- Amazon.co.jp ・本 (463ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151300455
作品紹介・あらすじ
マープルは、かつてともに事件を解決した富豪の死を知る。その一週間後、「ある犯罪調査をしてほしい」と富豪が記した手紙が届く。だが、具体的な犯罪の内容については何も書かれていなかった。マープルは手紙の指示通り旅に出るが、そこには様々な思惑をもつ人々が待ちかまえていた。『カリブ海の秘密』の続篇。
感想・レビュー・書評
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『カリブ海の秘密』続編。ミス・マープルがカリブ海で知り合った富豪からの遺言で謎解きする。面白い仕掛けだが前作の回想シーンが何度も出てきて食傷気味。もうすっかりデキる探偵となったマープルが遠い存在になり少しさみしい。守護天使は良かった。
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ミス・マープルもの。
『カリブ海の秘密』の続篇といえる本作。
西インド諸島に滞在した時に知り合った、大金持ちのラフィール老人が死去し、彼の遺言にてミス・マープルに“ある犯罪調査をしてほしい”といった意味の依頼がされますが、具体的な内容は何も書かれていませんでした。何を調査するか不明なまま、ラフィール翁の手紙の指示に従ってバスツアーに参加するミス・マープル。
途中までは暗中模索状態のマープルさんですが、ツアー中に起きた“事故”をきっかけに、徐々に物事が動き出します。
そこで浮かび上がってきたのが、以前に起きた少女殺人事件と、ラフィール翁の息子との関わりについてで・・。
今回は秀逸なミステリであることは勿論なのですが、それ以上に“愛憎劇”といえる内容です。まさに“愛が過ぎた”故の悲劇でした。
犯人については、割と予想しやすかったと思いますが、“守護天使”は完全にやられました。ドッキリ(?)に引っかかったような気持ちです。
と、いう訳で今回もクリスティーにあんぐりさせられました。流石ですねー。 -
「カリブ海の秘密」の続編ともいうべき作品。
西インド諸島で共に事件を解決した大富豪の死を新聞で知ったミス・マープルは、しばし感慨にふけったいた。しかし、その大富豪から届いた手紙によって、詳細を知らされぬまま、とあるバス旅行へと誘われる。正義をなしてほしい、という願いを叶えるために。
登場人物表の半分近くをバスの乗客が占めているが、覚えなくても全然問題ないというところに苦笑い。バスツアーのくだりは、退屈なので正直脱落しそうになったが、三人姉妹と出会ってから「何をすべきなのか」がぼんやりと判明しだしてからは、ビックリするぐらい面白くなった。
実際使われたトリックそのものは、途中で気づいたけれど「誰が、なんのために」という部分で、ミスリードにまんまと引っかかってしまった。
最終章で卿や大臣といった名だたる男性陣に「今までに会った最高のこわい女」「たいへんやさしくて、たいへんに冷酷」と評されるミス・マープル。作者の価値観が見え隠れしてこれも面白い。 -
ミス・マープルがメネシス・復讐の女神となり解明。
核心は「愛」。若い男への若い女の「愛」、若い女への若い男の「愛」、若い娘を我が子のように慈しんだ夫人の「愛」。「愛」の形はそれぞれ違っていた。自分の思い通りの「愛」を押し通そうとした女性の、そしてそれに犠牲になった者の悲劇。
「カリブ海の秘密」でホテルで同宿し大佐殺しの解決に協力を求めた大富豪ラフィールが死んだ。そのラフィールはマープルにある犯罪を解決すれば2万ポンド遺贈するという遺言を残していた。ラフィールの遺言に従ってマープルは旅に出るが、その過程でラフィールの息子がからむ犯罪があきらかになり真の犯人を突き止める。
夫人は若死にしてしまった友人夫婦の子どもをひきとり育てる。その子が大人になり結婚したいといったときそれを受け入れられなかった。「わが子のように」育てていても、やはり友人の子はペットの犬だったのだと感じる。夫人の愛は偽りで自己中心的なものだ。本当の親子ならこういう犯罪はしないのでは、と思った。
1971発表
2004.1.15発行 2010.9.15第4刷 図書館 -
朦朧体の小品佳作。
いやー上手い。81歳にもかかわらず、ではない。81歳ならではの上手さだ。
ミス・マープルは『カリブ海の秘密』で知り合った億万長者ラフィール氏から奇妙な遺言を受け取る。ある捜査をあなたにお願いしたい、とあるがそれがなんの捜査なのか全くわからないのだ。後日ミス・マープルは生前のラフィール氏が手配していたバスツアーに参加し「そもそも何が起こったのか?」「誰がどのように疑わしいのか?」を探り始める。
これね、ラフィール氏がはっきり指示を出していたら三分の一の分量で終る話なんですよ。たいして複雑な事件ではないし、独創的な謎があるわけでもない。しかし、おぼろげな過去をぼんやりと探るこの手法はミス・マープルの記憶の衰えと絶妙にシンクロし、老人の意識の流れをとらえることに成功している。読んでいて心地いいのだ。クリスティーはどこまで意識して書いていたのだろう?やはり天才と呼ぶしかない。
もちろん全盛期の名作と比べればいろいろと落ちるところはあるわけです。バスツアーの参加者たちは生彩に欠けるし、殺人が起こっても全く緊迫感がない。ただ、老いたミス・マープルにはいまどきの人間はなかなか見分けがつかないのかもしれないし、人が殺されても大したことだとは思っていないからこういう淡白な描写になるのだとむりやり好意的に解釈できなくもない。(実際セント・メアリ・ミードでは殺人なんて日常茶飯事だろうし)
最近強姦がよく報じられるのは娘の親がそそのかすからだ、本当は和姦なのを強姦と言い張っているのだ、というまるで曽野綾子のようなおぞましい偏見にさえ私は目をつぶってしまいそうになるけど、さすがにこれはひいきの引き倒しだと認めざるをえません。ほんっと保守反動クソババアなんだから。
そして往年の引きの強さも健在。
「彼女は死にました……」
「どうして死んだんです?」
「愛です!」
えっ、愛ってどういうこと?
