プロフェッショナル〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕 (スペンサー・シリーズ)

  • 早川書房
3.58
  • (2)
  • (9)
  • (6)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 71
感想 : 8
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151786563

作品紹介・あらすじ

男は、ゲイリー・アイゼンハワーと名乗っていた。腕利きの強請屋だ。歳の離れた裕福な夫を持つ若妻たちを次々と誘惑し、その関係をばらされたくなければ大金を支払えと要求する。だが彼に脅された妻たちの依頼を受けたスペンサーは難なくゲイリーの正体を突き止めた。スペンサーの調査と交渉により事態は収束へ向かうかに見えたが、その矢先に予想もしなかった殺人が!自らに誇りを持つ男たちの美学を描き上げた注目作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  単に殺人事件の犯人を探して罰するということとは異なった次元で物語が展開されるのが、スペンサーシリーズの大きな特徴である。この作品は特にその色が濃いように感じられる。

     美しい人妻たちが金持ちで老いた夫に隠れて若い男と楽しみ、それを当の相手に恐喝されるという発端は、特に珍しいものではない。普通に考えれば、恐喝犯を捕まえて刑務所に入れるなり制裁を加えるなりすれば終わると思うのだけど、スペンサーはそうしない。ただ、悩むのである。どうするのが全員にとって一番望ましい解決になるのか考えてしまうのである。被害者より犯人側にある種の共感をしてしまうところに原因があるのだけど、読んでいると正直歯がゆい。

     後半、物語が大きく展開していくあたりからは、わりあいとんとん拍子に話が進んでいく感じで、 予想通りの結末ではあるけれど、それなりに気持ちもよかったし余韻が残った。ただ、作者自身が、前半から後半へと、登場人物に対する興味が変化してしまったのではないかと感じる。そのためか、前半と後半では、まるで別のドラマを見ているようなのである。前半は解決しないという解決に至る独立した作品で、後半はそこから生まれたスピン・オフのようにさえ感じられる。

     癖のある小説だと思うけれど、ある意味で実にこのシリーズらしい作品だと思う。シリーズの最初に読む本としては勧められないけれど、ファンにはあれこれと考えさせてくれる異色作のように思う。僕にとって最大の欠点は、スペンサーが惹かれる男を、 今回ばかりはどうしても好きになれないところだ。

  • アメリカの作家「ロバート・B・パーカー」のハードボイルド小説『プロフェッショナル(原題:The Professional)』を読みました。

    『昔日』に続き、「ロバート・B・パーカー」作品… 『初秋』以来、5作連続で「ロバート・B・パーカー」作品ですね。

    -----story-------------
    男は、「ゲイリー・アイゼンハワー」と名乗っていた。
    腕利きの強請屋だ。
    歳の離れた裕福な夫を持つ若妻たちを次々と誘惑し、その関係をばらされたくなければ大金を支払えと要求する。
    だが彼に脅された妻たちの依頼を受けた「スペンサー」は難なく「ゲイリー」の正体を突き止めた。
    「スペンサー」の調査と交渉により事態は収束へ向かうかに見えたが、その矢先に予想もしなかった殺人が!自らに誇りを持つ男たちの美学を描き上げた注目作。
    -----------------------

    私立探偵「スペンサー」を主人公とするシリーズ全39作品のうちの第37作にあたり、2009年(平成21年)に発表された作品です、、、

    裕福な夫を持つ、奔放な若妻たちと親密な関係を築いて、金を強請りとうろうとするジゴロにより、破局へと突き進む男女… 「スペンサー」シリーズで常にテーマとなっていた、男女の愛と行き違いを背景に、男の美学をほろ苦く謳いあげる作品です。


    歳の離れた裕福な夫を持つ、美しい4人の若妻たち… 彼女らは「ゲイリー・アイゼンハワー」という男に誘惑されて関係を持ったが、やがて「ゲイリー」は夫や世間に浮気をばらされたくなければ大金を払えと要求してきた、、、

    なんとかしてほしい、という4人の依頼を受け、強請屋「ゲイリー」を追い始めた「スペンサー」… しかし手を尽くして見つけた「ゲイリー」は悪びれることなく「趣味を仕事にしただけ」と語り、どこか一貫性のあるその生き方に「スペンサー」は意外な好感を抱く。

    それでも粘り強く調査と交渉を続けた「スペンサー」の努力により、事態は収束に向かうかに思われたが、その矢先、4人の妻たちのひとり「ベス・ジャクソン」の夫「チェット・ジャクソン」が何者かに殺される事件が… 遺産を相続した妻「ベス」は、「ゲイリー」とその恋人「エステル」と同居を始めるという思わぬ行動に出るが、間もなく次の被害者が、、、

    「エステル」が何者かに銃殺されたのだ… しかも、「エステル」の殺害に利用された銃は、「チェット」の殺害に利用された銃と同じ銃だった。

    二人の殺害に動機があるのは、二人の死により遺産と男を手中にした「ベス」はだが、彼女には二つの殺人事件において完璧なアリバイがあった… アリバイがあまりにも完璧なことに疑問を持った「スペンサー」は、「ベス」に疑いの目を向け、証拠をつかむために「ヴィニイ・モリス」を尾行につける。

