●厚いそして重い。肩と腰に大ダメージ発生。その割りには・・・な小説。てっきり「幻想(ファンタジー)を多分に含んだ歴史ミステリ」ジャンルだと言う構えで読んでいたら、失敗しました。私が。
●ひとつ目のマイナスは、関東軍や満映を扱ってるわりに、その辺の登場人物が「らしくない」こと。残念なことに、書き割りの登場人物以上には見えませんでした。次に「音楽」。
この物語にはモーツァルトのオペラ『魔笛』が重要な役割を果たします。
音楽と文章は全く異なるものです。音楽を文章であらわすことも、文章で音楽をあらわすことも、本来、不可能なことなのです。
それでも、『死の泉』しかり、高野史緒の『ムジカ・マキーナ』『カント・アンジェリコ』しかり、行間から音楽が聞こえてくるような小説も一部には存在し得るのです。
音楽をモチーフとして扱う以上、この小説にもそれを目指して欲しかった。
この小説は、歌詞や台本に見られる言葉やストーリーを重要な素材として扱ってはいますが、音楽そのものへの執着がほとんど感じられません。
確かに、ポイントとなるのはストーリーであって音楽ではないのですが、それでも、もう少し音楽への愛情を見せて欲しかったと感じます。ないものねだりだとは思いますが。
●・・・そんなこんなで私めは、この小説がミステリから逸脱しているのかしてないのか、「幻想」に落ち着くのか「現実」に着地するのか、いろいろ疑いながら、読み通したわけでございます。
なんか作者の思うツボってカンジもしますが。
そして、たぶん作者がいちばん言いたかったと思われる探偵論だか何だかは、所詮ミステリファンではない私には届かずに終わったのでした(笑)
お話自体に酔えなかったからなあ。しょうがないでしょ。
逆に言えば、これはちゃんとした推理小説ファンが読んだら面白いんでしょうね。ですよね??