皮膚の下の頭蓋骨 (ハヤカワ・ミステリ文庫 129-2)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (589ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150766023

感想・レビュー・書評

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  • 脅迫状に怯える女優の夫から身辺警護を依頼されたコーデリア。舞台が上演される島の所有者や従姉妹や評論家などが滞在する中殺人が。事件発生までの描き方など古典的だが80年代の作。謎解きよりコーデリアの生き様から目が離せない。

    • miyacococoさん
      111108さん、なんてタイムリーなアドバイス!現在とっつきづらくてなかなか読み終わらない短編集を読んでいるので次以降にします(笑)コーデリ...
      111108さん、なんてタイムリーなアドバイス!現在とっつきづらくてなかなか読み終わらない短編集を読んでいるので次以降にします(笑)コーデリアに興味津々です(*^^*)
      2023/10/08
    • 111108さん
      miyacococoさん、とっつきづらくてなかなか読み終わらない短編集のすぐ後には読まないほうがいいかも(笑)『女には向かない職業』がコーデ...
      miyacococoさん、とっつきづらくてなかなか読み終わらない短編集のすぐ後には読まないほうがいいかも(笑)『女には向かない職業』がコーデリア第一弾です♪
      2023/10/09
    • miyacococoさん
      111108さん、ありがとうございます♪来月以降に~(年末かも)でもまずは「女には向かない職業」から読みます(^-^ゞこちらは以前から気にな...
      111108さん、ありがとうございます♪来月以降に~(年末かも)でもまずは「女には向かない職業」から読みます(^-^ゞこちらは以前から気になってて読んでいなかった作品なのでちょうどいいタイミング!
      2023/10/09
  • コーデリア・グレイが登場するシリーズの第2作。しかし、シリーズといっても2作しかない。著者はすでに亡くなっており、今後このシリーズが追加されることはない。率直に言って、それはとても残念だと思った。
     巻末の解説には、著者が来日した際の実際の言葉として、「その人の真の姿や人間性、人々が匿そうとしている本質をあばきたてる」ことに「興味がある」と述べている。これは著者の作品性を端的に物語るものだと、解説には述べられている。たしかにそのとおりであると感じた。著者本人が語っているように、本作は巧妙なトリックや、幾重にも伏線が張り巡らされ、それを解き明かす謎解きの醍醐味が味わえるというよりも、どちらかというと人間ドラマの方に重きが置かれている。謎解きのカタルシスよりも、島に集められた人々がそれぞれどういう背景を持って、被害者にどういう感情を抱いているのかをより丁寧に描いている印象だった。ほかのミステリーでは、犯人が分かり、どうしてその犯罪に手を染めたのか(どうして犯人が被害者に強く恨みを持ったのか)が、自白なりで明らかになる。もちろん、本作でもそれはそのとおりだし、解説にいうように、最終場面で明らかにされる「悪」の存在が強く印象付けられる作品ではあるが、犯行を実際に行った人物以外の登場人物たちも丹念に描かれていると感じた。(この点、1作目ではコーデリア・グレイ自身を掘り下げていた面が強かったように思った。1作目だからだろうけど…。)
    また、被害者が死の直前にコーデリアと死の恐怖について語る場面が、特に印象的だった。被害者はどちらかというと自由奔放で理知的な振る舞いに欠けるように、他の登場人物たちが語っていたが、死の前のコーデリアとの会話は、被害者の繊細さを感じさせるものだったと思う。
    これも解説にいうとおりだが、本作中にはいくつもシェイクスピアなどの文学作品(演劇作品)からの引用がある。あいにく詳しく分析する力量はないけれども、英国文学の詳しい知識があればきっと引用の部分ももっと深く味わえるのだと思う。それにしても、脅迫状に有用な、死をめぐる表現は、たくさんあるのだなと思った。作中に引用させるということは、あらためて調べたというよりも、著者がもともと愛好していた文学作品のなじみの表現を登場させたのではないかと、何となく想像する。それだけ著者が文学に愛着のあることが伝わってくるし、作品全体の格調高さにも貢献している。もちろん、引用が多くて、予備知識もなければ、著者においてけぼりにされているという感覚を持つ読者もいるのかもしれないが。
    また感想が無駄に長くなってしまったが、このシリーズの最大の魅力はやはり私立探偵コーデリア自身にあると思う。コーデリアの、傷ついている人に対し、犯罪者かどうかも無関係に手を差し伸べようとする姿勢は、理想主義的かもしれないが、やはり魅力的に思う。また、前作でもそうだったかもしれないが、誰も他に目撃者がいなくて証明が難しいが、確かに彼女だけが真実を知っている、という状況になったとき、その真実を受け止めて対処しようとする態度を見せる。真実であっても、明らかにしない方がいい場合もある。前作では、自分の理解が正しければ、一部を隠し通した。今回は、結局彼女が知っている真実を主張するか、あきらめて沈黙するかの選択肢の前で、真実を語っていこうという強い意志を示して終わる、ということだと理解した。そのように、ふつう、ミステリでは犯人が分かって、それでおしまいとなるところ、このシリーズでは、そのあとも闘いがあるように感じる。それに立ち向かっていくコーデリアは、やはり魅力的に映る。
    (あと、彼女はしばしばアクション映画さながらのフィジカルにハードな場面にも遭遇する…ちょっとかわいそうな気もするが。。)
    個人的には、これほどのキャラクターを創造したのに、著者が2作でやめてしまったのはなぜなのかを知りたいと思う。

