三分間の空隙【くうげき】 上 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 早川書房
4.04
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (462ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151821592

作品紹介・あらすじ

中南米の麻薬組織で窮地に立たされた潜入捜査官。彼を救う鍵はグレーンス警部――名作『三秒間の死角』に連なるシリーズ最高傑作

感想・レビュー・書評

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  •  ルースルンドの三秒間の死角の続編。前作で潜入工作員に仕立て上げられたホフマンが、今度はコロンビアの麻薬マフィアの中枢にはいり込み、自身が無情にもアメリカ政府から切り捨てられようとしたところを、数少ない理解者の助けを借りて、ほとんど単身で血路を開き脱出するという手に汗握るストーリー。表題にもなっているホフマンの周到な準備による計画も読みどころではあるが、味方の工作員ですら見殺しにする政権中枢に対し、職を賭して戦う数少ない人間たちのヒューマンドラマも大きな柱となっている。そしてわれらがグレーンス警部もその一員だ。しかし、やっとのことでスウェーデン帰国をはたしたホフマンの安息は続かないようで、このあと三時間、三日間と彼の話はさらに続くのだそうだ。

  • スウェーデンの作品の翻訳である。本作はストックホルム警察のエーヴェルト・グレーンス警部が活躍するシリーズの一冊ということになる。シリーズの途中から、凄腕の潜入捜査員であるピート・ホフマンが登場している。作品はグレーンス警部が主要視点人物になる部分、ホフマンが主要視点人物になる部分、その他の作中人物達が主要視点人物になる部分が織り交じって展開する。本作もその形が踏襲されており、ホフマンの部分とグレーンス警部の部分とが織り交じるようになって行く。
    本作の上巻ではこのグレーンス警部の出番は少し少ない。
    物語はコロンビアの様子から起こる。ストリートに生きる少年の様子が描かれる序章の後に本編が始まる。エル・メスティーゾと呼ばれる、コカインを方々に売るようなことをしているゲリラ組織の幹部の傍に、ボディーガードでもある側近の欧州人の姿が在る。「スウェーデン人」という意味のエル・スエコという通り名で知られ、北欧の何処かの国の出身らしいが詳しい素性は判らない。このエル・スエコという人物の正体がピート・ホフマンだ。
    スウェーデンを出国したホフマンは、ストックホルム警察の犯罪捜査部長であるエリック・ウィルソン警視正が国際研修で知り合った米国DEA(麻薬取締局)のスー・マスターソン長官の仕事を請けることになった。コロンビアの麻薬組織の情報を潜入捜査員として伝え、大規模な麻薬取引を阻み、コカインを精製するプラントを攻撃する手引きをしているのである。
    そういう他方、米国ではティモシー・クラウズ下院議長が、麻薬撲滅作戦を推し進めていた。クラウズ下院議長は麻薬に溺れてしまった娘を喪った経過が在る。他界した時に娘は24歳で、そういう悲劇の根を絶つべく、クラウズ下院議長は麻薬対策に努力し、コロンビアに展開した対策部隊の現場視察にも積極に出掛ける程に入れ込んでいた。
    そんな或る日、「問題」は生じた。現地視察をしていたクラウズ下院議長が誘拐されてしまい、生死不明になってしまった。米国政府は、トランプの13枚のカードに見立て、コカインを方々に売るようなことをしているゲリラ組織の幹部の名を挙げ、順次彼らを抹殺すると宣言した。その13枚のカードに見立てたリストに「エル・スエコ」が入っていた。

    米国のスー・マスターソン長官から報せを受けたエリック・ウィルソン警視正は驚き、何とかしたいと思う。そんな事案に取組もうとしていた時、酔っ払いとの揉め事が拗れて拘置所に入れられてしまったグレーンス警部を、上司として貰い受けるようにという妙な話しが生じる。グレーンス警部を貰い受けたウィルソン警視正は、グレーンス警部に頼むことにした。「エル・スエコ」ことホフマンの支援をである。

  • CL 2022.2.10-2022.2.14

  • キレイにオチて大団円、やっと普通のミステリらしくなってきた…と書きかけて気づいたが、1/4過ぎるまで主人公がまともに出てこないのを「普通」とは言わないかw 相変わらず、主人公同様に我が道を行くシリーズである。
    訳者あとがきによると、グレーンス警部にストックホルムの事件を捜査させてあれこれやらせるスタイルに、作者(たち)は限界を感じていたらしい。とすると、「三秒間の死角」の路線が一発ネタに終わらず、シリーズが変質していったのもむべなるかな。
    個人的には、前のスタイルのが好きなんだけどね。マッチョで嘘つきで根っから犯罪者(今作のラストシーンにはあきれた)のホフマンには、グレーンス以上に好感が持てないもんで。
    それが非現実的なまでに超人的な活躍をし、迷惑かけどおしの妻にはなぜか慕われてたりするんだから、これも一種のおっさんドリームなのかなと思う。辟易。

    2022/2/1〜2/2読了

  • 常に緊迫感がただよう
    下巻でまとめて

  • 展開がすごい

  • コロンビアマフィアの潜入捜査員で、スウェーデン人の元囚人が自らの命と家族を守るために必死の抵抗を行う。三秒間の・・・に続くシリーズ2作目です。海外作品にありがちな、カタカナ登場人物の多さや難解な言い回し等が無く軽快に読み進めます。翻訳も素晴らしく微に入り細に入り解りやすい。

  • 怖い、下巻を読むのもドキドキ。

  • 北欧の作家でありながら、なぜかアメリカの下院議長が重要なポジションを占める上に、ゲリラ側にスウェーデンの人間がいるという謎の設定。当初、そういう複雑な設定に馴染めず中々読み進まなかったが、読んでいるうちに、不思議の物語にはまってしまいました。

    それもしても、①アメリカ下院議長が麻薬戦争のための部隊を率いることがあるのか?、②DEAの潜入捜査のためスウェーデンの元犯罪者が使われることがあるのか?、この2点が若干腑に落ちません。特に①。下院議長は、アメリカ大統領の軽症権限第2位(副大統領の次)なのは周知のことですが、こういう実働部隊の責任者になることは無いんじゃないかな。

    上巻で物語が動き始めました。果たして下巻で、どうなるのか??

  • レビューは下巻にて。

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著者プロフィール

アンデシュ・ルースルンド 1961年生まれ。作家・ジャーナリスト。ヘルストレムとの共著『制裁』で最優秀北欧犯罪小説賞を受賞。

「2013年 『三秒間の死角 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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