地下鉄道

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (395ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152097309

感想・レビュー・書評

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  • アメリカ南部の綿花農場で奴隷として働くコーラ。彼女の母親は幼いコーラを置いて、農場からの脱走に成功する。コーラも少し大きくなってから脱走する。地下鉄道は奴隷を救うネットワークで、本書では本物の鉄道として描かれる。逃亡した奴隷を捕まえる輩がしつこくコーラを追いかけ、苦しい逃亡生活を過ごす。人種差別の恐ろしさを描く一方で、地下鉄道を運営する人々の暖かさや覚悟に、胸を打たれた。奴隷制度が廃止されたのって、歴史上の出来事かもしれないけど、写真が残るほど最近の出来事なんだよなと、時間軸を考えると、本作品のようにきっちりと奴隷制度について伝えていくことは意義がある。日本人は奴隷になったことはないし、奴隷を所有したこともない。ただし、アジア人(黄色人種)差別をされることは、海外にいくと大小あれど経験することだ。差別からの脱出を力強く描く本作品は、白人に是非読んでほしいし、我々アジア人も読んでおくべきだ。

  • ・奴隷の逃亡を助ける組織についての小説

  • コーラはランドル農園の奴隷だ。
    身よりはなく、仲間たちからは孤立し、主人は残虐きわまりない。
    ある日、新入りの奴隷に誘われ、彼女は逃亡しようと決意する。
    農園を抜け出し、暗い沼地を渡り、地下を疾走する列車に乗って、自由な北部へ…。しかし、そのあとを悪名高い奴隷狩り人リッジウェイが追っていた!
    歴史的事実を類まれな想像力で再構成し織り上げられた長篇小説。
    世界を圧倒した奴隷少女の逃亡譚。

    ピュリッツァー賞、全米図書賞、アーサー・C・クラーク賞、カーネギー・メダル・フォー・フィクション、シカゴ・トリビューン・ハートランド賞、レガシー・フィクション賞、インディーズ・チョイス・ブック・アワード受賞!ニューヨーク・タイムズ・ベストセラーAmazon.comが選ぶ2016年のNo.1。

  • これもまた奴隷制度をテーマにした小説。逃亡奴隷の少女とそれを追いかける奴隷狩り。実在はしない地下鉄道という逃亡のための鉄道を舞台にした物語。SF仕立ての本作は店舗もよく読みやすいが、ずっしり度は5にも引けを取らない。社会に対する批判を取り入れてくるあたりはこれぞアメリカという小説でもある。
    “『そしてアメリカも。アメリカこそが、もっともおおきな幻想である。白人種の者たちは信じている ― この土地を手に入れることが彼らの権利だと、心の底から信じているのだ。”に始まる演説がとても印象的でした。

  • 黒人奴隷の女性が働いていた農園から逃げ、奴隷を逃がすために秘密裏に建設された「地下鉄道」でいろいろなところに流れ着き、また追手に追われ・・はたして運命は。というストーリー。「迫害を受けた」みたいな思いをしていないせいか、あまり感情移入できなかった。
    ただ、実話ではないにしても、ここで語られるようなおぞましい行為が平然と行われていた歴史を忘れるべきではないだろう。

  • 壮絶。一部かなりグラフィック。だけどエンタメとしてもちゃんと面白い。

  • 現実と空想、そして過去と現在、それらが大きなうねりの中で渾然一体となる。単純な空想小説ではないし、単なる歴史小説でもない。一体と言いつつも、空想と現実の境目が曖昧という訳でもなく、史実的な物語と空想小説は扉一つのこちら側とあちら側とにきっちりと分断されている。その扉は地下へと続く扉。「地下」という言葉は物理的な意味であろうと観念的な意味であろうと、指し示すものに違いはない。隠されているということ。ただそれだけのこと。

    物語を貫くものは「逃亡」ということである筈だが、何から逃げているのかは徐々に変化し、曖昧になる。大きなテーマとしての「逃亡」は、行動としての「冒険」が意味するものと違いはなく、「地下」が観念的なそれであるように「逃亡」もまた観念的な意味合いばかりが増してくる。

    逃亡、あるいは冒険の過程で常に描かれるのは、見慣れたものと見慣れぬものとの対立。それとて白と思ったものが黒であったり、灰色であったり。主人公の中で芽生え育ってゆく倫理観が、幾つもの明暗の段階を刻んでゆく様が、もしかすると作家の一番書きたかったことなのだろうか。

    逃亡の物語の合間には、主人公に関わった人々の短いエピソードが挿し込まれている。翻訳家の言うようにこの短い物語は、主人公の視点からは見えない価値観を手際よく読むものに投げ掛ける。その価値観の違いが訴えるものは確かに重要だと思う。けれども、少々都合が良過ぎるようにも思う。全ての出来事に意味を見い出すことが当たり前だとは思えない。キリスト教的救済の構図が透けて見えるようでもある。

    対立する構図が現実の世界を席巻する今、こんなテーマを取り扱う小説を読むことは大切なことだと思う一方、対立の根源にあるものが人間という動物の闇の中に巣食う残虐性であるならば、浮世はなんと暮らしにくい所なのか、と改めて漱石のように嘆いてもみたくもなる。とはいえそれを避けたところで人でなしの国に行くしかないこともまた事実なのだけれど。

    何かもやもやとしたものが残る読書。それがきっと大切な何かを喚起するのだと信じつつ。

  • 1800年代のアメリカ南部の黒人奴隷制度がどんなものなのか、史実に則ったフィクションによってしることができた。
    産まれながらにして、日常の喜びや希望を奪われる辛さ、絶望に思いを馳せた

  • 訳し方にもう少し工夫があってもいい。

  • 文学

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