殺人は容易だ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 早川書房
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感想 : 38
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  • Amazon.co.jp ・本 (418ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151300790

感想・レビュー・書評

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  • 密かな連続殺人の犯人を警視庁に知らせに行く所だという老婦人と列車で乗り合わせたルーク。その翌日婦人も轢き逃げで亡くなった事を知り現場の村に乗り込むが‥。雰囲気はマープルに近いがあまりにも軽率なルークの行動と恋にハラハラ。

  • 植民地帰りの元警官・ルークは、列車で同席した老婦人から奇妙な話を聞いた。彼女の住む村で密かに殺人が起こっており、その犯人を突き止めたという。警視庁へ向かったはずの彼女は、なんとひき逃げで亡くなってしまい──。

    「殺人はとても容易なんですよ──だれにも疑われなければね。じつは問題の人物は、だれも疑ってみようともしないような人なのです」
    老婦人・ピンカートンのこのセリフが呪いのようについて回る。ルークは作家を装い潜入調査を試みる。噂話がすぐ広まる小さな村で、くすぶり続ける謎の正体とは。

    素人探偵ルークが協力を得たのは友人のいとこ・ブリジェット。村の有力者であるゴードン・ホイットフィールド卿の婚約者でもある。彼女とともに聞き取り調査を行うも、相変わらずの人物描写の巧みさに惑わされる。村人たちの言葉は真実か嘘か。人の心を覗き込むことほど難しいものはない。

    冒頭のルークのモノローグが面白くて好きになる。
    「イギリス!何年かぶりで帰ってきたイギリス!おれははたしてイギリスが好きになれるだろうか。」

    「イギリス!灰色の空と身を切るようなきびしい風の、六月のある日のイギリス。このような日のイギリスは、人を歓迎する気配すらなかった。おまけにあのイギリス人たち!ああ、なんという民族だ。どいつもこいつも今日の空のような灰色の顔──心配疲れしたような憂鬱の顔。そしてキノコのようにそこらじゅうに生えている家々。ちっぽけで粗末で、むなくその悪くなるような家ばかりだ。この地方一帯に立ち並ぶあの気どった鶏小屋みたいな家々!」

    ルークの言葉の方がイギリスの風よりも厳しくないか?と思わず笑ってしまう。そんな彼が老婦人が残した奇妙な謎を解くために奔走するのがいいよね。タイトルの意味もしっかり回収してくれてさすがの一言。

    個人的に馴染みのない名前が多くて覚えるのは大変だった(ピンカートン、ハンブルビー、ホイットフィールド、エルズワージー、ウェインフリートなど)。作中で情報をまとめてくれたりするので、だいぶ助かった感じ。調査や推理を明かすのは素人探偵ならではの面白さだなと。

    p.72
    「ぼくはつねづね思っているのですが、人生で当面する最も不愉快な事実の一つは、だれかが死ぬと、ほかのだれかが得をするという事実です──金銭的な意味だけではなくて」

  • ノンシリーズ。

    植民地帰りの元警官・ルークは、列車内で偶々同席した老婦人から彼女の住む村で連続殺人が行われていると聞かされます。翌日、その老婦人が車に引き殺され、さらに彼女が“次に殺されるかもしれない”と危惧していた医師が死亡したニュースを見たルークは、真相解明の為、件のウィッチウッド村に赴き、独自に調査を開始しますが・・・。

    “THE・英国の田舎の村”といった感じの、村人同士が互いを監視し合っているような閉塞感や、村人たちのクセの強さ等、小さい村ならではの“一筋縄ではいかない感”を書かせたら達人級のクリスティーですが、いかんせん登場人物が多くて、ルークの地道な聞き込み場面では何度も巻頭の登場人物紹介ページを見直してしまいました(汗)。
    そして、謎だった被害者同士を繋ぐ共通点・・所謂ミッシングリンクが明らかになったかと思いきや、巧妙なミスリードにまんまと騙されてしまい、後半のサスペンス的展開にはハラハラさせられました。
    それにしても、真犯人のサイコっぷりにはゾッとするものがありますね。
    因みに、クリスティー作品にちょいちょい登場するバトル警視が本書の終盤にちょっとだけ登場するのが何気に嬉しかったです。本当にちょっとだけですが(笑)。

    • 111108さん
      あやごぜさん、こんばんは。

      『ゼロ時間』から気になるバトル警視、ちょこっと登場なんですね。
      読みたくなりました〜!
      あやごぜさん、こんばんは。

      『ゼロ時間』から気になるバトル警視、ちょこっと登場なんですね。
      読みたくなりました〜!
      2022/05/17
    • あやごぜさん
      111108さん。コメントありがとうございます♪

      そうなんです~。『ゼロ時間』等でお馴染みの、いぶし銀キャラ・バトル警視がちょっとだけ...
      111108さん。コメントありがとうございます♪

      そうなんです~。『ゼロ時間』等でお馴染みの、いぶし銀キャラ・バトル警視がちょっとだけ登場でございます。
      一応登場人物紹介にバトル警視の名前が記載あるのですが、マジでチョイ役でした(苦笑)。
      本書は所謂「英国田舎もの」で、これまたクリスティーお得意の小さい村ならではの濃密な人間関係がお楽しみ(?)頂けるかと思いますので、良かったら、読んでみてくださいませ(^^♪

