容赦なき牙 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152089540

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  • 09/8/14 ジェッシー・ストーン。7作目
    2020/10/02再読始める
    4○真実の愛がたどる道は:The course of true love never did run smooth. シェイクスピア『夏の夜の夢(A Midsummer Night's Dream)』Act 1 Scene 1。
    12○「おそらく」:この前に,「彼女が運んだのではない」「どこに運んだのか教えてくれるかも知れない」とクロウが言った。という内容の訳し漏れあり。
    15○私は女,吠え声を聞け: Helen Reddyの『I am woman』(1972)の冒頭部。I am woman, hear me roar。
    16○ Hasty Hathaway:『暗夜を渉る(Night Passage)』を参照。
    ○「約束だ。黙っていてよ,モル」:このあとに"Mum,"Molly said.あり。
    18○Rear-projection television:背面投射型テレビ。当時,比較的手頃な価格で購入できた大画面テレビディスプレイ技術の一種。
    19○滑り坂論法:slippery slope。あることをきっかけに,物事がどんどん悪い方向に進む危険性へ発展させる論法。
    20○harlequin sunglasses:たぶん,Altina Schinasiが制作したメガネフレーム。両端が上部でとがっている。
    ○腿をリズミカルに叩いていた。:Shave and a Haircut, Two Bits(ひげ剃りとカット25セント)のリズム。
    25○Alice Cooper:1948年~。男性。米国出身のミュージシャン、シンガーソングライター、俳優。たぶん,目の周りを黒く塗っているから,似ているとクロウは言ったのだろう。
    27○「あなたのように」:このあと,正確には「警察官には特権があるからこの仕事をしている」ジェッシイが言った。「特権?」「そう,好きなところに……」。
    ○それで,お前はお袋さんを殺してもらいたいのか?:原文:And he wants your old lady killed?
    29○パラダイス・ネックに通じる土手道の方へ向かった。:このあと,「彼は途中で立ち止まり、壁にもたれかかって海を見ながら、きれいな匂いを吸い込んだ」という意味の一文あり。
    33○Celotex:鉱物繊維が含まれ音響吸収機能がある断熱(天井)板,らしい。
    ○alcove:(部屋の壁の一部を引っ込ませて作った)小部屋。
    ○Cheese puffs:チーズまたはチーズ風味の粉末の混合物でコーティングされたコーンスナック。米国ではCheetosが代表的。
    ○サムの息子:David Richard Berkowitz。1953年生まれ。1976年から1977年にかけて、ニューヨークで6人を殺害し、8人に重軽傷を負わせた連続殺人犯。
    ○ジェッシイが片付けた二人組:警察署長ジェッシィ・ストーン シリーズ第4作『影に潜む』を参照。
    35○正直言って,そんなことに関心ない。:映画『風と共に去りぬ』の最後の場面。レット・バトラー(クラーク・ゲーブル)のせりふ。Frankly my dear,I don't give a damn.
    39○Pickup truck:密閉された運転席があり,後方に一段低い屋根のない荷台と後部開閉板があるトラック。
    42○38口径のチーフス・スペシアル:S&W M36。小型リボルバー。引っ掛かる部分が少なく、ホルスターから抜きやすい。Chief's Specialは1950年の発売当初の名称。ウィキペディア。
    ○crank:機械装置の一つ。往復運動を回転運動に、またはその逆に、変える装置。
    47○Bolt-action:、ボルト(遊底)を手動で操作することで弾薬の装填、排出を行う機構を有する銃の総称である。精密射撃に適した特性から、狙撃用、狩猟用、射撃競技用といった連射を重視しない用途では現在でも広く使われ続けている。ウィキペディア
    49○氷屋来たる:The Iceman Cometh。Eugene O'Neillによる戯曲。1946年にブロードウェイで初演。のち映画化された。
    52○「それは,糞ったれの嘘だぜ」:この前に「"That would crank everything up some,"Tremaine said.」あり。
    55○casserole:蒸し焼きなべ料理。蓋付きなべで時間をかけてオーブンで蒸す。
    ○私はアイルランドのカトリックの生まれよ:「生まれ」原文:heritage。モリイはともかく,親がアイルランド出身のカトリックということだろう。
    ○chop suey:八宝菜(のようなもの)。もやし、タマネギ、しいたけ、薄切り肉などをいためごま油で香りづけしたもの。中華風アメリカ料理であり、中華料理ではない。もとは広東語 雜碎から。
    56○Maker's Mark:Beam Suntoryのバーボン・ウイスキー。
    58○「ウィルソン・クロマティという男は知っているかね?」:この後,「知っています」「どこにいるか知っているか」という意味の会話あり。ということで,ジェシイはうそをついていない。
    60○「なぜですか?」:この前に「ふたたび沈黙。ふたたびジェッシイが彼女を促した」意の脱文あり。
    61○Jerry Springer:『ジェリー・スプリンガー・ショー』。ジェリー・スプリンガーが司会を務める「視聴者参加型トークショー」番組。ウィキペディア
    63○二車線の道路だった。:この後,「Traffic was slow.」あり。
    67○ナンバープレートの番号をひかえた」:この後「Got the other number from the rental company.」あり。
    71○Nissan Quest:1992年から2017年まで日産が製造したミニバン。初代はスライドドアは右側のみ。第2代目(1998年-2002年)以降、スライドドアが左右に装備された。
    ○お前が第一線だぞ:first in line. フランシスコを先頭に置け、という意味?
    ○後部座席の窓を開けっ放し:原文:They've left the slider open on the driver's-side backseat. slider=窓なのだろうか?slider=sliding doorなのではないか?前記したようにクエストはスライドドアの車である。訳者はスライドドアの車種が思い浮かばず、不自然だと思い、sliderを「窓」と解釈したのではないか?待考。
    ○Street Sweeper:RDI ストライカー12(RDI Striker 12)の別名。12ゲージ散弾銃(ショットガン)。または一度に10発以上発射できる散弾銃。