  • 舞台設定も登場人物も殺人もお芝居を見ているようにリアリティのない感じだった。
    その中で唯一現実感があったのが女探偵のコーデリアで、殺人という残酷な現実が色々な小道具や証言で雲に巻かれていくのを彼女が必死に引き戻そうとしている。
    ラストもその攻防の続きが待っているような終わり方でスッキリしないけど、多分コーデリアは負けないと思う。

  • 4+
    物語はゆっくりとゆっくりと進んで行く。そして、じわじわと、染み入るように、心と頭に刻み込まれていく、欲望、打算、不安、焦燥、衝動、憎悪、計略、恐怖、悪意…。それらおよそネガティヴな思念とも言える困難に、敢然と立ち向かい、乗り越えんとする主人公の気高さよ。そのコントラストに、その完全な黒と白との対比に、そのいずれもが“皮膚の下の頭蓋骨”であることに、ちょっぴり感動している。前作を読んだときは大してどうとも思わなかったのだが、本作を読み終えた今、この主人公にちょっぴり感動している。いずれまた、2冊セットで再読したい。

  • 『女には向かない職業』のコーデリア・グレイが孤島で起きた女優殺害事件に挑むミステリー。

    丁寧を通り越して執拗と言ってもいいかもしれない描写や、一段落が非常に長いなど、決して読みやすい文章とは言えないと思うのですが、それでもこの重厚かつ端正な文体が自分には大好物らしくあまり苦も無く読んでいけました。

    孤島での事件とはいえ警察は事件の早い段階で介入してくるので、思っていたようなクローズドサークルものではなかったのですが、人間関係をつぶさに描いた作品に仕上がっていると思います。伝説が語り継がれる孤島や、脅迫状、大理石の手などさまざまな要素がふんだんに盛り込まれているあたりもミステリー好きとしてはうれしいところ。

    そしてラストの犯人とコーデリアの対決は迫力十分!
    結末も当時のミステリーから考えるとちょっと変わった趣向になっているようです。(解説の受け売りなのですが、そこを読んできちんと納得できました)
    そう考えると確かにミステリー作品の悪との対決という概念に新しい一石を投じた作品かもしれません。

