ゴルフ場殺人事件 (ハヤカワ文庫 クリスティー文庫 2)

  • 早川書房
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感想 : 106
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  • Amazon.co.jp ・本 (419ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151300028

感想・レビュー・書評

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  •  ポアロ長編を読むのは二作目(昔読んだような気がするがあまり覚えていないのでカウント対象外とする)。この前に読んだ『スタイルズ荘~』はオーディオブックだったので、じっくり「読む」のは一作目。まだまだポアロ(そしてクリスティ)初心者です。

     今回の捜査現場にはジロー刑事という別の探偵もいるのだが、地面を這いつくばって現場を調査するジロー刑事を徹底して冷笑するポアロ(というか、クリスティ?)の態度が面白い。なりふり構わず猟犬のように地面を嗅ぎ回るのは、ホームズでおなじみのザ・名探偵スタイルだが、そんな美しくないことはしないというポアロ(クリスティ?)のエレガントさ。とある事情で逃がしてしまった事件関係者を、慌てて追いかけるようなこともしない。どこにいるとも知れない人物を大声で呼ばわって探したりもしない。もちろん、そうしなくて済むように手を打ってあったり、そうする必要がないことがすでにわかっていたりするからである。
     そして身なりはいつでもきちんとしている。普段はカッコつけてるエラリーが、事件に没頭しすぎるあまり髪も乱れたままとか、裸同然の格好であったとか、そういった隙を見せて売っていく(買うなよ)ようなやり方とは違う。
     若者たちの、若さゆえの悩みや過ちに対しては、「このポアロおじさんに話してごらんなさい」と寛大で慈悲深い。そう言ってしっかり重要人物から重要な言質を引き出しているその手腕も見事だが、特に本作では年の離れた友人としてヘイスティングズに見せた愛情深い態度は、見逃せないポイントだった。

     以下、覚え書き。
    ・これまた込み入った真相だった。殺人事件自体がかすむほど各人の思惑の絡まり合いにドラマがある。
    ・「愛する人のために罪をかぶる」はまあよくあるパターンだけど、誠実な弁護士さんかわいそうだった。
    ・フランスの裁判は若い美人には極めて寛大とか言われている。
    ・解説は、テレビドラマでポアロの声を演じた熊倉一雄さんによる談話。読者であると同時に、演じた人(スーシェさん)の吹き替えという立場からの話、面白い。

    • 111108さん
      akikobbさん♪
      ポアロ物つい口出ししてごめんなさい!
      エラリーの「隙を見せて売っていくやり方」笑
      ギャップ萌えですな〜ポアロが髪振り乱...
      akikobbさん♪
      ポアロ物つい口出ししてごめんなさい!
      エラリーの「隙を見せて売っていくやり方」笑
      ギャップ萌えですな〜ポアロが髪振り乱したりしたらただのおじさんになっちゃうから。
      あと恋に突っ走るヘイスティングズに優しいのはいいですよね♪
      2024/04/06
    • akikobbさん
      111108さん
      とんでもない、コメント嬉しいです♪
      ギャップ萌えですなあ、チョロい客です。
      オーディオブックで聞いたときはポアロはかなり大...
      111108さん
      とんでもない、コメント嬉しいです♪
      ギャップ萌えですなあ、チョロい客です。
      オーディオブックで聞いたときはポアロはかなり大仰で、エキセントリック系な印象を受けたのですが、今回は品があって頼もしく優しい紳士に見えました。
      ヘイスティングズは毎回恋に落ちるのでしょうか^^; 彼とポアロは良い関係ですね。
      2024/04/06
  • 南米で財を成し、今はフランスに居を構える富豪のポール・ルノーから、身の危険を感じるので助けて欲しいとの手紙がポアロに届く。
    早速、ヘイスティングスと迎うが、時すでに遅し。
    敷地に隣接するゴルフ場のバンカー予定地で刺殺された姿が発見されたばかりだった。

    うーん、ちょっと混み入った話が過ぎたかな。
    単に誰がなんのために殺したのかわからない、みんな怪しいという構図だけならすっきり楽しめたと思うのだが、狂言疑惑?やら時間のトリック?やら過去のいわくつき事件との関係?やらでなにを巡る事件なのかの目眩しが凄まじい。

    一年ちょっと前、当時小6の娘に読ませた後に、なかなかクリスティを手に取らなくなってしまったのも何となく頷けた。
    ちょっと小学生には難しかったな。
    それでもこの間読ませた『そし誰』では、「この人、天才」と言っていたので、クリスティにしても波や相性はあるものだと再認識。

    そんな中でも、ポワロが人間猟犬と評すジロー刑事と顔を合わせる都度いちいち繰り広げる舌戦や、何と言っても恋多き男ヘイスティングスの迂闊さがやっぱり面白い。
    どうしていつも君は自分の思い込みでそんなことをやらかしてしまうんだい!?といい意味で呆れ果てさせられる。

    次は『アクロイド殺し』。

    • 111108さん
      fukayanegiさん♪

      こちらもおじゃまします。
      当時小6の娘さんに勧めるにはガチャガチャした話でしたね。『アクロイド』ならいいかも‥...
      fukayanegiさん♪

