私が見たと蝿は言う (クラシック・セレクション) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 早川書房
3.25
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151746512

作品紹介・あらすじ

ロンドンの安アパートは、女流画家のケイ、評論家のテッドとその愛人メリッサ、建築家のチャーリーに、作家志望のナオミなど一癖も二癖もある住人揃い。ある日、フランスへ行くとアパートを出たナオミの部屋からピストルが発見された。みんなが不安を煽られたその矢先、ナオミ自身が射殺体でみつかり、容疑者にされたアパートの住人たちはそれぞれ勝手に推理しだす…二転三転する真相から目が離せないユーモラスな本格。

感想・レビュー・書評

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  • 【 全く古臭さを感じない 】

    原作が1945年に書かれたとは信じられない

    スルスルと読めた
    作品全体を見ても決して大きな波や山場があるわけでもない
    なのに一貫して一定の波長のまま楽しく読書ができた

    作品に古臭さを感じなかったのは何でだろう

    もちろん作中で描かれる時代背景や人々の営み、捜査方式や手法は現代社会とはまるで違う

    なのにへたな最近の小説より、よっぽど読書するリズムが心地よかった

    登場人物らの会話のテンポは理由の一つに上がるだろう

    きちんと登場人物1人ひとりの面倒くささ、傍目に見ている分には面白いが、いざこんな人が自分の隣人だったら厄介だな、
    そんな癖のあるキャラクター像が作られている

    しかも、その人物がなぜそんな人となりに落ち着いてしまったのかも何となく透けて見えてくる

    読者が脳内で容易にイメージできるだけの
    キャラクターのバックボーンの立て方が上手いんだ

    登場人物らが暮らすアパートと、その近隣の通り

    この極めて局所的なスポットにしか焦点は当てられない
    それでそのまま始まってそのまま終わる

    しかも、終わり方は非常に唐突で心地良い
    日本の小説のような長ったらしい語りを使ってさも店仕舞いだ、なんてものじゃない
    台詞で物語全体をぶつ切りにして終えるのは外国の小説特有で小気味よさすらある


  • 日本でフェラーズが幻の作家だった頃、代表作と言われていたこの本の翻訳が今ひとつだったせいで、つまらない作家の烙印を押されていた感がある、と言う人もいる。さあ、新訳はどうなのか。ロンドンの安いアパートでピストルが見つかり、その部屋に住むナオミが射殺死体で見つかると、アパートの住人たちはそれぞれ勝手に推理を始め、捜査はぐちゃぐちゃに…というユーモアミステリ。私が見たと蝿が言う、はマザーグースのクックロビンを殺したのはだあれ?の一節だが決してストーリーには関係ない。マザーグースではスズメが殺して、蝿が死体を見つけて、魚が血を受けて…と続くが関係者がわあわあ出てくるストーリーとダブらせているのだろう。フェラーズが人気のトビーのシリーズから脱却したくて書いた1作目だがあまり個性のない話になってしまった感はある。翻訳の問題ではないだろう。

  • タイトルからしてクラッシック。マザーグースの引用だが、タイトルだけでミステリの展開にほとんど絡んでこないのが残念だが、ミステリとしての出来は悪くない。思わせぶりな状況が延々と続くことにイライラする人もいるかもしれないが、そこがクラッシクの良さ。黄金期のミステリ好きにはたまらない。探偵役をもっと際立たせて名探偵っぽく描いていればもっと良くなっただろう。そうでないなら、もっともっとサスペンスを強く前面に出したほうがよかった。やや中途半端さが目立ってしまった感がある。

  • ケイの向かいの部屋にすむパメラの部屋で発見された拳銃。ガス工事の際に床下からの発見。パメラの前に住んでいたナオミの遺体発見。管理人のトヴィーが拾ったと言うネックレス。ケイに預けられたネックレスの盗難。ケイの部屋に残された怪しい取引に部屋を使っているフラワーの香水のにおい。事件に興味をもち首を突っ込むチャーリー。管理人トヴィーの遺体発見。それぞれに秘密を抱える住人たちの推理。

  • 前読んだ『猿来たりなば』がめちゃくちゃ面白かったんで期待してたんだけど、ちょっとがっかり。期待が過大だった。
    決してつまらなくはないけど、まあ普通の本格推理小説。技巧を凝らしているのはわかる。

  • 読み終わった後に、なるほどあれは読者に与えられたヒントだったのかといろいろ気づくことができる非常にオーソドックスで基本に忠実なミステリだった。今一つ登場人物が好きになれなかったのは残念。

  • 個性豊かな面々が暮らす安アパートの一部屋で拳銃が発見され、以前の住人だった若い女性が無惨にも殺されていたことが分かる。容疑者とされた住人たちは、誰が犯人かをそれぞれ推理し始めるが…。
    みんな事件に対して意見を持っているけれども、個人の主観による偏見や歪みが入っていて、どれも微妙に怪しいのが面白いです。
    特に他人の性格なんて、分かったつもりで全然分かっちゃいないんだなあ、と思いました。

  • ロンドンの安アパートの一室でピストルが発見され、住人も射殺体で見つかる。
    一癖も二癖もあるアパートの住人たちはそれぞれ勝手に推理を始めるが…。

    いかにもフェラーズ!と言う作品だった。
    登場人物の行動に笑っているうちにミステリ分部が膨らんでいき、思いもかけない落ちが待っている。
    きちんと伏線が張ってあるので犯人は途中で目星がつくのだけど、どたばたの中さてどうやって解決に持っていくのか、と言うのが読みどころ。
    冒頭から繋がるラストシーンの余韻がいい。
    そしてこのタイトルも。
    装丁も好みだ。

  • 1940年 ロンドン

  • マザーグースのタイトルに惹かれて手に取った。設定にゴージャス感のないクリスティみたい。すごく面白かった! 何人もの素人探偵が、それぞれに推理を披露するが、実はその中のひとりが…。この作家の他の本も読んでみたい。(2008-11-21)

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著者プロフィール

本名モーナ・ドリス・マクタガート。別名義にE.X.フェラーズ。1907年、ミャンマー、ヤンゴン生まれ。6歳の頃、英国へ移住し、ロンドン大学でジャーナリズムを専攻。1930年代にモーナ・マクタガート名義の普通小説で作家デビューし、ミステリ作家としては、「その死者の名は」(40)が処女作となる。英国推理作家協会(CWA)の創設メンバーとしてミステリの普及に尽力し、1977年にはCWA会長を務めた。代表作に「猿来たりなば」(42)、「カクテルパーティー」(55)など。95年死去。

「2020年 『亀は死を招く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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