同志少女よ、敵を撃て

著者 :
  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152100641

感想・レビュー・書評

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  • 究極の選択を迫られたセラフィマは戦うことを誓う。復讐のため、敵を倒すため。旧ソ連に実在した女性スナイパーの生涯を元に描かれたとのこと。今、まさにリアルで重みのある戦争小説でした。
    本当の敵とは。敵の対象に変化が訪れるセラフィマの心の機微に引き込まれていきました。
    怒りから選んだ道ではあるが、狙撃に魅了され、沢山の死に直面しながらもだんだん歪んでいく様が恐ろしく、辛かった。平時ならしないこともする。戦争は人の内面を変えてしまう。撃たなければ自分がやられてしまう。
    敵兵を一人撃つことは、無数の味方を救う事、それを誇れ、と。そういう世界なのだ。
    敵を撃つときお前たちは何も思うな、何も考えるな、考えるなとは、考えてはいけない。ただ純粋に技術に身を置き、何も感じずに敵を撃てそして起点へと戻ってこい。これぞ命がけの極限下での兵士の心理描写に舌を巻く。また、女性が虐げられて当然という時代背景が悲しい。空前の独ソ戦の苛烈な戦い。なぜソ連は女性狙撃手が参加するか、という疑問も解り、世界史が苦手なので勉強になった。
    イリーナへの心の変化やスナイパー仲間たちとの友情。女の子らしい一面あり、悲しさありで、それぞれ個性に富んだ登場人物の描かれ方が良かった。

    最初の狙撃訓練のシーンから、狙撃の緊迫した臨場感が凄かった。銃声の音が聞こえてくるようだった。
    日々、報道される現実を目の当たりにし、誰がどういう気持ちで戦っているか触れることが出来た。実際は違う部分があるにしても。今、この時期読めて良かった。

  • 独ソ戦について書いている物語を読むことが、初めてなのでとても興味があり、引き込まれるように読んだ。
    1942年、モスクワ近郊のイワノフスカヤ村に暮らす少女セラフィマの日常は、急襲したドイツ軍によって、母親や村人たちを惨殺されることで一変してしまった。
    自らも射殺される寸前、赤軍の女性兵士イリーナに救われる。
    「戦いたいか、死にたいか」ーそう問われて。
    彼女は、一流の狙撃兵になることを決意する。

    同じ境遇で家族を喪い、戦うことを選んだ女性狙撃兵たちとともに訓練を重ねて、スターリングラードの前線へと向かう。

    彼女の心の内は…
    幾つもの怒り、悲しみ、迷い、慟哭、すべてが描かれていたように思った。

    戦争の理不尽さを改めて思い知らされた。
    喪失感や絶望感に襲われながらも逃げることができない。
    体験したものにしかわからないだろう過酷さを彼女を通して知った。

  •  小説の舞台は、独ソ戦で―「昨日、突如として始まったドイツによるソ連侵攻」と書いています。

     戦争に至るまでの経緯に必然性があり、当時(一九四一年六月)は、独ソ不可侵条約が結ばれていたのにもかかわらず、一方的に、ソ連に侵攻してきたという。ソ連はスターリン共産党路線の恐怖政権の時代だったし、ドイツはヒトラーを「ファシスト」だと詰っていたことを考慮すると、如何にもという感が拭えない。
     読む前に著者は何故この独ソ戦を物語として選んだのか。双方に多くの犠牲者が出たことを考えると、嫌悪感が否めなかった。激戦による悲壮感を強調したかったのか?そして、この作品が売れているのはどうしてなのかと思っていた。

     物語の始まりは、主人公少女セラフィマが母エカチェリーナに連れられて、山へ鹿狩りに行っていた。鹿狩りは、村の農産物の食害から守るためで、母は銃の使い手、セラフィマは母から取り扱いを教えてもらい初めて鹿を仕留めることが出来た。

     母娘が帰路の途中で、自宅があるイワノフスカヤ村へドイツ軍が急襲し、大声でドイツ兵達が怒鳴っている声が聞こえた。村人が並ばされて次々と銃で殺害され死体の山が出来る光景を垣間見て、母が銃を取り腹ばいになり狙いを定めて撃とうとした瞬間、ドイツ軍の誰かに狙撃され落命した。

     セラフィマは秋になればモスクワの大学へ進学する予定だったが、ドイツ兵に見つけられ、母の遺体とともに建物に連れ込まれ暴行を受けるところ、赤軍のソ連兵達が来てドイツ軍は逃げて行った。しかしソ連兵は後々のことを考えると村を焼き払うという。

     おそろしく美しい女性兵士はセラフィマに問うた。「戦いたいか、死にたいか」と。
     「死にたい」と答えたが、母の遺体にガソリンをかけられ亡骸は炎に包まれた。
     「やめてください」
     「頼めば相手がやめると思うか、お前はそうやって、ナチにも命乞いしたいのか」
     「お前は戦うのか、死ぬのか!」
     「殺す!」セラフィマは答えた(中略)女性兵士イリーナ「よろしくね、今日から君は私の教え子だ」

