夜も昼も(ハヤカワ・ノヴェルズ)

  • 早川書房
3.23
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152091406

感想・レビュー・書評

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  • やっぱりパーカーはいいね、空気をかき分けるように読めていく。

  • ペーパーバックBerkley novelより、ことばが多い。後で、著者が削った?
    1○ミセス・ベッツィ・インガソル:原文「ベッツィ・」なし。
    2○最後の五年間は校長として:原文になし。おそらくペーパーバックの脱文。
    3○thong:ひも。Tバック。
    6○「誰にも話しちゃだめよ」:このあと,「"OK.""You can't tell anybody I even talked to you," Missy said.」あり。
    9○garrison colonial:二階建てで、正面は二階部分が張り出している。
    12○クロウが教えてくれた:前作『容赦なき牙』を参照。
    18○Langham Hotel:ボストンの金融街にある高級ホテル。
    ○stiletto heel:ハイヒールの一種。ヒールがstiletto(短剣)のように細く長い。
    20○キャディーのほうがしゃれているが酒のほうが手っ取り早い:Ogden Nashの詩『Reflections on Ice Breaking』(1931年)から。Candy Is Dandy But Liquor Is Quicker.
    28○Maker's Mark:バーボン・ウィスキー。
    ○Riesling:ドイツ産白ワイン。
    30○どうして話してしまったのかしら?:前作『容赦なき牙』に登場するクロウのことを言っているが,モリーが直接ジェッシイに話したことはなかったはず。
    30○指が平らな腹を叩いている。原文は、his fingers laced across his flat stomach.
    33○「先日娘の……」ジェッシイがうなづいた。:barkleyペーパーバックにこの部分なし。脱文か。
    36○ライトから速くいい球を返せるか:一般論なのだろうか? ではなぜ,ライトだけなのか?/オジー・スミスは遊撃手だった。ここのrightは右側,つまりサードよりの打球を,という意味ではないか?
    37○Italian sandwich:メイン州ポートランドのパン職人,Giovanni Amatoが1903年に作り始めたサンドイッチ。長いロールパンの間に,肉・チーズ・各種の野菜を挟む。
    40○私はカメラ:John Van Drutenによるブロードウェイの演劇。1951年初演。クリストファー・イシャーウッドの小説集『ベルリン物語(英語版)』の短編『さらばベルリン』の舞台化。
    ○french fries:フライド・ポテト。
    43○夜も昼も……俺だけだ:『Night And Day』の歌詞は「Night and day, you are the one」。ジェッシイは「I am the one.」と歌った。以下の「……太陽の下でも俺だけだ」も,元歌は「Only you」。
    53○Running board:車輌に乗り込むための踏み板。town truck,不明。町所有のトラック?
    55○Rowe's Wharf(波止場):Boston Harbor Hotelがあるがあることで有名。
    62○壁の一点に目を移し,座った。ジェッシイも一緒に座った。:「座った」:原文は「sat」。前任の菊池光氏は「じっとして動かなかった」というような訳をつけた。sit:to stay in one place for a long time, especially sitting down, doing nothing useful or helpful.
    65○手紙を取り出し,彼女に渡した。:このあと,「これは何?」彼女が言った。「読んで下さい」ジェッシイが言った。 という内容の文あり。
    ○「いずれにせよ,……なかなか考えられないものです」:このあと,Molly said.あり。
    69○George's Bank:マサチューセッツ州ケープコッド(米国)とノバスコシア州ケープセーブル島(カナダ)の間にある海底の大規模な隆起地帯。
    ○boatyard:ボートを製造・修理・保管する場所。
    ○Newburyport:マサチューセッツ州Essex郡の沿岸部にある。ボストンの北東56km。
    71○下着の下に。:原文はUnder my clothes.
    73○我々はこの世に生まれあの世に去る……:たぶん『リア王』第五幕第二場のエドガーの台詞から。

  •  アルコール中毒気味の警察署長が主人公のミステリ。事件と、主人公の個人的な生活の話が密接に絡み合ってくるのはよくあるパターンなのだけど、今作の場合はそれが大成功している、というよりも息苦しくなるほどである。

     結局、こういった小説にしてはびっくりするほどの小さな事件なのである。女性や子供の権利を侵害するということを、きちんと事件として取り上げるということ自体が珍しいと思うし、そのこと自体が、このシリーズの、そして主人公の特色と言っていい。こういうテーマを取り上げる作者の誠実さも好きだ。