    そして、「ヴィニイ」から、「チェット」の手下だった「ブー」と「ベス」が口論していたとの情報を得た「スペンサー」は、「ベス」が「ブー」を利用して、二人を殺害したと推理する… しかし、真相を掴む前に次の被害者が、、、

    「スペンサー」は「ブー」の相棒で保護者的な立場でもある「ゼル」を訪ねて、自らの推理を披露する… 「ベス」については、因果応報というか、復讐されても仕方ないだけの悪事を重ねていたので、同情の余地はありませんでしたが、騙されて利用された「ブー」の運命については、哀しさや虚しさを感じる展開でしたね。

    頭の悪いチンピラ「ブー」と、彼を世話している撃ち手の「ゼル」の間柄にも、心を撃たれるところがありましたね… 心を通い合わせることのできた男と男、業深き女たちの罪深い言動とは相容れない部分でしたね。


    以下、主な登場人物です。

    「スペンサー」
     私立探偵

    「スーザン・シルヴァマン」
     スペンサーの恋人

    「ホーク」
     スペンサーの相棒

    「エリザベス・ショー」
     依頼人

    「アビゲイル・ラーソン」
     依頼人。富豪の若妻

    「ベス・ジャクソン」
     依頼人。富豪の若妻

    「レジーナ・ハートリー」
     依頼人。富豪の若妻

    「ナンシー・シンクレア」
     依頼人。富豪の若妻

    「ゲイリー・アイゼンハワー」
     強請屋

    「エステル」
     スポーツ・トレーナー

    「クラリス・リチャードソン」
     女子大の学長

    「チェット・ジャクソン」
     ベスの夫

    「ゼル」
     チェットの手下

    「ブー」
     チェットの手下

    「トニイ・マーカス」
     ギャングのボス

    「ジュニア」
     トニイの手下

    「タイ・ボップ」
     トニイの手下

    「アーノルド」
     トニイの手下

    「ヴィニイ・モリス」
     ガンマン

    「マーティン・クワーク」
     ボストン市警の警部

    「フランク・ベルソン」
     ボストン市警の部長刑事

  • 久しぶりのスペンサー。いつもの名調子。最初に名作「初秋」を読んだのは、もう20年以上前。R.B.パーカーが亡くなって、この著者で読めるのはあと2冊。ちょっと寂しい。

  •  長期の読者じゃないと、登場人物の背景がわからない独特の世界。ストーリー展開もこれといって意外性もなく、全盛期の勢いがまるでなくなっている。

  • スペンサーシリーズの結構新しい巻。図書館で借りました。この頃読み始めたのでシリーズ初期の作品ばかり読んでいたので色々な意味で違和感。スペンサーじゃなくて作者が老成したと言うことか、と後書きを読んで気づきました。それにしても作者、亡くなられてたのですね。残念です。

    お話的にはどうしようもない袋小路な人間関係でスペンサーが片をつけたと言うより当事者が勝手に自滅しただけ、と言う感じでした。所詮、自分の事は自分で解決するしかないんだよなあ。あの学長のように。そう言う意味ではあまりすっきり解決、と言う感じではなく登場人物も好感を持てる人物が居ず(ぶっちゃけチェットが一番わかりやすく共感出来る)読後感も爽快ではありませんでした。

    海外版昼ドラとでも言うべきドラマを見てないのでそちらとの比較は出来ませんが昔からハーレクイーンロマンス小説とかは存在したのだし、日本だって昼ドラとかあったわけだし女性の欲求と言うものに対する創作物と言うのは昔からあったのではないかと個人的には思います。物語の主軸やシチュエーションは現代風になっているでしょうが。ただ、良妻賢母が今の時代にあっているとは思いませんが浮気を肯定されてしまうとじゃあ結婚ってなんだろう?という婚姻制度への疑問が出てきます。まあ割り切れる問題では無いのでしょうが。そう言う意味では結婚もしていない自分にはどっちらけ~と言うお話でした。

  • 読了【プロフェッショナル】ロバートBパーカー著スペンサーシリーズ37作目。久々に育ちの悪い女性がセレブを目指すがトラブルを起こしスペンサーが得意のお節介で事件を解決していくストーリー!ラストは哀しい結末だが37作も付き合ってるとそれも想定内。
    「ゼル」と云う名のヒットマンを味方に付けたスペンサーシリーズも、パーカー亡き後若い作家に引継がれるらしいが、望みはキッチリ終わらせてほしいという事かな!

  • スペンサー・シリーズの第三十七作目。

    初読 2012.3.23

  • 現代では全ての物事が複雑すぎて俺流のハードボイルドが通じないらしいです。単純な正義や暴力で片付く問題は無いらしく、やりきれない切なさが残った作品でした。後書きにスペンサーシリーズが他作家によって書き継がれる事を知って嬉しかったです。

全8件中 1 - 8件を表示

加賀山卓朗の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×