ゲームの王国 下

著者 :
  • 早川書房
3.71
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本棚登録 : 541
感想 : 91
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152097019

感想・レビュー・書評

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  • 近未来の下巻に入り、物語は一気にスピードアップ。脳波を使ったゲームも荒唐無稽な感じがなく、リアリティーのあるSFとなっている。しかし小説としては上巻の出来が良いだけに下巻は雑さの目立つ小説になってしまった。ソリアとムイタックの結末も、なんだか肩すかしを食ったよう。
    上巻と下巻は別の小説と言っても良いくらいだ。

  • これはSF?
    様々な意味でのゲームを展開しつつ、ノンフィクションを交えた前半から、国の動乱で命を落とす者、生き延びる者がいて、最後は男女の物語に収束する。
    なぜだかわからないが、2人の物語にものすごく惹きつけられた。

  • 上巻からは打って変わった展開。結局
    誰が主人公だったのかよくわからなかった。
    SF成分は少なめな気がする。

  • 正直前半と後半は異なるテーマが走っていて、賛否が分かれてるようですが、後半も私は好きです。脳科学に基づく新しいゲーム。今後、小川さんの作品は追い続けることが決まりました。

  • 39:ポル・ポト、クメール・ルージュ時代の不安定なカンボジアで、潔癖すぎる少年と聡明すぎる少女が出会う。汚職、賄賂、不正に満ちた政治に憤る二人は「ゲーム」のルールを正しく定めるべくそれぞれの道を歩むが。
    ……というわけで、不正を正すためには権力が必要、権力を手にするためには不正な手段を取らざるを得ない状況で、多数の正義を選ぼうと手を汚したソリヤと、何かしら方法があるのではと考え続け、結果として待つばかりだったムイタックがプレイする「ゲームの王国」。読み始めたときは戸惑ったものの、輪ゴムや泥、鉄板などの「トンデモ」たち、アドゥやノイなど無残に死んでゆく市井の人々の目を通して描かれる歴史と時間は面白いの一言に尽きます。
    作中に登場する「人生」というシンプルなゲームが奥深い……。

  • 今までに読んだことのない小説。
    その面白さと、戸惑いを同時に感じた読書体験でした。

    上巻の、ヒリヒリした緊張感が持続する感じとは異なり、抽象的なルール、ゲーム描写を軸に物語が進行していきます。それについていくのが精一杯で、「読んでいて自分の中に湧き上がる感情を楽しむ」という感覚を、上巻の時ほど味わうことはできませんでした。

    独特の文章が展開する中で、僕が面白いと感じた部分は、「人が人に興味を持つ瞬間」が描かれているところです。

    物語に登場する興味深い人物たちが、どのようにして出会い、結びついていくのか。そのきっかけとなる瞬間が描かれているのです。人と人とが引かれ合っていく様子に、ワクワクしました。

    感情やゲームに関しての科学的・理系的な描写に加えて、登場人物たちの出会いを描写する文系的な要素が合わさる。SFというくくりで語られる物語としては当たり前のことかもしれませんが、そのバランスの絶妙さが、この本の魅力のひとつなのだと思いました。

  • 上巻から時が流れて、2000年代~2020年代の話です。カンボジアでは、まだ根の深い問題がありました。

    ソリヤは、ずっと“正義と公正が永久に続くような社会を作”るために、“自分の人生を捧げると決め”(p99)て生きていました。けれど、正しいことをするため、権力を持つために、正しくないことをしてきていました。

    ムイタックは、教授となり、脳波について研究していました。そして、彼は脳波を使ったブラクション・ゲームを作りました。

    ムイタックにとって、ソリヤは“親の仇で、友人の仇で、人生の敵(p335)”でした。それでも、ソリヤにゲームで負けた記憶が、ムイタックを世界に繋ぎとめていたのでした。

    そして、彼らは再び、ゲームで戦います。
    戦いながら、ムイタックは、ソリヤと“もう一度ゲームがしたかった”、ソリヤは“生きる意味そのものだった”(p344)のだと気付きます。

    過酷な環境で生きながら、尊い記憶を持ち続けた少年と少女の運命の物語、SFの枠にとどまらない作品でした。

  • この小説を「SF」と括ってしまうのはある種出版社の怠慢のような気がする。かといってではどういう括り方ができるかと問われると困ってしまうのであるが…。これこそが「SF」の懐の広さなのかもしれない。
    「ゲームの王国」とは、それぞれの心の持ち方であり、「大切なものは結局、いつものように自らの足元にある」と言うことなのだろうか?
    この物語は消して過去のカンボジアの話ではなく数年先のこの国の話のことなのかもしれない。

  • カンボジアを舞台にした近未来小説の下巻。

    上巻から30年後の現代から近未来のカンボジアの物語でした。
    上巻の村中虐殺という衝撃のラストを受けて、その後に死んだ者もいるのですが、生き残った主人公たちとその次世代の話がうまくつながっていました。
    登場人物紹介が下巻からのとなっていて、時々誰だったっけとなったので、上巻の登場人物も紹介しておいてほしかったです。
    また、下巻の登場人物で、日本人NPO、村長の娘など出てきただけでその後が回収されていないので、続編もありかな?と思ってしまいました。
    後半の後半でこの物語が主人公二人の愛憎物語であることがわかり、それで他の登場人物については放りっぱなしになったのかと納得しました。
    いずれにしても、掘り出し物の名作だったと思います。

  • これは評価が分かれる本でしょう。上巻は息詰まるようなポルポト政権下の人々の生活と争い。下巻は近未来のSF。すごい本です。面白いです。ただ、下巻の展開が上巻ではヒントもないので、裏切られたように感じる読者もいるのではないでしょうか。もちろん、ヒントがないからこそ、面白いというのもあるのですが。
    ゲームの王国、そのタイトルがふさわしい物語でした。

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著者プロフィール

1986年千葉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程退学。2015年『ユートロニカのこちら側』で、「ハヤカワSFコンテスト大賞」を受賞し、デビュー。17年『ゲームの王国』で、「山本周五郎賞」「日本SF大賞」を受賞。22年『君のクイズ』で、「日本推理作家協会賞」長編および連作短編集部門を受賞。23年『地図と拳』で、「直木賞」を受賞する。

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