て続けに「ニック」が命を落としそうになった事件があったという、、、

    今日のことも入れれば4度も運に助けられ、命拾いしたことになる… 楽観的な「ニック」は命が狙われるなど理由がないのにありえないと否定するが、「ニック」のことを心配する「ポアロ」は信頼できる人間をそばにおくことを提案し、結局「ニック」は従妹の「マギー・バックリー」を呼ぶことにした。

    「マギー」が到着した日の夜、エンドハウスでは海岸の花火大会を見ながらパーティーが開かれ「ポアロ」と「ヘイスティングズ」も出席したが… 途中で寒くなった「ニック」と「マギー」は上着を取りに戻ったが、「マギー」は上着が見つからず「ニック」のショールを借りて「ニック」より先に一人で海岸に戻る途中に射殺されてしまった、、、

    「ニック」のショールを着けていたために「ニック」と間違われて殺されたものと思われた… 自分がいながら殺人が起きたことでショックを受けた「ポアロ」は、「ニック」を療養所にいれ「ポアロ」と「ヘイスティングズ」以外は面会謝絶にし、外部からの見舞いの品も食べることを禁じた。

    「ニック」を隔離して安全を確保した「ポアロ」は、関係者のリストを作る… リストに載った関係者はA~J、、、

     A.メイドの「エレン」
     B.「エレン」の夫「ウィリアム」
     C.「エレン夫妻」の子供、「アルフレッド」
     D.「ニック」が貸している番小屋の住人「クロフト老人」
     E.「ニック」が貸している番小屋の住人「クロフト夫人」
     F.「ニック」の友人の「フレデリカ・ライス」
     G.「ニック」の友人で美術商の「ジム・ラザラス」
     H.「ニック」の友人の「ジョージ・チャレンジャー海軍中佐」
     I.「ニック」の従兄の弁護士「チャールズ・ヴァイス」
     J.?――外部の者かもしれない。ただし、上にあげた人々の中の誰かと関係があるやもしれず。

    これを元に「ポアロ」は捜査を開始するが、動機がわからない… 「ニック」にはほとんど財産がなく、エンドハウスも抵当に入っているほどだったし、恋愛のもつれや嫉妬も考え難く、悩む「ポアロ」だったが新たな事実が判明した。

    世界的に有名な飛行家「マイケル・シートン」が飛行中に事故に会い死亡したとのニュース… 「シートン」は英国第二の富豪の資産相続人であり、「シートン」は「マグダラ・バックリー」とひそかに婚約していて「マグダラ」に全資産を遺す旨の遺言書を作っていた、、、

    「マグダラ」こそが「ニック・バックリー」その人であり、「ニック」というのは愛称で本名は「マグダラ・バックリー」であった… なんと「ニック」には巨万の富が転がり込んでいたのだ。

    動機が明らかになり、犯人はまた「ニック」を狙うに違いない… そしてそれが現実になった、、、

    療養所にいて安全なはずの「ニック」が、「ポアロ」から送られたというチョコレートを食べたところ、その中に多量のコカインが入っていたのだ… 「ニック」は命に別状はないものの中毒症状を起こしてしまった。

    いったい誰が「ニック」の命を執拗に狙うのか?そしてその動機は?

    いやぁ… 意外な人物が犯人でしたね、、、

    A~Jではなく、当初から考慮に入れるべきだった"I"の存在… 被害者と思われた人物が実は犯人であり、人違いで殺されたと思われた人物が人違いではなく、計画的に殺されたとは思い付かないよなぁ。

    まさか、「マグダラ」という名前が犯人と被害者の共通のものであったとは… 日本人の感覚では、ちょっとわかんないですよね、、、

    最終章の『22.終幕』で、キチンと「ポワロ」が説明してくれないと、なかなか全貌が理解できないです… 「ポワロ」を利用しようとした、犯人の大胆な計画でしたねぇ。

    しかも、別々な犯人による、二つの遺産相続詐欺が同時進行していたことで、物語が複雑化していて、真犯人を絞り込むことができませんでした。

    「ポワロ」が解けなかった謎(事件の解明には関係しないんですが… 「ジム・ラザラス」が「ニック・バックレイ」が保有する肖像画を市場価格以上の値段を買取しようとしたこと)が、ひとつだけ残り、、、

    エンディングで、その謎が解ける… という演出も印象的でしたね。



    以下、主な登場人物です。

    「エルキュール・ポアロ」
     私立探偵

    「ヘイスティングズ」
     ポアロの友人

    「ニック・バックレイ」
     エンド・ハウスの女主人

    「マギー・バックレイ」
     ニックの従妹

    「チャールズ・ヴァイス」
     ニックの従兄。弁護士

    「エレン・ウィルスン」
     エンド・ハウスのメイド

    「ウイリアム」
     エレンの夫。園丁

    「アルフレッド」
     エレンの息子

    「バート・クロフト」
     番小屋の住人

    「ミルドレッド」
     バートの妻

    「フレデリカ・ライス」
     ニックの友人

    「ジョージ・チャレンジャー」
     海軍中佐

    「ジム・ラザラス」
     美術商

    「マイケル・シートン」
     飛行家

    「グレアム」
     医師

    「ウエストン」
     警察署長

    「ジェームズ・ジャップ」
     警部

  • 射殺,薬物中毒(自演)

  • 手がかりを丁寧にばらまいていて好印象。でも逆に、これだけ丁寧だと簡単に答えが見えてしまうわけで。

  • フラップジャックスが出てきた話を探して「鳩のなかの猫」を読んでのポワロ続きで。この「邪悪の家」という題名では覚えてなかったが、TVシリーズの「エンドハウスの怪事件」だった。

  • いや、すっきりした!

  • 「もしかして…?まさかね」と思っていた人が犯人だった。
    最後のどんでん返しはやっぱりお見事。
    地味な印象の事件かもしれないけど結構好き。
    登場人物ほぼ全員何かしらの秘密を抱えているのもクリスティー作品らしい。

    久々のヘイスティングズ、ジャップも出てきます。

  • 犯人の形式が女史としては
    珍しい形式ですね。
    まあこの形式はクイーンの作品には
    頻出します。

    ちなみにきちんと犯人解明のヒントは
    所々に出てはいるのです。
    だけれどもどうしたって
    そうはならないのです。

    なぜならばそれはありえないと
    感じるはずだから。

    通常の法則は
    通用しない作品なのです。

  • 1932年発表
    原題:Peril at End House

  • 英国南部、海を見下ろす崖の上に建つ古い邸宅エンド・ハウス。その家の若く魅力的な女主人ニックは、このところ奇妙な事故に悩まされていた。重い額縁の落下、ブレーキの故障、落石…。そして、たまたまリゾートにやってきたポワロの目の前で、ニックが狙撃されるという事件が起きる。彼女の命を守るため、ポワロの灰色の脳細胞が働きはじめた―。初期クリスティを代表する長編。 --This text refers to an out of print or unavailable edition of this title.

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