      こちらもおじゃまします。
      当時小6の娘さんに勧めるにはガチャガチャした話でしたね。『アクロイド』ならいいかも‥というより、お父さんの英才教育ぶりが微笑ましいですね♪
      2024/04/06
    • fukayanegiさん
      111108さん

      そうですねー。
      やっぱり、中身はちゃんと精査しないとですかね。
      娘は『アクロイド殺し』は少年少女版みたいなので読了済みな...
      111108さん

      そうですねー。
      やっぱり、中身はちゃんと精査しないとですかね。
      娘は『アクロイド殺し』は少年少女版みたいなので読了済みなので、『ビッグ4』をお届け済なのですが、ずっと積読状態です。。。
      2024/04/06
  • ポアロシリーズ2作目です。
    冒頭で、ポアロがホームズの捜査方法を皮肉る場面があります。
    とはいえ、ポアロとヘイスティングスのやり取りは、ホームズとワトソンのそれに似ていてコミカルです。
    事件はかなり難解で、二重三重に罠が仕掛けられていますので、犯人は全く分かりませんでした。

  • まさかの犯人だった。1920年代?のイギリス、フランスの雰囲気も感じ取れて、面白い。

  • なかなか犯人に辿り着けなかったなぁ。
    真相のマトリョーシカみたい。

  • 名探偵ポアロのシリーズ2作目です。ポアロとヘイスティングズとの掛け合いが今作も面白かったです。ヘイスティングズは一見、迷走して事件を引っ掻き回しているように思えますが、物語が単調にならないような、またポアロの推理をより引き立てているキーパーソンのような役割を果たしているように思えました。ポアロも結構口では厳しいことを言ったりしますが、端々でヘイスティングズに対する愛が感じ取れて、良いコンビだと思います。

  • 2004年発行、早川書房のクリスティー文庫。最後の最後まで読み手としての私が右往左往してしまう作品。長編ではポアロの思考が全くわからない私だが、今回はよりさっぱりだった。ポアロの感情もわかるのだがもう少しヘイスティングズにやさしくしてほしいかな。

    あとがき:「ポアロとわたし」(俳優・声優)熊倉一雄、

  • アガサクリスティのポアロ第二作。序盤からヘイスティングスのなぜそこまで軽い感じでのめり込めるかわからない恋ネタから始まり、第一、第二の殺人が起きる。最期の大どんでん返しは面白かった。綿密な構成で読者を見事に欺いた感じ。

  •  クリスティの長編。ポアロシリーズ二作。ポアロの方針や探偵としての考え方を提示した作品。
     相方はヘイスティングス。
     ヘイスティングスは相変わらずロマンチストで、一種のお約束だ。再読により、ヘイスティングスのキャラクターに辟易している自分がおり、僕自身大人になったなぁと感慨に耽る。それにしても今回の彼はめちゃくちゃだが、子供を見守る様に俯瞰で見つめているポアロは大人だ。
     ストーリーとして、ポアロの元に富豪のルノーから自身のことについて調査依頼が届く。ヘイスティングスと共にフランスにあるジュヌヴィエーヴ荘に訪れるが、依頼人であるルノーが既に殺害されており、ポアロは殺人事件に乗り出す。という物だ。事件はジュヌヴィエーヴ荘を中心に広がり、過去に起きた似た様な方法の殺人事件、謎の第二の死体、ヘイスティングスが運命的な出会いをするシンデレラの招待等複数の謎が混ぜ合わされて構成されている。
     ポアロは人間自体が謎を解明する重要な物であると理解し、心理学的な観点と一つ一つの事実をロジカルに整理し組み合わせる事により真相を解明していくが、今回はその対比としてジロー警部が登場し、アクセントになっている。彼は猟犬の様に現場に這いつくばり様々な物を見つけて組み立てるが、ワンマン思考であり、ポアロに言わせれば想像性に欠ける。今回ポアロに打ち負かされた事で反省してくれれば良いが(笑)憎めないキャラクターだ。
     ネタバレ含むが、事件について強盗殺人と見せかけて実は偽装で、過去の殺人事件をしる脅迫者から逃げる為、偽装工作していたはずが実際に殺害されてしまう。犯人がつかまり、しかしどうも犯人では無さそうな中、一人の女性が自身か殺人を犯したと告白し、物語は決着したと思っていたが。そこから更にドンデン返しがあり、ポアロが冒頭に注意していた結末になる。やはりクリスティの構成力は見事だ。
     終始手に汗握り面白かったし、ジローをもう少し掘り下げて欲しかったが。やはりフーダニットに関してはクリスティはずば抜けており、真犯人の動機も納得のいく物だ。女性の恐ろしさがありありとわかる作品だ。
     今作も再読により印象が変わった作品だ。以前は翻訳も古い作品だったため、イメージが違っていたのだろう。しかしヘイスティングスの挙動がいちいち邪魔に感じてまい、いつになったらポアロを信頼するのだろうと思ってしまう。一方で今回彼は結婚し、ポアロおじさんはどれだけ愛に明るい人なのだろうと嬉しく思う。

  • シリーズ2作目。
    怪しい人がいっぱい出てくる。
    ヘイスティング本当に反省しろよ。
    なかなか本質がわからないように隠したトリックは見事。
    愛への忠誠。
    ジローも見事なかませ犬だった。
    過去は変えられない。

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