    コーデリアシリーズはこれ以降、続編が出ていないらしくとても残念です。

  • 外国人作家の小説で最初に読んだ作品。
    ページ数や字が多いのでそれなりのスタミナを要求されますが、それだけに読み応えもあります(^ ^
    ただ、トリックよりも"人間の心の内(深層心理?)"に重点を置いている所があるので気が付いたら話の流れに置いて行かれてしまったという事が無い様にご注意を・・・・・・(多分、アンタだけ

  • コーデリア・グレイもの。全二作の二作目。『女には向かない職業』でひたむきな新米女探偵ぶりをドキドキしながら見守ったあとの二作目は孤島もの。
    前作から今作までにコーデリアはパートタイムで人を雇ったり、迷い猫探しをしたり。経営は厳しく、それでも1人で探偵事務所をやりくりしている。
    そんなところに持ち込まれた依頼が死を仄めかす脅迫状に怯える女優の身辺警護。コーデリアは古典劇が開かれる不気味な伝説のある孤島へ渡り、そこで女優は惨殺される…

    80年代を舞台にしているとはとても思えないというか、舞台も事件もまさに黄金時代の趣。不気味な小道具、なにを考えてるかわからない使用人たち、聖書やシェイクスピアやらの古典戯曲からのたくさんの引用に、極め付けは孤島のお城で起きる殺人!

    登場人物たち一人一人の背景をきっちり描写していてそれぞれの個性を完全に把握したところから事件が起こるので、翻訳物にありがちな「誰が誰やら?」みたいなことは起きない。このきっちりした描写がまだ『そして誰もいなくなった』を連想させて、現代の読者は時代がわからなくなる。。

    島に渡るまで、渡ってからも人間関係の描写やちょっとした冒険を通した過去の出来事の共有などで事件発生までかなりページがあり、無駄ではないんだけど若干冗長さは感じてしまって、読むのに時間がかかった。ダルグリッシュはもう少し出てくるのかなと期待したけどその期待は空振りに終わり。

    でも終盤解決に向けての盛り上がりと緊迫感はものすごく、読後の疲労感となんとも言えない脱力感は最高だった。巨大な悪へ立ち向かったコーデリア、結果はどうあれ読者はあなたを好きになるしかない。解決にある「無垢」な「修道女」的なコーデリア、『女には向かない職業』から時が経って擦れてしまったのではと思ったらとんでもない、頑ななピュアさを保ち続けている。コーデリアの物語をもっと読みたかったな。

    そして古典戯曲や聖書にもっと詳しればなあと英米ミステリを読むたびに思うのだった。読むか…?

  • 真ん中くらいまでコーデリアちゃんも登場人物の1人くらいの扱いでどうなるのかハラハラしていたら、後半は活躍してくれてよかった。今作もおしゃれでアンティークな雰囲気がよかった。シェイクスピアを始めとした古典や聖書を理解しているとより楽しめるんだろうなぁ。登場人物1人1人のキャラがしっかりしていたので途中までコーデリアちゃんが全然出てこなくても面白かった。
    結末は全然想像できない展開で衝撃。ストレスがやばかった。今回もなんやかんや最後にはダルグリッシュさんが出てきて助けてくれたりするのかな、と思っていたら全然だったというのも残念というか悔しい。まあそんなに上手い話もないんだろうけど。
    ミステリーだけど人間模様とか心理描写の方に重きが置かれている印象。
    コーデリアちゃんに幸あれ!

  • 私立探偵として自立する女性・コーデリア。自分と重ねて読んだ。

    「女には向かない職業」も大好きだけどこっちも大好き。コーデリアの潔癖、清純、無垢なイメージは、決して弱々しいものではなくて、凛として背筋を伸ばしながら悪に立ち向かう美しさを感じる。

    犬猫探しみたいな小さな仕事ばかりで、お金もそんなになくても、世間の評価に左右されず自分で下した決断を信じる美しさ。

    とても良かった。

  • 読みづらかった。言い回しが面倒くさい。
    ラストも、すっきりしない終わり方です。

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