      111108さんは『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?』読まれたのですね♪
      こちらも、トミー&タペンスばりの冒険ミステリで面白いですよね~。
      同じ時期にクリスティーのノンシリーズを読むというシンクロが嬉しいです~(^^)
      2022/05/18
    • 111108さん
      あやごぜさんお返事ありがとうございます♪

      バトル警視がチョイ役というのは、ある意味贅沢な使い方ですよね⁈「キャラに頼らなくても面白い物書け...
      あやごぜさんお返事ありがとうございます♪

      バトル警視がチョイ役というのは、ある意味贅沢な使い方ですよね⁈「キャラに頼らなくても面白い物書けますけど?」みたいな(^-^)英国田舎の濃密な人間関係いいですね〜。読むの楽しみです♡

      そうなんです!『なぜ、エヴァンスに〜』はトミー&タペンスにそっくりだけど、ヒロインが超お嬢様で成立する所もあるのでこれはこれで楽しいです。極悪人は出てこず必ずハッピーエンドというクリスティーあるあるで、安心してお読みいただけますよ(´∀`)
      2022/05/18
  • クリスティの作品として、私の中ではほどほどの面白さでした。
    素人探偵ルーク氏がちょっと鈍臭くてイライラしてしまいました。

  • 田舎の社会における捜査のお話がメイン。何しろ死んでいる人数が多い。
    バトル刑事は登場するがちょっとだけ。バトル刑事って数作品で出てくるが、いつも主人公描写出ないなぁと改めて思う。

  • 赤毛の女が赤い帽子をかぶるはずがない、
    女なら自明の理だ…というロジックが印象に残った。

    私、茶髪の女性に茶色い帽子贈っちゃったことがあってさ。
    この本読むと心が痛いぜ。

  • ポンコツ探偵シリーズだから、主人公と彼女が殺されるんじゃないかと終始ハラハラした。犯人が「男」とは言ってないだろ!と思ってたので終盤はドヤ顔しながら読んだ。ゼロ時間に続くサイコパス系犯人で動機も同じだから驚いた。

  • 最後の最後にひっくり返されるとは思ってなかった。
    かつて愛したゴードンのために手伝っているのかと思いきや、犯人がまさかホノリアだっただなんて!
    いや、全然予想してなかった。

  • ☆3.7 読んで後悔はしない安心のクリスティ品質。
    まあ少し登場人物が多くて混乱しやすかったのと、「医者だから○○」という因果は少々こじつけではないかという点だけ気になった。ブリジェットの心変わりも唐突に感じたかな。
    ただミステリとしての構成はさすがで、フーダニットを見破ることは辛うじてできた(嬉しい)もののホワイダニットを詰めるには至らなかった。ある意味、ホワイダニットに着目すれば謎を見抜きやすいかも。間延びした箇所もなくはないが、それでも面白かったと言い切れる作品、クリスティはすごい。

  •  ミステリーにおいて物語の導入はとても大事な要素で、冒頭から惹き込まれると終盤まで一気に魅せられて怒涛の様に読み終えてしまう。そして、クリスティは冒頭の構成がとても上手で、終盤まで圧倒的なインパクトで読者に驚きを与える。
     今作では警察を引退している主人公ルークが、ロンドンに帰郷する列車の中で、とある老婦人と一緒になる。彼女は地元で連続殺人が起きており、それをロンドンの警察まで伝えにいく途中だと告げる。ルークは全く信じていなかったが、後日、その老婦人が車に轢かれて亡くなった事を知り、また、別の日には老婦人が次の被害者になり得ると心配していた医者が死亡した事を知る。ルークは事実を確かめる為に舞台となるウィッチウッドに向かう。
     サスペンス要素も多く、しかししっかりとミステリーとして読む事が出来る。クリスティの大量殺人は少ないが、彼女が大量殺人モノを描いたらこうなるというお手本の様な作品だ(そして誰もいなくなったは全く別のテーマだと思っている)。現代ではサイコパスや狂人等サスペンスやホラーによった作品も多いが、読み易さとバランス感は今作が頭抜けて面白いと思う。
     登場人物達は当然ながら怪しい人ばかりで、ルークはまるでおどろおどろしいウィッチウッドに生贄に向かった様な印象だ。今作でヒロインの役回りであるブリジェットについても、冒頭から信用せずに疑ってかかってしまう程、どんよりとした雰囲気をもつ作品だ。

     ルークは探偵役として行動力はとても高いが推理力は乏しい。読者と同じ目線という作品も多いが、どうやら僕は探偵が読者を置き去りにして、"ワトソン"が読者に寄り添うスタイルの方が好きなようだ。今作ではルークがほとんど全ての人物を疑ってかかる為、犯人に迫っていくスリリングなやり取りは感じられず、更には終盤にブリジェットがいきなり推理を覚醒させて、少し大雑把な印象だった。それであっても物語の始まり方、終盤のどんでん返し含めとても面白い作品だ。作中、様々な殺人事件があるわけだが、クリスティは作中よく、殺害方法の型の話をするが、今回、殺害方法が実は共通性がある事に感心してしまった。ピンカートンの事故から物語はスタートするが、実は彼女の死も共通性をきちんと持った殺人の一つだった。(バトルはおいしい所を調整する役目だった(笑))
     
     残念ながら、翻訳が機会的に思えてしまう部分があり、定型文の様なやり取りに見えた部分がある。余り翻訳を気にした事はないが、こういった影響があると学んだ。原文であれば更に面白いのであろう。
     

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