- Amazon.co.jp ・本 (418ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152097323
作品紹介・あらすじ
「科学史上、最も強力かつ危険な概念のひとつ」――ピュリッツァー賞を受けた医師が描く「遺伝子科学」の全貌とは? メンデルのエンドウマメは、いかにダーウィンに出会い、優生学の暗黒の歴史をへてゲノム編集へと発展したのか? 我々の未来を占う必読書。
感想・レビュー・書評
-
2018.8.26 amazon ¥1215-
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
何かを捉えようとした時、大きな軸は2つある。時間軸と空間軸。つまり歴史的な捉え方と、他の国や分野・領域との比較である。前著の『がん』もそうだったが、この『遺伝子』も、まず時間軸によって、歴史的文脈に位置付け、さらに、その時代、時代の中で、政治的、文化的、技術的な文脈の中での位置付けが続く。大きなテーマを、立体的に捉えさせてくれる。解説にあった、アイスランドでは、誕生前遺伝子診断によって、ダウン症の子どもが産まれなくなったというのは驚き。大々的な施策ではなく、こういう静かに進む「新優生学」は恐ろしい感じもする(良し悪しは、スパッとはいかないだろうが・・・)。
-
遺伝について、優生学的知見なども踏まえながら綿密な論理を紡いでいる。統合失調症の遺伝は、この本の結論としては世代から世代への遺伝は複雑で、確率としては遺伝するが、新しい世代が誕生するたびに遺伝子は混じり合い、新たに組み合わされるため、父親母親とまったく同じ遺伝子変異の組み合わせを受け継ぐ可能性はとても低い。この点の指摘が面白かった。
-
「遺伝子 ─親密なる人類史─ (下)」(シッダールタ・ムカジー :仲野 徹監修/田中 文 訳)を読んだ。
『遺伝子検査は道徳の検査でもある。(中略)どんな未来なら覚悟してもいいか?』(本文より)
考えれば考えるほど怖い言葉だな。
この先誰が舵を握るにしても監視が必要だぞ。
あー面白かった。 -
シッダール・ムカジー「遺伝子(下)」読了。遺伝子の歴史は単に科学の側面だけで語れるものでない事がよくわかった。優生学に端を発し政治や戦争に影響を与えた事、ジェネンティック社の成功からのビジネスとの関与等から、我々の設計図である遺伝子のインパクトの強さに大変驚いた。
-
私はかねてから論理的な解説や表現は日本人よりも白人の方が優れていると考えてきたがどうやら違った。シッダールタ・ムカジーはインド人である。すなわち論理の優位性は英語にあったのだ。私の迷妄を打ち破ってくれただけでも今年読んだ中では断トツの1位である。
https://sessendo.blogspot.com/2019/08/blog-post_21.html -
-
長かった...。
本書は、本読みでも有名な中野徹さんが監修し、解説も書いてくれている。
ということで下巻のレビューとしては、長めの解説について書いてみよう。
メンデルから始まり「遺伝子の伝記はたかだか一世紀半の長さでしかない。しかし、その間に、遺伝子の概念は変遷し、物質基盤や制御機構が次々と明らかになり、自在に操ることすら可能になってきた」と語る。本書はこの歴史を描いたものなのだけれども、いかにも長い。
もしかしたら、この解説を読めばその筋はおおよそわかるかもしれない。
仲野さんは、現在の遺伝子工学の発展の先に、「新優生学」- 個人の要望により、遺伝子を選別し、操作する - が始まることを想像する。そのことの是非を、われわれは判断することができるのかどうか、出生前診断が広く行われている状況において、どこに線を引くべきなのだろうか。
仲野さんは、人類はいずれ遺伝子操作によって幸福を求めるようになるのではと書く『ホモ・デウス』からその最後の言葉を引用する。
「私たちが直面している真の疑問は、『私たちは何になりたいのか?』ではなく、『私たちは何を望みたいのか?』かもしれない」
仲野さんは「私たちは何を望みたいのか?」について考えてもらいたいと、書く。さて、欲望を私たちは望み通りに持つことができるのだろうか。自分にはユヴァル・ノラ・ハラリの言葉は未来の希望や期待というよりも、さらに深い問いのように思われる。