  • クロウ、闇社会に生きる男と警察署長男ジェッシイ、いいね。

  •  最近パーカーが書いているウエスタン小説との最短距離にいるシリーズは、ジェッシイ・ストーンの本シリーズだろう。スペンサー・シリーズとの相似点を常に感じながら、やはり、事件に対する捜査官としてよりも、ガンマンとしての空気を身に纏っているのがジェッシイという名のパラダイス署警察署長であるのだ。寡黙性、マッチョそうしたものが伺わせる気配のようなものも含めて、すべて。

     そんなジェッシイですら、カウンセリングを受けているのだから、根本的に情け容赦のないウエスタンとはやはり根本的に時代が違う、ということか。悩みの大部分が、離婚した妻への断ち難い思慕である。サニー・ランドルと分かれた理由もそうであったし、他の女性とのアバンチュールをそれ以上に発展させない理由もやはりそのことである。

     一方で、別れた妻ジェンを見るときにジェッシイは、どきどきしてしまう。それほどぞっこんな状態なのである。スペンサーがスーザンに対し無常の愛を感じ取るシーンとは、ほとんどそっくりと言っていい。タフな大の男が二人、揃いも揃ってめろめろになる女たちとは、一体?

     本書ではアフター・サニー・ランドルの物語として、とりわけジェンとの心理的な駆け引き、または孤独な葛藤が、カウンセリングを通して、ある種の回答に至ろうとするまでのサブ・ストーリーが描かれて顕著である。

     一方で、メインのストーリーの方は、かつてこのシリーズで最も活劇性の豊かだった作品『忍び寄る牙』で鮮やかな印象を残したクロウをスペシャル・ゲスト・スターとして迎える。あれほどジェッシイらと全面対決をやらかした犯罪者の側がどうしてパラダイスのような小さな町に戻ってくることができるのだろう。

     逃げた犯罪者は時効だと嘯き、警察署にジェッシイを訪ねてくる。フロリダの犯罪組織を束ねるルイスから依頼された娘探しの用件だ。全面的に狂ったようなストーリー展開なのである。

    ルイスの娘、アンバーという少女はいかれている。その母は酒で壊れかけている。母は射殺される。地元のチンピラ。アンバーは母殺しに協力している。父は母殺しを命じ、娘を連れ帰るようチンピラに命じる。クロウは、自律した判断ですべてを決める。ジェッシイとの協力体制が成立する。アンバーの奔放。チンピラの暴走。やってきたルイスの酷薄。

     全編を狂った冷血が漲る中、ジェッシイとクロウが何とクリーンな人間に見えることか。ジェッシイはまだいい。殺人者であるクロウまでが純潔に見えるところが、本書の不思議な面白さであり、作者の狙いである。

     思えば、この作者は沢山の殺し屋を、主人公の協力者として登場させる。スペンサーのシリーズでも然り。ホーク、ヴィニー、チョヨたち。サニーのシリーズでは暗黒街の鬼のような叔父フェリックスを協力者として登場させる。腐ったものに腐ったものをぶつける、といった構図ではない。殺し屋たちは利用される武器のように淡々と存在する。

     クロウは、そこへゆくと健全である。『忍び寄る牙』のときは人質の女たちを解放する。本書では、ルイスからの命令に背き、自己の規範を優先するとともに、誘発される対決を嬉々として待ち受ける。戦場に身を置きたがる。極度な刺激を求める。比較的健全でありながら、やはり病んでいる。

     人間味を捨てた連中と闘える喜びに身を投じるクロウ。事件の捜査よりもジェンとの距離のとり方の方に夢中になっているジェッシイ。いつもよりずっといびつな展開であるように見える。誰もが少しずつ病んでいる。悪党たちはもっとずっと病んでいる。でも最も重病と思われるのが、魂の壊れた少女アンバーであるように映る。悪玉から救い出しても、完全に救い出すことができそうもない精神のプリズナー。

     時代性という言葉だけでは納得のできない苦味が舌先に残る一編だ。

  • ジェッシイ・ストーン・シリーズ第7作。二作目「忍び寄る牙」の敵役、クロウが再登場。おいしいところを一人でかっさらっていく感じです。主役がすっかりかすんでいる・・・。

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