     しかし、それにしても読んでいてつらくなる。すんなりと微笑むことができるようなラブストーリーがどこかへ行ってしまった時代の物語だからだろう。それでもみんなが幸せを求めていて、それなのに求め方さえわからないような時代だからなのだろう。タイトルの持っている意味合いが、心にずんと響いてくる。

     だからこそ、ラストシーンがすてきなんだけど、これはこのシリーズと、もうひとつのシリーズをきちんと読んでいないと、本当の意味で感動できないあたりがもったいないところ。

  •  パーカーの訃報を聞いて以来、一冊もパーカー作品が読めなくなっていた。死後に翻訳された新刊が続々書店に顔を見せるたびに必ず手に取り買い込んで来たのだが、もうこれで終わりなのかと思うと、それらを読んでしまい、終わりにする気になれなかった。

     でもいつまでもくよくよ嘆いている場合ではない。一期一会だ。今、ここにある本を読まねば。今日は、躊躇う手を書棚に泳がせた結果、ついに一年が経ってようやくパーカーの作品に再会したのである。

     本書はジェッシー・ストーンのシリーズ。パラダイスという田舎の警察署長というシリーズでありながら、本書は驚いたことに事件らしき事件がなかなか出てこない。女子校の校長がスカートをまくって全員のパンティを検査したことによる騒動から始まって、娘が両親のスワッピングに悩んでいることを打ち明けに来たり、その一方で覗き魔が横行したりもするが、いつものように何かの強盗事件が起こるとか殺人事件が発生するということがまずないのである。

     今回のテーマはいずれにせよセックスがらみの問題ばかりがジェッシーの元に寄せられている。

     その中で、ジェッシーの元妻ジェンは、ふたたびジェッシーを捨てて、ニューヨークの仕事と新しい男に向かって去ってしまう。毎度毎度、妻となぜセックスだけを重ねていつまでも未練を残しているのだろうとこちらがいやになるほどのジェッシーの思い切りの悪さだったが、本書はこのシリーズ開始以来の大テーマにも大きな転換を迫ることになる。

     いや、むしろそのために精神の旅を繰り広げてきたジェッシーが本書においては最後の航海を行うことになるのであり、田舎町で起こる様々なできごとは、ジェッシーの心模様を明確に切り分けるための材料であるかのようにさえ見えてくる。

     男と女という問題、子供たちの問題、そして警察署長という職業の問題。それぞれの問題をジェッシーが整理し、解決してゆくことがこの作品の読みどころであって、下手に犯罪が起こるよりもよほど読み応えのある一冊となっている。

     どこまで混沌としてゆくのだと不安さえ覚える展開を見事にまとめ切り裁いてゆくジェッシーのデリケートな手腕こそが本書の読みどころであり、ラストシーンはまさに新たな旅立ちのように思える。さらに一作翻訳作を残しているので、これを読むのがまさしく楽しみだ。

  • ジェッシイ・ストーン・シリーズ第8作。ジェッシイたちが中学校に呼ばれたのは、女性校長が女子生徒のスカートをめくらせ、「不適切な」下着をつけていないか検査した騒動のためだった。法律違反とはいえないが、少女たちの心は傷ついた。その際に会った少女が、両親がスワッピング・クラブで活動するのをやめさせてほしいとジェッシイに頼みにやってくる。成人が自由意思でスワッピングに参加することもまた、法律違反ではない。しかし、ジェッシイはこのままにしておけないと感じる。そんなある日、パラダイスにのぞき魔が出没し始めた。のぞき魔は“ナイトホーク”と名乗り、自己顕示欲に満ちた手紙をジェッシイに送りつけてくるようになる…凶悪犯罪ではないが、力弱い女性や子どもを軽んじ、辱めるこれらのトラブルに警察署長であるジェッシイはいかに対処するのか?そして軽犯罪に見えた事件はしだいにエスカレートし、ジェッシイの身近にもナイトホークの魔手が…。描かれる事件もさることながら、ジェッシイと別れた妻ジェン、そして、私立探偵サニー・ランドルとの関係は決着がつく・・・のか、興味深いところ。次回作Split Imageが最終作。

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