- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152094124
作品紹介・あらすじ
素肌改善、アンチエイジングから、人体改変まで――美容+医療を謳う革新的な企業コスメディック・ビッキーは、人々の美意識、そして生の在り方までを変えていくが……著者五年ぶりの最新連作集
感想・レビュー・書評
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女性はいつの時代も、いくつになっても、「美」を追求し続ける。
「化粧」をテーマにした近未来SF連作短編集は、「美容」と「医療」を融合させた「コスメディック・ビッキー」という企業を軸に展開していく。
第一話目は、コスメジプシーだった女子大生・天音が突然のひどい肌荒れをきっかけに、当時駆け出しの企業だったビッキーの『素肌改善プログラム』で桃の美肌を手に入れる。
日焼けしたように見せる人工皮膚のシャクドウ・ギア、画像を映すフィルム型アイシャドウなど、近未来のハイテクな化粧品が楽しい。様々な新商品を開発しながら知名度をあげていくビッキー。ビッキーと共に注目を集める、社長の娘でもある広告塔のカリスマモデル、山田リル。急激な業務拡張に、読む側も胡散臭さを感じずにはいられない。
アンチエイジング、整形、ドーピング…美や若さを追求する上で立ちはだかる様々な倫理観。自傷行為を表現の一つとみなす「リッパー」なる人々も現れる。理想の美を追い求めるほど、「身体変工」の割合が増えていくことに、どこまで突き詰めればいいのかと時に戸惑う人々。時代の流れに身をまかせ、躊躇せず己の理想を目指して邁進する人々。多種多様な欲望を実現していくビッキーは、さらに壮大な計画に向け突き進む。
そんな中、リルを襲った突然の事故。ここからリルを取り巻く状況もまた変化するのだが、やはりここでも胡散臭さを感じる部分が多々あり。アンチ側を煙に巻くビッキーの手法に、ただならぬ腹黒さを感じ、第一章で「もしかして…」とうっすら感じていた『素肌改善プログラム』に関してのモヤモヤは、最終章で的中する。
先進的な美容法が、幸せを生み出すのか…それは私にもわからない。でも…
「<化粧する文化>。これはもう、人類の遺伝子に刻み込まれているとしか思えないね。」
この一文には心から納得である。
効果的に挿入される「古代」のエピソードが、人類の「美」への目覚めを語っており、やがて現れる「巫女」的女性はある人物と重なるかのよう。未来と過去が交錯する最終章は壮大なフィナーレという感じで、お見事でした。女性だから描けるSF。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
化粧品(コスメ)と医学的(メディカル)を足した複合語<コスメディック>を社名にした巨大企業『コスメディック・ビッキー』とかかわる人々の話10篇。
想像力に欠ける私は、自分の美を追求していく話?としか考えが及ばず、1つ1つ読み進めていくたびに、思いもかけないところに連れて行かれる感覚に、夢中になって読み進めてました。
ビッキーの追い求めているものを知ろうとすればするほど
私もコントロールされてしまっているような恐さもあり…
ビッキーの商品をなにか試すとしたら、
私はステラノート入り香料と人工鰓かなぁと。
自分を嫌っていて、自信もないのに、
素肌改善プログラムやアンチエイジングを試そうと思わなかったのは
こんな姿でも何も手につかない程悩みぬいている訳でもなく、
少しは満足してたんだ…っていう発見がちょっと嬉しかったりもして。
化粧って、まさに「自分のため」
下手だからって言い訳して、自分と向き合うことを長年避けてきちゃったと反省する一冊です。
菅浩江さん、初めて読みました。
最後の『化粧歴程』が言葉の洪水で、今頭の中が整理できない状態ですが、読み応えがあり、睡眠時間を削って読んじゃいました。
他の作品も是非読んでみたいと思います。 -
美容整形のSF。
近未来の美容整形はこうなるんだろうなという予想。目線が女性感覚のため、ついて行けず。
どれも同じようで変化、トリックに欠け飽きる。 -
近未来SF
後から、あ〜、こうつながるんだあって思うところが結構あった。
でも根本的に気持ちが理解できない部分があるなあと言う感じです。 -
ひっさびさの菅さんの新刊ー!
おっもしろかった。
わたし自身はメイクには興味がなくて・・・自分の顔にもあんまり興味がない・・・スキンケアだけでもきちんとしておきたい、と思うくらいの人間でさえ、メイクアップ業界SFについて本作で出てくる化粧品、そう、装う品々について興味しんしんでいらずにはいられなかった。
どんどん技術が発達していくと、こういうのもありなのかな、という商品の作り。
そして、装う人間の意識についての洞察には、うなずくばかり。
最後の、名前のねたについては、おおおおおそういうことかー!と、そこで短編の全部がキレイにつながって一気に立体的に作品として立ち上がってきた。圧倒された。 -
SF
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人の美に対する情熱から人類の進化まで話が広がる連作短編集。
人工と天然の境界線が曖昧になる、気がする。