このメロドラマ性もクリスティーの魅力。
この事件の犯人の動機って『予告殺人』に通じるところありますよね。
シリーズの過去作の面々が再登場するのもうれしい。まず依頼人が『カリブ海の秘密』のラフィール氏。とある人物との再会もあり。『鏡は横にひび割れて』のチェリーはすっかりマープル家になじんでいる。よかったねえ。ミス・ナイトの名前もちらりと。ミス・マープルがふとバートラム・ホテルを思い出し「あそこはすばらしいホテルだったわ!……でももう忘れてしまわないと」とひとりごちる場面も。もちろん『バートラム・ホテルにて』の舞台です。そして思わぬところからサー・ヘンリー・クリザリングの名が!『火曜クラブ』『書斎の死体』『予告殺人』に登場する重要人物ですよ。いたれりつくせりのファンサービス。老女王に祝福あれ!
ただ『バートラム・ホテルにて』でも思ったけど乾信一郎さんの翻訳はちょっと雑じゃないですかね。大事な謎解きの場面でミス・マープルが「~だ。~があった。~した」としゃべるので興がそがれてしまいました。ミス・マープルはこんなしゃべり方しないよ。
あ、そうそう……これを忘れちゃいけない。クリスティーはやっぱり導入部が上手いんですよ。ある朝、いつものように新聞の訃報欄をじっくり読むミス・マープル。そこに見えたラフィール氏の名。あやふやな記憶をたぐりよせ、故人を偲び、また忘れる。それから奇妙な依頼が……というこの優雅な段取りだけで面白い。どうしてこんなに面白いんだろう?不思議。この人、一体何者なんだろうか。
おしまいにもにんまりしてしまう。あの昔風のミス・マープルが堂々と「依頼を受けたのはお金のため」と言い切り、報酬は使いきってしまいますと言い放つこの幸せな幕切れを、どうして愛さずにいられようか。
旧版は(S)さんの匿名解説。小林信彦を引きながら晩年のクリスティー(特に『バートラム・ホテルにて』『親指のうずき』)が「何が起こったのか?」を追求する作風に至ったと論じる。G・C・ラムゼイとクリスチアナ・ブランドを引いて作者のミス・マープルへの慈しみを語る。最後にミス・マープルシリーズ著作リスト。解説のお手本のような文章です。
新版は南波雅さんの解説。なんだこりゃ。なにも言ってないじゃないか。こんな気の抜けた駄文を書く方も書く方だけど、通す編集部も編集部だ。女王の御前にこんなもの並べて恥ずかしいと思わないの?
旧版の勝ちです。
クリスティー解説腕くらべ、たなぞう時代から数えてとうとう12年目。
絶対、絶対、完結させます! -
マープル
「カリブ海の秘密」の続篇。ただし、未読でも充分楽しめると思う。私はラフィール老人のキャラクターは覚えていたけれど、ストーリーはぼんやりしか覚えてないのでこの後再読してみよう。
だいへん面白かった!自分の場合、クリスティー作品は半分ほどまでは途切れ途切れに読み進めていて、後半になると引き込まれて一気に読むパターンが多いが、今作はすぐにワクワク読み進めるのが楽しかった。
クリスティー作品では他でもあった若く、可愛い、素敵な女性が、誰からも賛成されない男と熱烈な恋をして結婚しようとする、しかし分別ある大人たちではそれを止めることはできないというエピソード。現在(2021年10月)の日本国民の多くに苦い共感を起こさせるではないかな。
巻末の解説に三部作の2作目となる予定だったが、残念ながら第三作は発表されなかったとあり、興奮した。それは読んでみたかったな〜という気持ちと、でもこの作品でうまく収まっているのでは?という気持ちもある。ところが「アガサクリスティー完全攻略」を読むとどうやら三部作説の根拠が薄弱らしい。真相が気になるが、いずれにしても読めないからな〜。 -
正直、これを読むため『カリブ海』を読んだ。
単品でも楽しめるし、実はつながりはない。
でも、あの旅でマープルが感じた
死生観のようなものが
この作品にも漂っている気は少しする。
この時代にイギリスではもう
国内のパッケージツアーがあったのも驚き。
亡き富豪の要望で参加したマープルさん。
どうしても編み物セットは持ってくんですね(笑)
そして、殺人の動機はおそらく…。
さまざまな愛の形…クリスティーに垣根なし。 -
復讐の女神。アガサクリスティー先生の著書。アガサクリスティー先生の作品はどれも本当に楽しいです。時間を忘れて独特の世界観に引き込まれてしまう。