- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152096425
作品紹介・あらすじ
フェルメールが描いた女性の表情から、あなたは何が読みとれる? 名画の分析法を学ぶことで、バイアスのない観察力、大切な情報を引き出す質問力、正確な伝達力、失敗しない判断力を身につけよう。
感想・レビュー・書評
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"見る"がテーマの本。
読み進めると、普段どれだけ世界が見えていなかったかを痛感させられます。
無意識下で行われる"見る"という行為。
丁寧に紐解かれることでこの行為の持つ圧倒的なポテンシャルに気付かされる。
読む前と後で世界の見え方が180度変わります。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
社会で活躍していくためには違いを見つけることが大切で、それを磨く方法の一つが"客観的な観察力"である。
観察力は、すでに答えが分かっている、美術作品を観察することで鍛えることができる。と冒頭で述べ、様々な分野の芸術作品から、適切に観察する方法を伝えていく。
観察、分析、伝達、応用の4ステップで展開することで、ただ見るだけでなく、伝えるところまで書かれているところがこの本の特筆すべき点だ。
また、途中に、実践編として、作品から読み取る課題がいくつもある。大切なことを噛み砕いて伝えながらも、頭でっかちにならないように、使える知識になるように工夫が施されている。
観察力を鍛える上では、理論だけでなく、実践を伴って、少しずつ鍛錬していかなければならないことが、身に染みて分かる。そして、いかに自分は見ただけで、観察をしていないのかも…。
特に揺さぶられた箇所は、絵に何が足りないかを考えるところ。観察と言われれば、描かれているところばかりを見てしまうので、この視点を知ったときは、思わず目を見開いた。
観察力を磨きたい人にはもちろん、感性で絵を見るのもよいことだが、もう少し別の視点で捉えてみたい、と考えている人にも是非勧めたい。読み終えたあと、美術館で過ごす時間は倍以上になること間違いなし。 -
絵画の鑑賞方法を解説した本かと思っていたが違った。絵画や写真などを題材にして、物事を観察することの重要さ、観察したことの分析と、自分が知覚した事を伝えるコミュニケーション手段についてを解説する。仕事の役に立つのはもちろん、子どもに読ませて観察力を強化してあげたい。本書でも「見る」と「観察する」はまったく異なることだと主張し、観察することの重要性を説いている。すべてのページで大事なことが書かれており、とても濃厚な一冊となっている。翻訳もこなれていて読みやすい。本書を読み終えたあとは、周りの景色が違って見えるし、他人の行動もより客観的に見ることができる。世の中がつまらないと思っている人も読んだ方がいい。自分の回りがとてもカラフルでエキサイティングだと認識するだろう。いい本に出会った。
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邦題に「名画読解」とありますが、名画の読み解き方ではなく、アートを通して観察力を磨く方法がテーマです。
著者はFBI・CIAや大手企業 にアートを通じて観察力・分析力を高めるセミナーを行っています。本書にも様々な絵や写真がカラーで掲載されており、著者のセミナーを受けるのと同じような体験ができます。絵や写真を暫くの間見ていても全く気づかなかった事物の存在を知らされたり、見る人や立場によって見えるものが異なることを実感できたりと、発見が多く飽きることがありません。さらに見たものを伝達する際に事実だけに絞ることの難しさを、いくつかのワークを通じて教えてくれます。
これを読むと、美術鑑賞がさらに面白くなるとともに、仕事や人生に役立つ観察力の強化も狙えそうで、一粒で二度美味しい本です -
「知覚の技法」セミナー講師による
「観察力を磨く」ための本。
日常生活が毎日変わり映えしないなーと
感じてた時に感動した1冊。
「アートを教材にすれば、複雑な状況はもちろん、
一見すると単純だが実は深い意味を持つ場面も
分析できる。」
「大人になるということは、
複雑な世界の成り立ちに無感動になり、
斬新で、革新的で、緊急度の高いものだけに
目を奪われることでもある。」
観察力を磨くために多くの「気付き」を促し、
分かったつもりだけに
ならないよう趣向が凝らされている。
分析や伝達をテーマにしている本は多いけれど
観察がテーマの本は少ないし、押し付けがましくなく
誘導してくれるような構成に楽しんで読めた。
まさにセミナーを受講したかのよう。
アートはあくまでツールとしての位置付けだが、
この本を読んで「観察力」を意識して美術館に
行ってみたら思いのほか熱中してしまい、
気付けば3時間くらい経過していた。 -
借りたもの。
絵画鑑賞で養われる、観察力の有用性を事例を挙げて説く本。
それは自身の知覚に偏り(バイアス)があることを自覚し、客観的事実に基づくことを訓練するものだった。
美術の見方であったり、そのノウハウを紐解くようで、それに留まらない。
所々に、科学的な話――認知傾向を表す名称――についても取り上げ、裏付けがされている。
美術鑑賞は教養であり、日常とは異なるもの――非日常体験であり、息抜きである――という考えとは違う。
美術館賞は日常に役立つ能力――それは審美眼ではなく、観察眼――を鍛えるものとして著者は推奨する。
活かせる場所は陪審員であったり、夫婦関係(男女におけるすれ違いあるあるの解消)、ビジネス等……生活の全てである。
著者が提案する知覚セミナーの事例などを取り上げて言及されている。
美術館賞を通して、認知とその伝達方法を説明してゆく。その過程で昨今話題のフェイクニュース問題に通じる、気づきをくれる。
個人の経験や信条に基づく先入観、それにより見落としや、誤解が起こる、偏見が発生するということの……
人間の先入観の強固さは昔から指摘されているし、この本で紹介されている認知特性に関する情報で、私には目新しいものは無かった。
それを回避するための客観的な姿勢が必要であり、心得なければならない。
“ ルール一、バイアスを自覚し、悪いバイアスは排除する
ルール二、バイアスを事実と混同しない。バイアスは事実を見つける道具と心得る
ルール三、結論を第三者に聞いてもらう
(p.305)”
烏賀陽弘道『フェイクニュースの見分け方』( https://booklog.jp/item/1/410610721X )も参考になると思う。
知覚のバイアスに関しては、本田真美『医師のつくった「頭のよさ」テスト 認知特性から見た6つのパターン』( https://booklog.jp/item/1/4334036899 )に取り上げられたような、個々人の認知の差も影響していそうだ。
この本を読んで私が一番驚いたことは、マグリットの絵画を通して、描かれている“あるはずのないもの”を見つけるよりも、“描かれてないもの”を指摘するのは難しいと思ったことだった。 -
名画の見方ではなく、先入観によらずものごとをよく見ること、観察のやり方を学ぶために、題材としてアート作品を選んでいるというのが面白いです。
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アートについて見識深めるための一冊として、借りてみた。
メモ
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アートを観ることを通して観察力や注意力を向上させるという本。実際にFBIその他の研修もやっていて効果があるのが窺えるし、自分自身も見てるようで見ていないことが多々あるのを実感。
まずは観察。人が気づかないことに気づけるか。フィルターを意識し、憶測はせずに見たものを見たままに認識する。
次に分析。現場へ行き、五感を活用し、他者の意見に耳を傾ける。
そして伝達。見たものをそのまま描写するのは実は難しい。意識的に客観的な表現に徹し、思ったことではなく見たことを言葉にする。聞き手のことを考える。
また美術館に行った時に見方も変わってくるかなと思う。