     敵を討つ!その言葉に自らの悲しみが収斂されていくのを感じたという。悲しみが殺意と復讐に変わった瞬間でもある。

     セラフィマはソ連軍の女性狙撃兵訓練学校を経て、過酷な戦場へイリーナ教官と同志とともに向かう。数奇な運命と、この世の地獄を見ることになる。

     著者は平和を愛し、戦争と戦争犯罪を憎んでいるという。単なる戦争小説ではなかった。誤解の無いよう最後まで読んで欲しい。
     読書は楽しい。

  • 戦争と女性、の一冊。

    ドイツとソ連を結ぶ…外交官への夢が突如奪われた一人の少女の女性兵士としての選択、決意、戦争なるものを描いた物語。

    日本人作家さんが描く独ソ戦。

    この臨場感溢れる描写、引き金をひく瞬間の緊張感に圧倒され、まさに自分がその舞台に放り込まれ同化したかのような錯覚に陥るほどだった。

    そして狙撃兵として生きる少女達、それぞれの胸に抱える想い、常に何のために戦うのかを心に問わざるを得ない日々は力強く心に沈み込む。

    女性兵士として生きた少女、女性の心を余すことなく描き最後まで戦争の理不尽さが胸を打つ秀作。

  • 図書館から予約の順番待ちがまわってきたと召集がかかり戦地へ行ってまいりました(`・ω・´)ゞ
    独ソ戦の転換点となるスターリングラードの前線へ!

    物語はドイツ軍によって母親を殺され、村を焼かれた少女セラフィマが復讐の為に一流の狙撃兵になることを決意し戦い抜いていく

    ドイツ軍に自らも射殺される寸前、女性兵士イリーナに救われ、そして問われる
    「お前は戦いたいか、それとも死にたいか!」

    ここからセラフィマの狙撃手としての道が始まる
    狙撃手は「一ヵ所に留まるな。自分だけが賢いと思うな。自分の弾が最後だと思うな。」
    狙撃手としての承知の鉄則を忘れるな
    鉄則を忘れたものは戦場では死を意味する

    そして、「狙撃手は自分の物語を持つ。誰もが・・・。相手の物語を理解する者が勝つ」

    狙撃手のいろはを身につけたセラフィマの戦い、そして復讐は・・・

    これは間違いなく大作です!

    戦争は街を焼き、村を焼き、強奪し、女を犯し、捕虜を大量虐殺し、子どもまでを殺す
    決して許される行為ではない!
    戦争には人間を悪魔にしてしまう性質がある

    戦争についても考えさせられる作品である

    同志諸君に問う!
    「あなたはこの作品を読みたいか、読みたくないのか!」

    • mihiroさん
      aoiさ〜ん、行ってきます\♡︎/
      ありがとうございます(*^_^*)
      aoiさ〜ん、行ってきます\♡︎/
      ありがとうございます(*^_^*)
      2023/02/22
    • 1Q84O1さん
      aoiさん、無事生還しました!
      aoi隊長の助言のおかげです!
      とにかく訓練ですw

      同志mihiro、戦地では決して気を抜かないように!
      ...
      aoiさん、無事生還しました!
      aoi隊長の助言のおかげです!
      とにかく訓練ですw

      同志mihiro、戦地では決して気を抜かないように!
      そして一ヵ所に留まるな!
      撃たれるぞ!
      必ず生還すること!
      これは命令だ!w
      2023/02/22
    • mihiroさん
      あはは〜ꉂꉂ(ˊᗜˋ*)ʬʬ
      気を抜かず無事生還しますね〜!
      あはは〜ꉂꉂ(ˊᗜˋ*)ʬʬ
      気を抜かず無事生還しますね〜!
      2023/02/22
  • 読み応えがあり、面白かった。
    もっと冷たい終わり方を予想していたが、イリーナと共に暮らすという思ったよりほっこりした終わり方で、これはこれで物語らしく読後感が良かった。
    セラフィマもかっこよかったが、シャルロッタは途中経過で弱い姿を見せながらも戦後も明るい調子を持ち続けており、後になって一番強くて凄いキャラクターだったのだなと思った。

    事の起こりではイリーナが鬼畜すぎて、そりゃあ殺したくもなるわとセラフィマを応援しつつ話に没入。狙撃兵女性の養成所が始まり、イリーナの距離を当てるテストが、卒業時にも行われて込み上げるものがあった。そして、卒業後もふと養成所生活を思い出す時にはそのテストのやりとりが思い浮かび、たまらない。

    サンドラが実にややこしい問題を持ち込み、主人公と共にため息をつきながら読んでいたが、最後までなんともいえない存在だった。
    ヤーナはママと呼ばれながら、子供は敵味方関係なく救いたいと行動し負傷したが、普通なら死んでいて当然なのに、生き残ったのは運が良すぎる感じはした。オリガも複雑な立ち位置だったが、性格が豹変するところは面白く、以降は潔く、みていてすっきりした。


