証拠 (ハヤカワ・ミステリ文庫 フ 1-23 競馬シリーズ)

  • 早川書房
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (457ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150707231

感想・レビュー・書評

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  • 競馬シリーズ23作目。

    本当に次から次へと、面白い主題を見つけてくる。
    しかも、上手に競馬を絡ませてくる。
    今回はワイン。
    素人でも聞いたことがある銘柄の名前が出てきて、
    なんかそれだけで楽しくなってくる。

    少年のころから目隠ししたままチョコレートも銘柄を当てられた主人公トニイは、
    フランス、ボルドーのワイン商の家にホームスティしたことから、
    ワインに興味を持ち、味を識別できる訓練を受け、ワイン商となる。
    祖父、父と軍人の家に生まれながら、その道へ進むことがなかったトニイは、
    しかも、最愛の妻を亡くしたばかりで、
    独りで生きる人生に意味を見失っていた…と、かなり興味深い。

    しかも、
    冒頭での馬運車の事故からサスペンスに突入かと思わせておいて、
    本筋はそこではなかったり、
    石膏で頭部を覆い窒息させられるという、
    このシリーズでは珍しい猟奇的殺人事件かと思っていたら、
    ちゃんと理由があったりと、展開もかなり面白い。
    ただ、「戦争ゲーム」と言われて、
    そんな世代ではない私でも、うっかりテレビゲームの類を想像してしまった。
    戦争のジオラマ?

    それと、リンポポ川。
    気になって調べたら、
    象の鼻がなぜ長いのか、という「象の子供」という短編があるらしい。
    イギリスでは有名なのか?

    前作に続き、かなり面白かった。

  • いつもながら期待を裏切らない面白さ

  • 談話室で紹介されていたので読んだ.ディック•フランシスははじめて.以前海外ミステリをたくさん読んでいたときにも読む機会がなかった.
    ワイン商の主人公がウィスキーとワインを巡る不正に巻き込まれていくというストーリー.32歳の主人公のトニー•ビーチ,事件解決のパートナーとなるジェラード•マクレガーがとても人間的に描かれているのが良い感じ.
    話の設定からして,具体的なワインやスコッチの名前がたくさん出てくる.ワイン通だったらもっと楽しめるだろう.

  •  もしかしたら、一番好きな作品なんじゃないかと思う。ミステリとしての完成度はどうかわからない。しかし、ラスト近い山場の迫力、そしてそれを乗り越えた後で主人公が、亡き妻に向かって叫ぶ言葉には、何度読んでも感動してしまう。そして、事件が終わった後に主人公がある発見をするシーン、実は自分の台本でちょっとその趣向を盗もうとしたこともあったのだけど、似ても似つかない情けないものに終わってしまった。

     ワイン商を主人公にするのは、さまざまな職業の主人公が登場する作者の作品の中でも、比較的地味なのかもしれないが、彼が事件に巻き込まれていくきっかけはとても説得力があるし、ワインの知識だけで敵を打ち負かすことの意味も、感動的に伝わってくる。つまり、平凡が非凡になる瞬間のようなものが、ありありと目に見えるのである。

     主人公の人柄、とても好きだ。優しく、そして意志が強い。こんな人がいるお店が、自分の住む町にあったらいいなと思う。

  • 気の利いた酒屋を営むビーチが主人公。
    ワインをめぐる大規模な不正と闘うことに。
    最初の数冊に読むには進めませんけど。
    もちろん、水準は行っているのです。

  • 23

     最愛の妻を急病でなくして以来、半ば死んだように生きている主人公が立ち直る話。

     親から、疎まれはしなかったものの失望され、見放され、妻といる間だけが生きている実感だったワイン商。

    「 妻の急死の前兆に全く気付かなかったことに罪悪感を覚え、抜け出したはずの、過去の見捨てられた子供時代の呪縛に取り付かれ、砂を食むような毎日を送っている。
     その彼が、ゆっくりと歩き出して語る最後の独白。

    「エマ…エマ…エマ…」と叫びながら家の中を通っていった。声が壁にぶつかって反響している。
     彼女を求めて叫んでいるのではなく、彼女に告げたくて叫んでいた…彼女に聞いてもらいたかった…自分がはじめてなすべきことをした。いつまでも臆病者でいたわけではないこと、私に関する彼女の記憶を裏切らなかったこと、あるいは自分自身を裏切らなかったこと…自分のあるべき姿を具現したこと…彼女に慰められ、充実感を味わい、あくまで彼女と一体なのだと感じていること、かりに今後、彼女のために泣く事があっても、それは彼女が人生の楽しみを最後まで味わえなかったこと、生まれなかった子供、に対する嘆きであって、自分が大切なものを失ったため、寂しいため…罪の意識のために泣いているのではないことを知らせたかった。」

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