    「安心しろ。お前らなんて殺しても経歴に傷がつくだけだ。私の敵は雑魚じゃない。私の女らしさが知りたいならな、今夜私の部屋に来い。不安なら銃を持ってでも来るがいいさ」
    セラフィマは最後に笑って瞬きした。
    「私なりの女らしさを知ったお前の死体が、明日その辺に転がってるよ」p347

    きゃあ、と救護班と共に叫びたくもなるかっこよさ。イリーナも加勢してくれて、1番胸が熱くなる場面だった。歩兵部隊と狙撃部隊とで反りが合わないのはごもっともだが、女性陣が聞こえるように何人の女とやったかと自慢して盛り上がる下衆な男達。

    タイトルでもある「同志少女よ、敵を撃て」の台詞場面では、幼馴染でありいずれ結婚するのではないかと周りに言われていた仲であった男・ミハイルが、勝利後に部下から敵国の女を献上され、犯そうとしているところを目撃してしまう。イリーナは、「奴を殺した上で私を殺して、敵国の生き残りに撃たれたといえば処罰されずに済む、同志少女よ、敵を撃て」と提案するが、セラフィマはイリーナを殺さず。代わりに自身の左手を犠牲にして射殺。親指と人差し指が犠牲になった。

    戦後、セラフィマの故郷を復興させ、町外れに2人で暮らす。
    年配者からは神のように崇拝とも言える対応であったが、若者らは2人とも指を欠損し(イリーナも右手の人差し指など欠損)、人を100人以上殺した魔女だと恐れられ、2人からしても一般市民とどう接すればいいか分からず、ある程度復興させてからは距離を置くこととなった。
    シャルロッタはママとパン工場で働いていたが、後遺症でママが亡くなったと手紙が届く。

  •  話題の本で興味はあったのですが、戦争のお話は女性が陵辱される場面が含まれるだろうと想像し、読むのが苦しくなるので手に取るのを躊躇していました。でも、読んで良かった作品でした。

     主人公セラフィマの村の人たちは、善良な市民ですがドイツ軍に殺されてしまいます。人を傷つけてしまう野蛮さは善悪が歪んでいますが、最初から悪い人たちではなく、そのような環境下ゆえに人が変わってしまいました。自国が正義で相手が悪だと必ずしも言い切れず、曖昧さは複雑でした。

     戦争なんて絶対イヤだけど、もし仮に日本が‥と思いながら読みました。戦場の経験なんて、あって欲しくないし〝今後は〟誰にも経験して欲しくないことだけど、本書を通してフィクションを追体験することで、考えるきっかけを与えられた気がします。

     暗い気持ちにのレビューになってしまいましたので、最後に余談。主人公を狙撃兵として育てたイリーナを、「風の谷のナウシカ」のクシャナを想像して私は読みました。(共感してもらえる人がいたら嬉しい)

  • 史実を織り交ぜながら、上手くフィクションに昇華させており、物語に引き込まれた。ソ連の女性狙撃兵という馴染みのない題材を扱うエンタメ部分は勿論、人を殺める兵士としての苦悩や成長と戦争の悲惨さ、人としての在り方など、伝えるべき事がしっかりと集約されており面白かった。本屋大賞納得の作品だった。

  • 第二次世界大戦でソビエト連邦の狙撃兵として活躍した少女の物語。ソ連側からの視点ばかりでなく、ドイツ兵や戦場に暮らす一般人の視点で語られている部分もあり、それぞれの立場でどのように"戦争"に関わらなければならなかったのか、が分かる深い内容の作品。とても面白かった。
    この本を読むまで、ソ連だけが女性兵士参戦を許していたことを知らなかった。本書の参考文献にある『戦争は女の顔をしていない』も読んでみたい。

  •  「同志少女よ、敵を撃て」

    本当にすごい小説でした。戦争ものは普段なかなか読み進められなくて敬遠しがちな私ですが、夢中で読みました。

    キャラクター設定も良かったのだと思います。
    魅力的な、個性あふれる登場人物が多く、感情移入しやすかった。

    デビュー作だなんて、本当に信じられない。
    実写化して欲しい!
    映画館のスクリーンでぜひ観たい。観たい。観たーい。

    最後の最後、主人公セラフィマがシャルロッタの問いかけに答えるセリフと、ラストの一行に胸がぎゅっとなった。様々な苦しみ、悲しみ、戦いを経てのこのラストに繋がるのかと。

    書きながら、また思い出して興奮してます。
    ぜひ味わってみて下さい。

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著者プロフィール

逢坂冬馬(あいさか・とうま)
1985年生まれ。35歳。埼玉県在住。『同志少女よ、敵を撃て』にて第11回アガサ・クリスティー賞大賞受賞。

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